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小中学生で「妊娠」 真っ先にやることとは? 子どもに教えたい恋愛の境界線「バウンダリー」【専門家が解説】

コクリコ

ソーシャルワーカー・鴻巣麻里香さんに聞く「小中学生の恋愛バウンダリー」第3回。恋愛におけるバンダリーの定義とは? トラブル時の夫婦の対応、子どもが妊娠した場合の親の姿勢について。全4回

【読む➡】第2回 「わが子が怪しい…スマホ見てもよい?」と悩む親に専門家が回答

ソーシャルワーカーとして、日々子どもたちの「困りごと」に向き合っている鴻巣麻里香さん。2024年9月には10代に多い悩みと対処法を説いた『わたしはわたし。あなたじゃない。10代の心を守る境界線「バウンダリー」』を上梓。中高生やその親たちから熱い支持を得ています。バウンダリーとは、「わたしはわたし、あなたはあなた」という心の境界線のこと。小学生から「付き合ってる人がいる」と言う子どもも増えてきた昨今、恋愛ではどんなバウンダリーが必要なのか、鴻巣さんに伺います。

●PROFILE鴻巣麻里香(こうのす・まりか)
KAKECOMI代表、精神保健福祉士、スクールソーシャルワーカー。ソーシャルワーカーとして精神科医療機関に勤務し、東日本大震災の被災者・避難者支援を経て、2015年非営利団体KAKECOMIを立ち上げ、こども食堂とシェアハウス(シェルター)を運営。

恋愛のバウンダリーは「どちらかが望まないことはしない」

恋愛でもっとも大切なバウンダリーは、「望まないことはしない」ということ。相手の望まないことをすると、相手のバウンダリーが侵され、自分が望んでいなければ自分のバウンダリーも侵されてしまうのです。つまり、「どちらかが望んでいないことは、しない」ことが重要。

「もし、小中学生などの幼いころに『恋人というラベルがついた相手なら、自分が望まないことも受け入れなければならないんだ』と思ってしまうと、大人になったときに望まない性行為を引き受けることになりかねません。恋人同士だけでなく、自分より権威のある男性などからの要求に『NO』と言えなくなるリスクもあるでしょう。

男の子の中には、『女の子との行為は、どんなものでもうれしいはず』という刷り込みで苦しくなる子もいます。『男はこうあるべきだ』という誤った固定観念によって自分の気持ちを飲み込んでばかりいると、将来、望んでいない相手に性的な行為をしてしまう可能性もあります」(鴻巣さん、以下同)

バウンダリーは年齢とともに、調節機能が備わるようにもなります。「この人は、絶対に自分を傷つけないな」「この人には少しバウンダリーをゆるめても大丈夫」という相手にはふわっとゆるくなり、「この人は自分を苦しめてくる」っていう相手には厚めにガードを固めて自分を守るのです。

「相手によって調節できるようになるためには、周りにいる大人がその子との間に、きちんとバウンダリーを引くことが大切。日ごろから、『あなたはあなたよね』と境界線をきちんと引いて、子どもと接するようにしましょう。

そのうえで、『あなたが苦しむのは、どんなとき?』『どんなことをされると苦しくなる?』と問いかけて、子ども自身が少しずつ自分のバウンダリーを発見していく手助けができるといいですね」

子どもの意見が自分と違ってもあせらないで

子どものバウンダリーを育むために大切なのは、会話をすることと、意見をしっかり聞くこと。泣いたりイヤがったり、「わかんない」と明確な答えがないことなども、子どもの「意見」と考えたほうがいいようです。

「そうして、子どもの中で起きていることを『それが、あなたの気持ちなんだね』と認めてあげることが大事。子どもが転んで『痛い!』と泣いているときに、『痛くない痛くない』ではなく、『痛いよね。転んだんだもんね』と言ってあげましょう。子どもが言った気持ちが不適切でも、『あなたはこうしたいんだね』と、子どもの願いの存在は認めることです」

子どもが自分と違う意見を言うと、ついあせったりびっくりして、否定してしまう人もいるかもしれません。けれどもたとえ意見が違っても、どちらかが間違っているわけではないのです。

「バウンダリーがしっかり引けていれば、意見の違いはただの違いに過ぎない、と思えるはず。チョコレートが好きな人もいれば、クッキーが好きな人もいる。だからといって、どちらがおいしいか競い合って、ケンカしても仕方がないでしょう。自分と意見が違っても、『何とかしなきゃ!』と思う必要はないんです」

トラブルはパートナーと共有し子どもに確認しながら連携を

子どもの意見や願いは、親と同じではないと自覚し、しっかり話を聞くこと。そして、そこにあるものとして受け止め、親の不安は「自分の不安」として対処することが大切です。

「子どもがトラブルに巻き込まれた、恋愛をしているらしいとなると、親はなんかソワソワして不安になるかもしれません。でも、その不安は親のもので子どものものではない。自分の不安として、対処していくことが大事なんです。不安は夫婦で共有して、対処法を考えていくといいでしょう」

ただし、父親も母親も同じ濃度で子どもと関わっているという家庭は、日本ではまだ少ないかもしれません。まずは子どもと多く接しているほうが子どもの話を聞き、夫婦で共有するのが鴻巣さんがオススメする方法です。

「とはいえ、片方ばかりがずっと子どもと関わり続けると、どんどん負担の差が開いてしまいます。子どものトラブルや本音はパートナーでしっかり共有して、どちらかが無関心にならないこと。

『大事なことだから、これはパパにも話すよ。絶対に言ってほしくないってことはあるかな?』と、子どもとシェアしながら、わかちあっていくことが大事だと思います」

娘と2人で暮らしていた時期がある鴻巣さん。娘が同じ価値観をもっていたとき、うれしい反面、「自分の影響を受けすぎてはいないか」と不安に思ったと語る。  写真:安田光優

子どもが妊娠したら「女の子が最優先」

小中学生でも、付き合っている相手と不適切な関係にまで発展してしまったら、妊娠のリスクが生まれます。鴻巣さんによると、その対処法は「女の子の願いが最優先」、これに尽きるそうです。

「男の子の親がとるべき唯一のスタンスは、『一緒に考えるんじゃなくて、女の子の話を聞いて言うとおりにしなさい』、です。女の子が産みたいと言ったら、しっかりと父親としての責任を果たす。

女の子が産まない選択をしたら、全力でそのケアをすることを伝えてください。妊娠に関しては、女の子が引き受けるリスクのほうが大きく、どちらを選択するにせよ傷つくことや失うものがたくさんあります。その意見が優先されるのは当然ですよね」

では、女の子の親はどうしたらいいのでしょう。もし女の子が「産む」を望んだ場合、その願いを優先してあげたくても、若年で妊娠して出産することの厳しさや不利益が、歴然とあるのも事実。親のサポートも必須であることから、心から「おめでとう」とは言いにくいものです。

「まずは、妊娠がその子にとってどんな意味があるのかを把握しましょう。妊娠がポジティブな行為の結果かどうかで、意味合いが違ってきますが、素直にうれしいという子もいるんですよ。

『子どもの心配事』『子どもの願い』『親の心配』『妊娠のリスク』『妊娠してよいこと』『これから起こりえること』などを別々のお皿にのせて、テーブルに並べるイメージをもってください。そしてテーブルのお皿を子どもと一緒に眺めながら、どうすることが最善なのか、ゆっくり話し合うことが大事です」

それぞれの項目を、紙に書き出してみるのもアリ。すると、妊娠という子どもの中で起きていることを、客観視できるでしょう。親子間でするのが難しいときは、若年の妊娠時のサポートをしている団体や、若年の妊娠の経験が豊富な産婦人科のドクターなどに頼るのもオススメです。

──次回は、子どもと親の理想的なバウンダリーについて伺います──

取材・文/萩原はるな

10代の生きづらさとその解決策をリアルなエピソードとともに紹介した『わたしはわたし。あなたじゃない。10代の心を守る境界線「バウンダリー」』(出版:リトルモア)。2024年9月発売から1ヵ月弱で重版に。

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