堤防から手軽に狙える高級美味魚『カワハギ』を詳しく知ろう 「エサ盗り名人」と呼ばれるワケは?
酷暑だった今年の夏。ようやく暑さも緩み、これからは絶好の釣りシーズンを迎える。という事で、足場の良い堤防から狙える魚の中でもトップクラスに美味しい、カワハギ(マルハギ)の釣り方を詳しく紹介しよう。今回は生態を詳しく知るための入門編だ。
カワハギってどんな魚?
まずは、カワハギという魚を詳しく知っていこう。
名前の由来
カワハギは、最大で35cm程になるフグ目カワハギ科の魚。日本記録は40年ほど前に44.3㎝という特大サイズが記録されているが、一般的に釣りの対象となるのは15cm~30cm程度。堤防なら15cm~20cmがレギュラーサイズとなる。
表面がザラついた皮で覆われており、調理の際にこの皮を剥ぐ事から「皮剥ぎ→カワハギ」と呼ばれるようになったとされる。この「本皮」とでも呼ぶべき分厚い皮の下にはもう1枚薄皮が存在するので、刺身にする際は2回皮を引くことになる。
何を食べる?
カワハギは実に様々な物を食す雑食性で、ゴカイ等の多毛類、エビや小型のカニといった甲殻類の他、二枚貝の仲間を好んで捕食する。特にアサリが大好物のため、釣る際には剥き身にしたアサリがよく用いられる。
その他、魚の切り身やイカ・ウニ等、「釣り餌」なら何でも食ってくるほど貪欲。クラゲを食べる姿も目撃されているというから驚きだ。
どこに住んでいる?
日本では北海道以南、本州~九州まで生息しており、岩が点在する潮通しの良い浅い砂地が好ポイントだ。また、どちらかというと暖かい海域を好む傾向にある。関東地方では船釣りで大会(競技)が開催されるほどの人気ターゲットだが、関西では「堤防から手軽に釣れる美味しい魚」として親しまれている。
エサ盗り名人と呼ばれる由来
カワハギは古くから「エサ盗り名人」として知られてきた。その理由を見ていこう。
口が小さくカタい
驚くほどのおちょぼ口に、実に鋭い歯を持っている。この口で餌を削り取りながら食べるので、大きな針にはまず掛からない。さらに口周辺がかなりカタいので、しっかりアワセを入れなければならないのだ。勝手に掛かる事(向こうアワセ)はほぼ無いと考えた方がいいだろう。
賢い魚
普段カワハギは、口に水を含んで砂底に吹きかけ、舞い上がった砂の中から餌を探し出して食べる、という捕食行動を行っている事から、大変賢い魚であることが判る。さらに学習能力が優れており、同じポイントで2~3匹釣ると急にアタリが小さくなることが多い。
泳ぎが上手い
その体形から長距離を遊泳する能力こそ低いものの、背びれ・尻びれが非常に発達しており、ヘリコプターのホバリングのようにその場にとどまりつつ、上下左右・前後を自由自在に動き回ってエサを盗っていく。意外かもしれないが、ある程度潮の流れがある場所を好むのも、この遊泳力があってこそだ。
エサによって食べ方が違う
吸い込んで食べるケース、ついばんで食べるケース、砂に水を吹きかけてエサを探すケースなど、カワハギは食べるエサによって食べ方を工夫する魚。そのため釣り人側も、使用しているエサや活性によって食べ方が変わる事をきちんと認識しておき、これらに対応していきたいところだ。
食味が抜群
カワハギは全国各地で大変人気がある食用魚なのだが、何故人気があるのかを紹介しよう。読み終わる頃には、きっとカワハギを食べたくなっているはずだ。
美しくクセが無い白身
カワハギは白身魚で、その身は透き通るような美しい色をしている。フグの仲間ということもあり、食感も大変素晴らしい。噛めば噛むほどじわっと甘みが広がるので、箸が止まらなくなるのだ。
調理法が豊富
煮付けは身がホロっと取れるので食べやすく、天ぷらにするとフワッフワな食感。干物にすればより味が濃くなり、いつまでも味が滲み出てくる。刺身・握りは釣りたてならコリコリ、寝かせれば柔らかくなり甘みが増す。酒蒸しは滲み出てきたダシまで旨い。調理方法によって様々な表情を見せてくれるカワハギは、正直どんな料理法とも相性抜群だ。
何といってもキモ
カワハギの一番の魅力と言っても過言ではないのがキモ。海のフォアグラとも言われ、その濃厚な甘みと旨味は他の追随を許さない。煮付けで食しても良いのだが、是非一度刺身の肝和えや、握りにして添えてみてほしい。間違いなく感動モノの旨さだ。
カワハギは手軽に釣れる高級魚
カワハギは堤防・磯・砂浜・船と、あらゆる場所から狙うことが出来る魚。ある程度環境が整った場所ならばどこからでも気軽に狙うことが出来るので、今シーズンに是非チャレンジしてみてはいかがだろうか。
きっとその面白さにのめり込んでしまうはずだし、食味に感動してしまう事だろう。さぁ、カワハギを釣りに出掛けよう!
<荻野祐樹/TSURINEWSライター>