androp×SHE'Sのコラボ、ねぐせ。、BIGMAMA、アイナら8組のライブで笑顔に満ち溢れた空間に『RADIO CRAZY 2024』全組レポート【3日目・L-STAGE】
『FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY 2024』2024.12.29(SUN)インテックス大阪
大阪のラジオ局・FM802が主催する関西最大級のロックフェス『FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY 2024』(以下、『レディクレ』)が、12月27日(金)〜29日(日)の3日間にわたり、大阪・インテックス大阪にて開催された。今年は開局35周年だけでなく、『レディクレ』も15周年の節目となり、「ロック大忘年会」の名にふさわしいお祭りに。
SPICEもお祝いすべく、前代未聞の全組レポートを実施! ここでは12月29日(日)L-STAGEのandrop×SHE'S、ビッケブランカ、アイナ・ジ・エンド、Chilli Beans.、阿部真央、ヤングスキニー、BIGMAMA、ねぐせ。のライブレポートをお届けする。終演後のDJ板東さえか&樋口大喜による振り返りも併せてチェック(こちら)。
【L-STAGE】
■androp×SHE'S
バンド同士はもちろんメンバー間の親交も深いandropとSHE’S。2024年のandropデビュー15周年を機にSHE’S井上竜馬(Vo.Key)を迎えたシングルで実らせたコラボを発展させ、この日限りのスペシャルバンド・androp×SHE’Sとして登場した。
FM802のDJ 飯室大吾は2組を「相思相愛」と紹介したが、ライブは相思相愛以上……本当に「ひとつのバンド」として見せてくれた。披露した全8曲は各バンドから4曲ずつみんなで楽しめるアンセム曲多めにチョイス、ボーカルも1曲の前半・後半をandropの内澤崇仁(Vo.Gt)とSHE’Sの井上竜馬で分けたり共に歌ったり、バンドは全曲一緒に演奏。これだけで、いかにこのステージを共に作るかを大切にしたかが見える。
オープニングに披露したSHE’Sの「Dance With Me」の曲間でメンバーを担当楽器ごとに紹介し、androp「Voice」ではSHE’Sの木村雅人(Dr)がドラムを叩く周囲をandropの伊藤彬彦(Dr)がタンバリンを持って走り回るなど垣根がない光景がいくつも。
andropの「Massara feat.井上竜馬(SHE'S)」で見えたのはまさに両バンド全員戦とも言える厚みあるサウンドと、このコラボに興奮する8人の姿。終了後に内澤と井上がステージセンターで正座しペコリとしたこと、2人の後ろに掲げられた重なり絡み合う両バンドのロゴも「2組で1バンド」だと物語っていた。
取材・文=桃井麻依子 撮影=松本いづみ
■ビッケブランカ
音楽フェスでは、各アーティストが本番前にステージに登場して自らリハーサルをおこなうのが定番。そのリハで観客のテンションも上がる。ただ、この男は一味違う。「ねえねえ、インスタを見て」と、ビッケブランカは自前のカメラで撮った観客の姿をSNSに載せて嬉しそうに一言。その気さくなやりとりが、彼と観客の距離感をグッと縮める。
いざ、本番。白を基調とするセットアップの衣装、声の質感、キーボードの演奏姿、すべてが朗らか。圧倒的な陽である。「Winter Beat」では両手に耳を当てて歓声を要求し、「ウララ」では「この曲で今年のことを全部忘れて、来年への勢いになったらいいなって」と鍵盤を弾くアクションをより派手にする。会場中にひたすら手を振りまくる超絶ファンサービスも、ビッケらしい明るさに満ちている。
自身がDJ機材のフィンガードラムを駆使してリズムや効果音を繰り出す、その音楽的にもメッセージ的にも多彩な面は、続く「Ca Va?」でも窺える。「元気?」を意味する同曲は、ダンサブルかつヒップホップのテイストで、しかもマイケル・ジャクソンを彷彿とさせる振付も。バラエティに富んだステージングで楽しませた。
ラストの「Old Rivals [A Self-Cover of “Rivals!”]」では、<かわいそうに>の歌詞に合わせてビッケがうなだれるように座り込む。そんな彼を観客が拍手で盛り立てる。鼓動が高鳴る仕草をしながら再び立ち上がるなど、いろんな演出をまじえて歌い終えたビッケ。最初から最後まで目を惹きつけて離さないパフォーマンスだった。
取材・文=田辺ユウキ 撮影=松本いづみ
■アイナ・ジ・エンド
大袈裟ではなく、アイナ・ジ・エンドがステージに足を一歩踏み入れた瞬間から、彼女の「世界」が広がった。
「偽りのシンパシー」では、抱えていたウサギの人形に指を絡める動作、観客への目配せの仕方、振り向き方、そしてヒップラインをなぞったり地面を這ったりする大胆なダンスなど、一つひとつの動きに物語性が感じられる。自身が演者であり、また優秀な演出家であることがこの1曲だけで分かる。
2曲目「Frail」はアイナの目線が印象に刻まれた。力強さとしなやかさをあわせ持つボーカルも素晴らしい。ただ、投げかけられる儚げな目線は大型ビジョン越しでもドキッとさせられた。こちらの感情をすべて見透かしているような、そんな目線なのだ。
MCでは「2024年、生活を必死にやりましたか? 私は去年、このステージで倒れてもうたんやけど、そのときいっぱいの人に見られているのが怖かったんです」と振り返ったアイナ。しかしこの1年で信頼を覚えることができたという。
だからこそ「関係ない」という曲は、聴いていて込み上げるものがあった。この曲では前半のセットリストとは逆に、演出的ではなくはっきり「本当のアイナ・ジ・エンド」を観ることができた。自分がどう見られようが、どんな風に思われようが、そんなのは関係ない――。その歌いっぷりや曲内容は、「自分をさらけだしても受け入れてくれる人が必ずいる」という、この1年で彼女が得た信頼の証しみたいに聴こえてならない。披露したのは全8曲。「もっと観たい」と思わせるライブだった。
取材・文=田辺ユウキ 撮影=松本いづみ
■Chilli Beans.
Maika(Ba.Vo)が2023年10月から1年にわたって『MUSIC FREAKS』(毎週日曜 22時~24時)のDJを担当し、FM802と縁も深いChilli Beans.が2日目のL-STAGEへ。リリースのたび、ライブを重ねるたびに新たな側面を見せてくれる3人。この日もぶっ飛んだ変則的サウンドでこれまでにない一面を爆発させた「cyber」で最新のモードを提示する。
曲が「See C Love」へと切り替わると、この曲が聴きたかった! とばかりにグッとたくさんの手が挙がる。ステージ上でステップを踏むように歩き回って歌うMoto(Vo)、はじける笑顔で演奏する姿がキュートなMaika、ギターと対話するように音を掻き鳴らすLily(Gt.Vo)。音楽を聴きながら三者三様の佇まいを眺めるのがチリビのライブにおける楽しみ方でもある。
Motoが曲名を叫んで始まった「lemonade」。バンドを印象付けたエポックメイキングなこの曲ではバンドのキュートな面を、続いた「aaa」ではMotoもギターを抱え厚みのあるサウンドを聴かせる。大袈裟なMCを挟むことなくどんどん曲を重ねる中、チリビの真骨頂とも言えるパフォーマンスを見せたのはやはり「シェキララ」だ。
Motoは歌いつつ片足をひょいっと上げてコミカルな動きをしてみたり後ろを向いてお尻を振ってみたり、Lilyの演奏を見ながらMaikaが笑顔で煽ってみたり……全9曲、たっぷりと彼女たちの魅力を解放した40分だった。
取材・文=桃井麻依子 撮影=松本いづみ
■阿部真央
パワフルなパフォーマンスと、笑顔に満ち満ちた空間。阿部真央の真骨頂と言うべきライブだった。
「私を選んできてくれてありがとう! でも落ち込んだ。なぜ私が観に行けないの」と真裏のレキシの話題で笑わせながらも、「ここに来てくださったみなさまに、ライブ納めとして最高のステージを見せます」とすぐに全力疾走モードへ切り替え。
「ふりぃ」では自分も、観客もしっかりと遊びまわらせ、「まだいけます」では会場のテンションを限界点まで引っ張り上げていく。ダンサブルな楽曲「immorality」の<揺らして 今夜は一層>はまさにこの瞬間のことを体現しているのではないだろうか。
ただ、押せ押せのムードだけではないのが阿部のライブ。続く「貴方の恋人になりたいのです」は、会場内にいる誰もが自分を重ねて聴くことができる普遍的な楽曲。阿部真央の強みはこういった表現の幅の広さであることを、あらためて確信できた。
このステージのハイライトとなったのは、「ストーカーの唄~3丁目、貴方の家~」だ。「怖い恋愛ソング」としても有名だが、阿部のキュートな歌唱がよりその曲が持つ狂気性を際立たせていく。<貴方のお部屋の電気がつくのは午後8時>と歌いながら、宙を見つめて笑みをこぼす姿が忘れられない。
「Somebody Else Now」では歌い出しを間違えるハプニングもあったが、「お悩みの方もいると思いますが、大丈夫です。デビュー15周年を迎えてもこんな間違いをしています!」と照れ笑いを浮かべるなど、いろんな表情を見せる阿部真央のことがとにかく愛おしく思えた。
取材・文=田辺ユウキ 撮影=松本いづみ
■ヤングスキニー
2024年のヤングスキニーは、間違いなく攻撃的なモードにあった。これまでのディスコグラフィーの中でもファストな楽曲群が詰め込まれた2ndフルアルバム『BOY & GIRLS』のリリースや『ヤンスキ漢祭』の開催を代表例に、アグレッシブで汗臭いライブスタイルへ変化していったのである。
かやゆー(Vo.Gt)の「始めようぜ『レディクレ』! かかってこいや!」を号砲に、「ヒモと愛」でスタートしたヤングスキニーのショーは、そんな彼らのモードの総決算だった。
注がれる線状の白色照明がフロアに雪を降らせた「雪月花」を終えたライブ中盤、かやゆーは喉の不調を訴え始めたのだが、そこからの後半戦が怒涛。
「年末だから皆のことを連れて帰っちゃおうと思っていたけど、今日は彼女が来てるから控えておきます」と精神面まで漢になった姿を指し示した「ゴミ人間、俺」から、「禁断症状」「精神ロック」「らしく」へ突っ走っていく。
上手く声が出ない悔しさを隠すこともせず、そのままバネに変えて咆えるかやゆーと、そんな彼を援護射撃するべく大声のコーラスで支える3人が刻み付けたのは、誰かの悪意に左右されない自身の在り方だけではない。「あなたの世界はあなたが中心だから。あなたのままで良いんです」と他者の世界までを受け入れる懐の広さを提示し、ダメ押しに「死ぬまでに俺がやりたいこと」をぶちまけてステージを去った。
取材・文=横堀つばさ 撮影=松本いづみ
■BIGMAMA
開演前、FM802のDJ 大抜卓人が今回のセットリストはFM802がリスナーの聴きたいをバンドに提案して特別に組まれたことを説明し、ライブを“伝説の夜”と形容すると、注目のオープニングは「秘密」から「17 (until the day I die)」、「Mirror World」とアッパーに。
冴えわたるバイオリンが耳を奪い、ウィスパーボイスに感嘆の声がもれ、ドラマチックなサウンドに観客の手が頭上で舞う。だがまだまだ! とばかりに「神様も言う通りに」とご当地シングル「MUTOPIA in Kansai」。呪文のように<たった3秒あれば>のフレーズが脳内をリピートし、なだれ込むダンスチューンではご機嫌に。
柿沼広也(Gt.Vo)と安井英人(Ba)は目を合わせて笑顔を見せ、Bucket Banquet Bis(Dr)も立ち上がって自身の頭をヒット。すると東出真緒(Vln.Key)の「最高やん!」も聞こえ、次は金井政人(Vo.Gt)と柿沼のダブルボーカルもパワフルな「荒狂曲“シンセカイ”」と、イントロでファンを浮足立たせる「Swan Song」。
荘厳な音の波に無心で押し流されていると、ついに「セントライト」と「Sweet Dreams」のフィニッシュブローが。アップリフティングなポップは視界を明るくし、高潔なバイオリンや金井の咆哮は絶大な推進力を与え、5人は希望に満ちて今宵だけのスペシャルな全9曲を走り終えた。
取材・文=服田昌子 撮影=松本いづみ
■ねぐせ。
L-STAGEのトリは『レディクレ』3回目の登場となる、ねぐせ。「スーパー愛したい」から始まったステージはとにかくポップでユニバーサルで、フレッシュ。3日間にわたり繰り広げられた『レディクレ』のトリのステージともなれば、オーディエンスの疲れが見えてくる頃合いなんだけど、朝一番ですか?ってくらいに、誰もが大はしゃぎでライブを楽しんでいる。「今年が終わっちゃう! もっと盛り上がってもらっていいですか!」と、りょたち(Gt.Vo)が声をかけると観客は盛大な手拍子で応える。バンドとファンのつうつうな関係がとても素敵に見える。
続く「デイズ」ではなおや(Gt)が綴るポップなバンドサウンドから一転し、しょうと(Ba)、なおと(Dr)のリズムがうねりを上げるエネルギッシュなサウンドでフロアを圧倒。りょたちの軽やかな歌声とのギャップも気分を高めていく。
「やろうか『RADIO CRAZY』! 暴れちゃいなよ!」と、「あの娘の胸に飛びこんで!」では一聴しただけで口ずさめちゃうポップでイージーなリリック、シンプルなロックサウンドにフロアの熱気がぎゅっと高まっていく。3年目の出演でトリのステージを任されたことに「相当愛してもらっている。期待を込めて選んでくれたのかな。嬉しいです。今年は大阪に何度も来ることができた。これまで大阪で培ってきたもの全部出せたら!」と「ダーリン」へ。感謝の思いを濃縮させ、密度の高い音でバンドのすべてさらけだしていく4人。
ライブ終盤には「自由に音楽を楽しんで」と、「グッドな音楽を」でタイトルまんま、ねぐせ。が好きな人、『レディクレ』に集まった音楽好き達へグッドミュージックを捧げる。ラストは2024年、バンドの名を一躍広めた「ずっと好きだから」。真摯に言葉を、音を届け、2025年の飛躍を誓うパフォーマンスで魅せてくれた。
取材・文=黒田奈保子 撮影=松本いづみ
■3日目の別ステージレポートは以下よりチェック!
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