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Q.I.S.は「自分を奮い立たせる場であり、自分を輝かせようと思える場」 北澤ゆうほは30歳を前に何を思う? ワンマンライブ12月に開催

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北澤ゆうほ

北澤ゆうほのソロプロジェクトQ.I.S.(クイス)が、2025年12月12日(金)に大阪・梅田 Shangri-La、18日(木)には東京・Zepp Shinjukuで、ワンマンライブ『Q.I.S. presents “Queens Is Here”』を開催する。the peggiesの活動休止後、Q.I.S.としての活動を開始して2年が経ち、北澤は今何を思うのか。ソロアーティストとしての覚悟が力強くもポップに表現された最新曲「Queendom(+s)」に込めた思い、バンド時代からの心境の変化、ライブに対する意気込みや今後の目標を語ってもらった。

◾️わたしと同じように悩む人に向けて発信したい

ーーもうすぐ30歳という節目を迎える北澤さんですが、29歳の1年はどんな年でしたか?

その少し前から振り返ってみると、2022年の秋にthe peggiesの活動を休止して、2023年、2024年はひとりで乗り越えないといけない場面の多い1年でした。充実していたとも言えるけど、心身ともに疲れる部分もあって、29歳になる手前は「この1年間、なんとかやり遂げた……!」って感慨深かったんです。

29歳になってからは、助けてくれる人が増えたり、自分にとってよい環境が手に入ったりして、28歳の年に比べると少し余裕ができたので、冷静に自分を顧みることができましたね。今後よりよい自分になっていくためにはどんな部分で成長すればいいのか考えることができて、30代に突入する直前の1年の過ごし方としてベストだったと思います。

ーーどんなふうに自分を顧みたのでしょうか?

「自分はどういう人間なのか」ってことは常に考えていますが、特にこの1年は周りと比べても相対的に自分というものが浮き彫りになるタイミングだったなと思って。結婚したり出産したりする人が増えて、自分と似た生き方をしている同性の友だちがかなり減ったというのも影響として大きかったです。

これまでずっと同じようなことで悩んだり笑ってたりしてた子たちが、自分とは対極にあるような人生を歩み始めていく姿を見て、「赤信号、みんなで渡ればこわくない」だったのが、突然ひとりで赤信号を渡っているような気持ちになって。そういうこともあって、自分の人生に対する覚悟をもう少し持たなきゃいけないなと思うようになりました。

ーー寂しさみたいなものもありますか?

そうですね。でも、わたしの周りに自分と似た選択をしている人が今はいないだけで、きっとあと何年か頑張ったら、同じような選択をした子たちとどこかで出会える気もしているので、「生涯孤独だな……」みたいには思わないかなって感じです。

ーー最新曲の「Queendom(+s)」は、そういった北澤さんの今の気持ちが詰まった結晶のような曲だと思いました。冒頭の「苦い苦い痛みがあるのもきっとどれも主演の証でしょ」とか、「一人で磨き続けてはただここに立つ それが私の戦い方」とか。

たしかに、自分のテーマ曲のような部分はあるかもしれないですね。生きやすくなるためには、自分が無駄に傷つかないためにはどうすればいいかってことをthe peggiesの時に学んで。

ーー具体的にはどうすればいいと思ったか伺えますか?

人からの見られ方を気にしたり、人と比較してしまうことから意識的に逸脱していかないと苦しくなるってことがよくわかって。しんどくならないためには、自分で自分を受け入れて、自分で認めてあげないといけない。バンドを続けるなかでそういうことに気がついたので、わたしと同じように悩んでいる人に対して発信していきたいと思うようになりました。

わたしは気がつくのに時間がかかったけど、曲を聴いてくれる人が少しでも早く気づいて楽になってくれたらいいなと思う。そういった意味での社会的意義みたいなものは感じていて、大きく言えばそれこそが人生でやりたいことだなって思ってます。

ーー他人と比べてしまって自分を愛せないという悩みは多くの人が抱いていると思います。特に今は若い世代であればあるほど、見た目への評価で苦しむことが多いんじゃないかって。

そうですね。簡単に「人と比べる必要はないよ」とか「そのままで可愛いよ」と発信することも無責任だと思うくらい、自分に価値があると認識するのはすごく難しいことだと思うんですよね。

ーーその反動で、「可愛い」を全肯定するような歌が溢れる時代でもあります。

そういう歌があること自体は否定しないし、私も聴いたりするけど、一方で曲が与える影響としての危うさなのは少し感じたりします。極端な言葉はキャッチーだし人に届きやすいけど、一方で毒性が高いとも思うんです。自分も若い頃そういうものに影響されて辛い気持ちになっていたので、自分の思想を差し置いて極端なことを言ったりっていうのはできないですね。わたしの伝えたいことは極端ではない分人に届きにくい面もあるので、昨今の流れを見ながら自分がどう戦えるのかって考えてますね。

ーー誠実な姿勢だと思います。

外見の話でいうと、美を追求するのは楽しいことでもあるし、悩みながらも自分をアップデートさせること自体はいいと思うけど、可愛いことを絶対的な価値だと思い込んでいる若い子たちを見ていると、そうじゃないよって言いたくなる。必ずしもそれが本質的ではないってことをわかってくれたらいいなと思います。

もちろん評価される側でいるのもしんどいことだし、その価値観に飲み込まれると今度は自分が無意識にその尺度で他人を評価してしまいます。あなたはそんな尺度だけで測られるべきではないし、同時に人のことも測ってはいけない。それがわかると、自由な人生が広がって、自分のやりたいことや才能を開花させる場面に出会えるはず。そういうことを伝えていきたいなって思います。

◾️父との議論で身についたこと

ーー北澤さん自身が今の心境に至ったきっかけはありますか?

バンド時代から、自分自身がそういう評価に晒されてきたっていうのはありますね。見た目を理由に曲を聴いてもらえないことももちろん嫌だなと思うし、逆に「可愛いからなんでもオッケー」みたいなコメントにもかなり違和感があって。

ーーそれは「いや、曲をちゃんと聴いてくれよ」という気持ちになりそうです……。

そういう面で意思疎通できない苦しさは今もたまにあるので、違和感があるってことは示していかないといけないなと思います。

ーールッキズム的な尺度から逃れて生きるために、何か参考になったものはありますか? 北澤さんのご実家は神保町のKITAZAWA BOOKSTOREなので、本からの影響を受けることもありますか?

それこそジェンダーの本を読んで「やっぱりそうだよな」って答え合わせしたり、自分の違和感は間違ってなかったなって思ったりすることはあるけど、基本的には、曲を作りながら自問自答していくなかで気づくことが多かったですね。ひたすら自分と向き合って、「あの時なんで嫌だったんだろう」「あの時なんでうれしかったんだろう」と考え続けていって、今の気持ちにたどり着いた気がします。

実家からの影響という意味で言うと、父が「自分の意見を持っていなさい」という考えの人で。家族でご飯を食べている時も「こういう本を読んで僕はこう思ったけど、ゆうほはどう思う?」って意見を求められることが日常でした。いわゆる一家団欒の食卓って感じではなくて、緊張感がありましたね(笑)。

ーー日々の食卓でお父様から鍛えられてきたと。

そうなんです。子どもの頃から、世の中で起きていることに対してわたしはどう思ってるんだろう、と考える癖がついているんだと思います。

ーーご両親が北澤さんの選択に対して何かご意見されることってありますか?

生活態度を叱られることはあっても、人生の選択について何かを言われたことはないですね。というのも、小学6年生の時に人生を本気で悩んで。当時何に対しても興味を持てなくて、勉強も運動も苦手で、「あ、これ詰んでる、やばい、人生終わりだ」って。友だちを作るのも下手だし、毎日学校から帰ってきてずっとインターネット見てるような子どもだったから、親も心配してたんだと思います。

だから、中学でバンドを始めたわたしを見て、初めて何かに夢中になってることに安心してくれたみたいです。ありがたいことに高校の時からレコード会社の人にお世話になって、プロとして活動できていたので、親もそんなに心配しなかったんだと思います。わたし自身できるだけ早く経済的にも精神的にも親から自立したかったんですよね。今はちょうどいい距離感で親と付き合えていると思います。

◾️読まずに読書感動文を書く才能も音楽に活かされている

ーー今年の9月からはArtistspokenで『北澤ゆうほの新夜零時を過ぎたら』(通称:らじぽぽ)という音声番組も始まりました。おしゃべりからは、楽曲やnoteでの文章とは違った魅力を感じます。

おしゃべりの場があることはすごくいいなって。文章を書くのも好きだけど、よっぽどの文章力がないと自分のテンションや温度感みたいなものは表現しきれないなとも思うんです。シリアスに伝えたいのか、冗談で言ってるのかって部分は、おしゃべりの方が表現しやすい気がします。わたしのパーソナルな部分を知ってもらうためのいい場所ですね。

ーー音楽以外の表現方法で、北澤さんを知ることのできる場所ですよね。

音楽を作る時は自分の熱量とか気持ちを込めるけど、伝えたい言葉でもリズムに合わなかったら削らないといけないことって結構あって。音楽で使うことができなかった言葉や気持ちが常に自分の中に残っているから、そういうものを発表できる機会が必要なタイプの人間なんだと思います。

ーーそれがnoteの文章であり、らじぽぽのおしゃべりであると。

そうですね。曲についてはもはや「みんなにあげている」みたいな意識があって。自分の考えを受け取ってほしいというよりも、聴いてくれるひとりひとりの人が自分のものとして受け取ってくれたらいいな、その人の人生の一曲になったらいいな、みたいな気持ちで作ってます。

ーーそれはバンド時代からですか?

当時担当してくれていたディレクターさんからの影響もあって、メジャーデビューした時から、人に聴いてもらう、人に届けることをずっと意識してますね。ひとりよがりではいたくないって気持ちが自然と芽生えたというか。でもどこかで、ひとりよがりな音楽を確立できている人たちに対するうらやましさもあるんですけどね(笑)。

ーーそうなんですね。

とは言いつつ、なるべく多く掬えるように整えていくスタイルで音楽を作っていく方が向いていると思います。人の気持ちを考えたりするのも好きだし。

ーーアニメの楽曲提供も、登場人物の気持ちになった気持ちで作ると別のインタビューでおっしゃっていましたね。

自分の内側から曲を作るよりは、自分の外側のことを想像して考えて差し出している感覚ですね。多分それが得意で、自分に合っているんだと思います。アニメの曲を作ることに対して、「自分の言いたいことを言えなくて大変じゃない?」と心配をされることもあるけど、わたしの場合は自分を犠牲にしてると思ったことはないんですよね。

たとえ誰かになりきったとしても結局は自分の言葉だし、曲の中のどこかでわたしの存在を感じられるように、といつも意識しています。キャラクターの気持ちになるのはおもしろいですし、あと似た話だと、読んだことのない本の感想文を書くのが得意なんです。

ーー読まずに書く方法、気になります!

本のあらすじとレビューを数件読むと、みんなが心を打たれた部分が浮かび上がってくるので、それに対して自分の意見を書いていくような方法です。高校3年生の時に課題図書の感想文を書く授業があったけど、1年間1冊も読まずに乗り切って、さらには先生に感想を褒められて学校代表みたいな扱いにもされて。なので、厳密に言うと情報収集はしてたんですけど、圧倒的に時短にはなってましたね。でもおすすめはしません(笑)。

ーーそれはもう特殊能力です(笑)。

音楽の才能とはまた違う何かですよね。もちろん原作のある作品はどれも読み込んでから曲を制作しますが、オリジナル作品の時とかは鍛え上げられた想像力がかなり活きてる気がします。そういう意味では、自分の得意なこと、輝けることを結集させられる場所が音楽なのかもしれないなって思います。

◾️Q.I.S.をやるからにはバンド時代よりも羽ばたきたい

ーー今年の12月には大阪と東京でのワンマンライブ『Q.I.S. presents “Queens Is Here”』がありますが、ライブはお好きですか?

バンドの頃はライブに対して苦手意識がありました。いろんな人の力を借りて丹精込めて作った素晴らしい曲なのに、ライブで100%の形で届けられない自分と直面するから、毎回くやしくて。「ライブ最高!」と思うのに結構ハードルを感じたりしてました。

バンドを活動休止した後、先輩のライブにフィーチャリングなどで出るようなことはあっても、自分が看板を背負って人前で歌うってことをしない1年間を過ごしたんですよね。15歳以来ずっとライブをしていたので、そういう時期を初めて経験しました。その空白の期間に気持ちが入れ替わったのか、一度ライブから離れてみてわかることがあったのか、Q.I.S.として初めてライブをした時に、すっごく楽しいと思えて。肩の荷が降りたというか、ソロという土俵ならではだと思うのですが、素直に自分を表現するという感覚を知って、今までとは全く違う楽しさをライブで感じるようになりました。

ーー大きな変化ですね。今はライブをどんな場所だと捉えていますか?

今のわたしにとってライブは、聴いてくれる人たちとのコミュニケーションの場としての意味合いが大きいかもしれません。生で曲を聴いてもらうとか、新曲を披露するとか、わたしの姿を見てもらうとか、ライブにはいろんな意味があるけど、一番大事なのは普段聴いてくれている人たちと対面することです。

音楽を演奏しているわたしを見てほしいというよりは、聴いてくれる人とわたしとの間に音楽があってそれを一緒に楽しもう、みたいなイメージです。わたしは演奏することで曲を楽しむし、みんなには聴くことで曲を楽しんでほしい。そういうコミュニケーションの場として集合できたら、と思いますね。

ーーソロになってからの心境の変化がいろんなところに現れているのですね。

バンドの時は「届けなきゃ」「表現しなきゃ」って思いが大きくなりすぎて辛くなってしまうことがあったけど、今はそこからは解放されているのかもしれないです。でもひとつ難しいなと思うのが、バンドってそういう緊張感が魅力に転じるところもあるんですよね。

今も「いつバンドを再開しますか?」と聞かれることがあって、求められていることはわかるけど、仮に今後バンドを再結成するとしても、あの時に戻ってまたやる、という気持ちはまったくないんです。もし再結成するとしたら、それぞれが進んだ先で出会い直して、新たな気持ちで始めることになると思います。当時のバンドの緊張感を求める人のことも理解できるけど、今は一旦、バンドとは別のベクトルで、自分自身のために、自分をより魅力的に表現できるスタイルを探したいなっていう時期ですね。あとは、普通にthe peggiesの3人は未だに仲良く集まるので、自分的には3人の関係性に満足しちゃってます。

ーーソロでの目標はありますか?

わたしの人生ベースで考えると、ゴールを設定してそこに向かって逆算して達成していく方法をあまり取らないんです。それよりは、今日という日が今日までの人生の答えになり続けていたらいいな、という気持ちがあります。

一方で仕事、特に人と取り組むプロジェクトに関しては、大勢の人が同じ方向を向くためにも目標が必要だなと実感してます。なので、Q.I.S.としてやっていくからには、the peggiesの時よりも羽ばたきたいなとは思いますね。

バンドの活動休止後、音楽を続けるか悩んでいる時に、先輩のライブに出たりいろんな人とお話したりするなかで、「自分が表に立たないのはもったいない」と思えた瞬間があって。自分には価値がある、と自分で思えたその気持ちを忘れないようにしたいし、自分を奮い立たせる場であり、自分を輝かせようという意識を持たせてくれる場がQ.I.S.だと思っています。

バンドの活動の後半は「大きい場所でライブしたい!」とかも言えなくなってたけど、言わなかったらそれが叶わないどころか、活動自体が止まるということもわかったので、Q.I.S.ではバンド時代の集客を超えないと意味がないなって。

ーー具体的にどの会場を目標にしましょう?

生まれたのが神保町なので、やっぱり日本武道館ですね。全アーティストのなかでも、一番近くに実家があるのがわたしですし。

ーーたしかに!

たぶん、武道館側もわたしを待ってると思うんです(笑)。みんなうちの本屋(KITAZAWA BOOKSTORE)で本を買ってからライブに来てくれるとうれしいですね。

ーー親孝行ですね! では、武道館でのライブを目指す30代にされると。

そうですね。ここまで来たら、長く続けることがかっこいいかなとは思っていて。状況が色々変化してもじわじわずっと続けて、やめずにいる姿が誰かにとって美しく映るといいなって思います。だから、ずっと魅力的でいたいなって最近特に思うし、どう切り取っても魅力的であり続ける努力をすることが、30代のわたしの楽しみになりそうです。

ーー健康が趣味とらじぽぽでもお話しされていましたが、最近はどんな健康法にハマっていますか?

最近バズってるシャクティマット、あれを前から持ってて。めっちゃ痛いけど、体中あったまって気持ちいいです。ただ、ベッドの横に置いておいて、起きた時に間違って踏んづけた時は飛び上がりました(笑)。あとは、脂っこいものを食べないようにしてますね。ジャンクなものを食べると、「自分なんて……」みたいに気落ちしてしまうので。まとめると、今好きな健康法はシャクティマットと脂質を抑えた食生活です。内側から美しく健康な30代でありたいなって思います。

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