「第二の故郷」名張にさようなら 5年の実習終えインドネシアに帰国の2人
文具・オフィス家具メーカー「コクヨ」の三重工場(三重県名張市西田原)で働くインドネシア人技能実習生、ファジャル・アフマッド・コドラットさん(24)とマクムディさん(24)が、5年の実習期間を終えて10月下旬に帰国する。言葉の壁を乗り越え、充実した日々を過ごした名張市を2人は「第二の故郷」と呼ぶ。
2人は同工場の塗装製作課に所属。今ではすらすらと日本語を話すが、来日して一番苦労したことは「漢字」と口をそろえる。どちらも豚肉を食べることが禁じられているイスラム教徒で、スーパーなどで買い物をする時は、原材料表示の中に「豚」の字が記されていないか読んで確認する必要があった。「最初の1年間は本当に大変だった」と2人は振り返る。
日本語の習得は苦労した一方、面白い発見もあり、その一つが関西弁だったという。マクムディさんは職場の仲間が発した「食べられへん」の言葉を聞き、「『へん』ってどういう意味だろうと考え込んだ」と笑う。ファジャルさんは「ぼちぼちやなぁ」の響きが特に気に入っているそうだ。
「自然豊かでのどかな名張が好き」と話す2人にとって、一番の思い出は夏の名張川納涼花火大会だった。マクムディさんは「見たことがない大きな花火が次々に上がって、素晴らしかった」、ファジャルさんは「夜店のから揚げとリンゴ飴のおいしさに驚いた。浴衣姿の人が歩く祭りの雰囲気が大好き」と話す。
市内どこへでも自転車で走った2人は「食料品はリバーナ、ジムで着るTシャツはスポーツデポ、スニーカーはABCマートで買った」と行きつけの店を挙げる。毎年花見をした名張中央公園の桜並木も忘れられない風景だという。
仕事終わりや休日には、朝日公園でバドミントンやサッカーをして過ごした。たまたま居合わせた学生たちと一緒に遊ぶこともあり、マクムディさんは「公園に行くのが楽しみだった」と振り返る。2021年1月には市の成人式に出席し、地元の若者たちと一緒に人生の節目を祝った。
帰国後も現地の工場で「ものづくり」の仕事をしたいというファジャルさんは「職場の困り事に意見を出し合い、改善を重ね解決していく日本人の姿に感動した。それをたくさんのインドネシア人に伝えたい」と意欲的に話す。
実習期間中に母国に家を建てたというマクムディさんは「新居での生活が楽しみ」と話す。家族への土産は、浴衣と、インドネシアでは珍しいイチゴ味のチョコレートにするつもりだという。