心も体も若返る!自然の中でのんびりするだけの健康法【総合診療科の医師が伝授】
北海道で総合診療科の医師として働く舛森 悠氏。総合診療科とは、特定の疾患や臓器、年代に限定せず、あらゆる患者さんに対し診療を行う科のことで、舛森医師はそこで1万人以上の高齢患者さんを診察してきました。 その著書『総合診療科の僕が患者さんから教わった70歳からの老いない生き方』(KADOKAWA)には、たくさんの患者さんたちのおかげでわかった、気づいた、何歳になっても健康に幸せに生きられる知恵がまとめられています。 「無理に7時間も寝なくていい」「運動よりも仲間とおしゃべり」など、目からウロコの情報の数々のなかから、今日から実践できる健康習慣をご紹介します。
※本記事は舛森 悠(Dr.マンデリン)著の書籍『総合診療科の僕が患者さんから教わった70歳からの老いない生き方』から一部抜粋・編集しました。
自然環境の中でのんびりするだけで心も体も若返ります
僕の住む北海道は、大自然があふれる地域です。僕が育ったのは北海道の中では自然の少ない札幌ですが、それでも少し郊外へ出ただけで大自然が広がっています。
北海道のいろいろな医療施設で外来をしていると、自然が多い地域に住み、自然を楽しむのが得意な人ほど、80代になっても50~60代に引けを取らないほど若々しい人が多いのがわかります。
僕の外来に通院しているDさんは、高血圧と脂質異常症がある70代後半の女性ですが、年齢を聞かなければ50代にしか見えません。いつもスポーツウェアを着てこんがりと日焼けした肌は、健康そのものです。
ある日、Dさんから「さっきまで函館山に登っていたの」と聞いたとき、僕は耳を疑いました。よく聞くと、今も定期的に登山を楽しんでいるというのです。
函館山は僕も登ったことがあります。登山道は整備され、一般的な運動シューズで登ることができますが、とはいえ登って下れば1時間半~2時間はかかります。Dさんはそれから病院へ来たのです。僕はそのタフさに驚きました。
Dさんには血圧の薬だけを処方していましたが、現在は薬なしでも血圧は適切な範囲でとどまっています。それも森林を歩いている影響かもしれません。
ある研究によれば、若年・中年・高齢者のどの年代でも、森林の中を歩けば血圧が低下するそうです。(※1)高血圧は、心筋梗塞や脳梗塞など命にかかわる疾患の引き金にもなりますが、森林を歩くだけでこうしたリスクを下げられるかもしれないのです。
また、モノテルペンという樹木の香り成分は、呼吸で体内に吸収され、脳内に直接リラックス作用をもたらします。(※2)さらに、森林環境が抑うつや不安の症状を改善するという報告もあります。(※3)スギの成分を配合した手指消毒アルコールが、アルツハイマー型認知症の患者さんの不安や興奮といった症状(周辺症状)を抑制したとの研究結果もあります。(※4)
実際、森の中をただ歩いたり、たたずんだりしただけで気分がリフレッシュした経験がある人も多いのではないでしょうか。
日本の森林面積は世界有数で、国土面積に占める森林の割合は、フィンランド、スウェーデンに次いで第3位です。(※5)この豊かな森林環境を使わない手はないと思います。あるいは、山や森林とまで言わずとも、まずは緑の多い公園での月1回の散歩からはじめてみてはいかがでしょう。体に嬉しい変化があるかもしれません。
*1: Yuki Ideno, et al. Blood pressure-lowering effect of Shinrin-yoku (Forest bathing): a
systematic review and meta-analysis BMC Complement Altern Med . 2017 Aug 16;17(1):409.
*2: READY-ToO-USE BBB Kit(RBT-24)Protocol ver2.0.ファーマコセル株式会社.
*3: Poung-Sik Yeon, et al. Effect of Forest Therapy on Depression and Anxiety: A Systematic
Review and Meta-Analysis. Int J Environ Res Public Health . 2021 Dec 1;18(23):12685.
*4: Yuya Takahashi, et al. Examination of the influence of cedar fragrance on cognitive function
and behavioral and psychological symptoms of dementia in Alzheimer type dementia.
Randomized Controlled Trial. Neuropsychopharmacol Rep . 2020 Mar;40(1):10-15.
*5:林野庁 森林資源の現況(令和4年3月31日現在)
*6: Bum-Jin Park, et al. Environmental Health and Preventive Medicine 15:16-26. 2010. Bum-
Jin Park, et al. Journal of Physiological Anthropology 26.123-126 2007