<自立しろ!若い夫婦と同居>結婚した娘「同居させてほしい!」受け入れのルール決め【まんが】
私(ミサコ)は10年前に夫を亡くし、正社員で働きながら娘のマナミと二人三脚で頑張ってきました。夫がいなくなってしまった寂しさを、娘と2人で乗り越えてきたといっても過言ではありません。おかげで娘はしっかり者に成長。仕事もテキパキと頑張っているようです。そんな娘も5年前に夫のジュンくんと結婚、孫も2人生まれました。娘が「親」となり成長している姿を見守っていこう。そしてもし何か困ったことがあれば助けてあげよう、そんなふうに思っていたのですが……?
確かに部屋は余っているので、娘一家が暮らす分には問題はありません。ひとり暮らしが寂しいとは思わないけれど、娘夫婦と孫たちがいるにぎやかな暮らしも悪くはないでしょう。ジュンくんも気にしないと言っているし、受け入れは可能なのですが……。
私たちは話し合い、細かいルールまでしっかりと決めました。食事の準備中の子どもたちの世話や、食器は自分で下げて食洗機に入れること、洗濯物はその辺に置かないで必ず洗濯カゴに入れること……。「お互いを当てにする同居じゃなくて、自立しあった同居でお願いします」と念を押したのです。
娘が結婚して家を出てから、私は仕事をしながら趣味を楽しんだり、友達と会ったり……と気ままな生活を送っています。広い家でのひとり暮らしにそこまで寂しさは感じていません。むしろようやく自由を手に入れられた開放感でいっぱいでした。 しかし娘一家の話を聞いたとき、困っているなら助けてあげたいなとも思ったことも事実です。その気持ちは「同居をしたい」というよりも「助けてあげたい」というものでした。 その代わり、家事を折半しながらお互いに自分のことは自分でやるルールを徹底したいと考えたのです。娘一家とは支え合う同居というよりも、それぞれの世帯が自立して暮らすような同居を目指したいなと思ったのでした。
家事は!?イケメン好きの娘が選んだのは「頼りない夫」
娘から「結婚したい人がいる」と言われて紹介されたジュンくんは、目を引くほどのイケメンでした。そういえば昔から娘は面食いでした。しかしジュンくんのどことなく頼りない態度に不安を感じた私は、当初結婚に反対していました。
仕事から帰宅すると、私はまず大きなため息をついてしまいます。玄関の靴は放りっぱなし。玄関先には丸まった靴下、リビングへ続く廊下には脱ぎ捨てられた上着……。リビングに入ると部屋はグチャグチャ。ジュンくんは子どもの面倒を見るわけでもなくテレビゲームです。
ジュンくんを結婚相手として紹介されたとき、私は何となく違和感を抱きました。それが彼の性格によるものなのか何なのかは分かりません。ただジュンくんと結婚するのは私ではなく娘です。娘がジュンくんを支える覚悟を持っているのが伝わってきたので、どんなことがあっても放り出さないで頑張れと送り出したのでした。 自分で決めたことは自分で責任をとることを、娘を育てていくなかで伝え続けてきたつもりだったのです。それなのに一緒に暮らすうち、私はやはりジュンくんの態度にまた違和感を覚えはじめたのでした。
約束が違う!子どもに動画見せ、ソファでゴロ寝?ムカッ
私が夕飯の支度をしていると、キッチンの周りを孫たちが走り回っています。ジュンくんに言っても子どもたちの面倒を見る……というよりも、自分がスマホを見たいがために子どもたちに動画を観させます。どうやらゲームに夢中のようです。
ユメがお味噌汁をこぼしても、ジュンくんはスマホを見ていて何もしません。ルイがご飯を手づかみで食べて豪快にこぼしていてもまるっきり無視です。そして食べた食器をそのまま放置してソファに寝そべり、再びスマホをいじりはじめるのです。
ジュンくんは、必要最低限ギリギリでしか動きません。子どもの面倒はおろか、約束していた家事もこちらから催促してはじめてイヤイヤ動きはじめる始末です。これじゃ話が違う! そう思って注意すると、ものすごくイヤそうな態度をとられてしまうのです。 娘はそんなジュンくんをフォローするかのように、ジュンくんの分までテキパキ動きます。夫婦のことだから夫婦で決めればいいと心の中では分かっているつもりです。けれど大切に育ててきた娘が目の前で苦労している様を見せつけられると、私は切なくなってきてしまうのでした。
ガマン限界、物申す⇒娘「夫婦の問題だから口を出すな」
ジュンくんは気だるそうに子どもたちと浴室に向かいました。けれど私の怒りはおさまりません。娘はそんな私をなだめるように言います。「ジュンは結婚前、ほとんど家事をしたことがなかったの。ただでさえ同居で気を張って疲れているんだし……」
「こっちは別に頼んで同居してもらっているわけじゃないのよ? 自分の立場を分かっていたら、あんな態度はとらないでしょ」思わず本音をぶつけると、娘は少しカチンときたのか私に向かって言い返してきました。
腹立たしさに耐えかね、ついに私は娘夫婦に本音をぶつけました。しかしジュンくんは気だるそうに聞くだけでまったく話になりません。娘に至ってはそんなジュンくんをかばって私を責めてきます。 娘としては自分の母親と夫との間に入ったときは、夫の方の気持ちに寄り添うべきだと思っているのでしょう。確かに妻の意識としては間違っていないのかもしれません。しかし今回は明らかに娘夫婦が約束を破っている状態です。 どうして私が責められないといけないのでしょうか。ジュンくんをかばうのであれば、私との約束を守るようにジュンくんを動かすのが娘の役割だと思う私は、考えが古いのでしょうか。真っ向から否定されてしまった私は、自分が言っていることが間違っているのだろうかと思ってしまうのでした。
家事も子育ても他人事!注意しても3日と持たず……
その後しばらくジュンくんは約束を守っていました。しかし3日も経つとすっかり態度は元どおり。何度注意しても、ジュンくんのやる気が持つのはせいぜい3日です。そんなジュンくんの代わりに娘がひとりで家事をしたり子どもたちの世話をしたりの繰り返し。
ここで私が娘家族を放り出したら、娘はどうなるのだろう? そう考えると怖くもなるのです。娘は家族のために身を粉にして働きながら、ひとりで家事も育児も頑張るでしょう。そしてそれを当たり前に思い、悠々と羽を伸ばすジュンくん。
ジュンくんは注意されるとしばらくは動くものの、3日も経つとやらなくなるという行動パターンを繰り返していました。要は家事を自分ごととして捉えておらず、イヤイヤやらされているにすぎないのでしょう。同居をする前までは娘が全部やっていたのかもしれません。 早々に同居を解消したい! その気持ちに嘘はないけれど、いま手放したら娘はどうなってしまうのでしょうか。娘の自業自得だといえばそれまでなのですが、その後のことが心配で「強制的に同居を解消」とまでは踏み切れないでいました。 もっとジュンくんが積極的に動いてくれれば、そんなことで悩まなくても済むのに……。私はジュンくんへの怒りを募らせていったのです。
孫のため面倒みるべき?大人の都合で突き放す「罪悪感」
「そうだとしても、そんな相手を選んだ娘の責任を私がとるの? だったらそんな息子に育てた責任を向こうの親がとるべきなんじゃないの?」「でも遠方なんでしょ? 向こうのご両親は」「そうだけれど……」「なら仕方ないじゃない」
「約束を守らないなら出て行って」と話しても、娘はジュンくんをかばうだけ。もし今、私が娘一家を手放したら、娘がひとりで苦労を背負うことになるでしょう。それを思うと強制的に追い出すこともできずにいました。けれど……。
自分だけじゃ結論を出せないので、仲の良い同僚に話を聞いてもらいました。すると思いがけないことを言われたのです。ジュンくんを夫に選んだのも、実家での同居を選んだのも、ジュンくんに家事をさせようとしないのも、確かにすべて娘自身がしていること。けれど娘をそんなふうに育てたのは紛れもない「私」。だからその責任をとるべきだ、と……。 その言葉に私は納得がいきませんでした。娘のことが心配な気持ちは嘘ではないけれど、どこまでフォローするべきか、どこまで面倒をみるべきか。その線引きが難しいなと思っているのです。けれどその言葉をきっかけに、自分の中の大切なものが見えてきた気がしたのでした。
ルールが守れないならムリ「出て行って!」猶予は1ヶ月
私は大きく息を吸って、娘夫婦に言い渡しました。「出て行ってください。もし1ヶ月以内に部屋を決められないようなら、荷物はトランクルームに強制的に預けさせてもらいます。ホテル暮らしでもしてください」「お母さん!?」
「あなたは私のことをあたかも『同居をしてくれているお婿さんをいじめる嫌な姑』みたいに言ってくるけれど。あなたたちが自分たちの都合で転がり込んできただけ。世話になっている時点で、私とあなたたちの立場は平等じゃないの」
「1ヶ月だからね。分かった?」そう言って、私はリビングを後にしました。少し言いすぎかなとも思いましたが、ハッキリと伝えることができて良かったのかもしれません。完膚なきまでに言われて、きっと娘たちも「これ以上は無理なんだな」と分かってくれたことでしょう。 最初にジュンくんが家事を手伝わなかったところである程度線引きをしておけば良かったのに、中途半端な優しさを出してしまった自分を今は悔やんでいます。1ヶ月間の猶予のあいだ、娘たちはきっと家探しに奔走するでしょう。今回のことがきっかけになって、娘夫婦のカタチが少しでも前向きな方向に変化してくれることを、私は密かに願っているのでした。
【娘の気持ち】変わらない夫「もう母には頼れない……!」
私(マナミ)は夫のジュンと娘のユメ、息子のルイとの4人家族です。私は夫と子どもたちのことを心から愛し、家族のためならどんなことでも頑張れると思っていました。しかし夫の転職や奨学金の返済などで家計がピンチに陥り、当面実家にお世話になることにしたのです。母は家事の折半などを求めてきましたが、ジュンはもともと家事が苦手な人でした。ジュンの代わりに私が頑張れば問題ないと思っていたのに、母からは「1ヶ月以内に出て行け」と言われてしまいます。その口調は静かに怒っているようでした。母の言葉を受け、私たちは実家を出て行くことにしたのです。
私たち家族は小さなアパートに引っ越しました。とはいえ大型の家具は実家に引っ越すときにリサイクルショップに売ってしまっていたため、運んだのは必要最低限の荷物だけ。新しい家に引っ越してからのジュンとの日常は相変わらずでした。
ふと見るとルイが水性のクレヨンで床に激しく絵を描いていて……。子どもたちの相手をしながら慌ててその後始末をしていると、ひとりのんびりしているジュンに腹が立ってしまいます。自分のなかから感情があふれて爆発しました。
心の声を叫んだ後に私は気づきました。ジュンを変えるよりも、母に負担を背負ってもらおうとしていた私の考えが甘かったのです。夫婦の問題なのに、親を巻き込んで現状維持をしようとしていただけで、本当の問題に目を向けていなかった……。
きっと私は心のどこかで「いざとなれば実家に頼ればいい」と思っていたのでしょう。親子であっても互いに自立していなければいけないと、母は常々言っていました。それなのに一方的に頼り切っていたのです。 そして実家を出てもジュンの態度が変わることはありませんでした。それを目の当たりにしたとき、ふと「もうお母さんに頼れない」という気持ちが湧き出てきたのです。一気にあふれて涙が止まらなくなってしまいました。私は目の前のジュンと向き合わずに、ジュンがすべきことを母に背負わせていただけだったのです。 でもこれで分かりました。私が一番向き合わないといけないのは、目の前の夫であるジュンでした。 ジュンはようやく事態の大きさに気が付き、少しずつですが改善しようと頑張ってくれています。あのとき実家を追い出されて良かったと思える日がくるように、これからはジュンと2人で力を合わせて頑張っていこうと思います。
【私の気持ち】ひとり暮らし再び「私は寂しくない!」娘へ届け、母の願い
私はやはりこれ以上の同居継続はできないと思い、娘一家に出て行ってもらったのでした。
私はいつまでも「母親」だし、娘が私の「子ども」であることに変わりはありません。けれど親子の関係性は、年齢や立場とともに変わっていくものだと思います。いつまでも当たり前に頼れる存在だと思わせてはいけないでしょう。
同居当初は孫たちがいるにぎやかな暮らしも悪くはないだろうと思っていました。けれどジュンくんがすべきことを代わりに担わされるなら話は別です。もし同居を解消したことで疎遠になるなら、私と娘はそれまでの関係だったということなのでしょう。
同僚との会話の終わりに、私は笑顔でこう宣言しました。「私は寂しくないわよ! 私が寂しがっていると娘に良からぬ心配をかけるし、これからも楽しく生きていくわ! 娘家族の幸せを祈りながらね」 その後も娘からは相変わらず孫の写真が送られてくるなど、同居の前と同じような距離感で関係が続いています。親として大人になった子どもとどう関わっていくかは、難しい問題だなと感じます。そこに正解はなく、「自分自身がどうしたいか」によって変わってくるのではないでしょうか。 私は「自分のことは自分で」と娘に言い続けてきました。それはこれからも変わらないでしょう。今回の別居をキッカケに娘夫婦が互いにしっかりと向き合ってくれることを願いながら、私はこれからもひとりで楽しく生きていきたいと思います!