【福岡市・東区】元ホテルのシェフパティシエが手掛ける極上フランス菓子
アイランドシティ、千早駅周辺、いよいよ始まった九州大学箱崎キャンパス跡地など、至るところで大規模な開発が進む東区。人口増加に伴って感度の高い店も増えるなか、今年3月、名島にパティスリー「PRESQUE EGAL」がオープン。昨今、ドーナツやカヌレなど1種のスイーツに特化した店は多々誕生していましたが、フランス菓子の正統派パティスリーのオープンは久しぶりかも……と思いつつ、期待に胸を膨らませながら名島に向かいました。ショップは西鉄名島駅の目の前にあり、木の扉がある真っ白な建物。扉を開けると甘い香りが漂い、ショーケースには色とりどりの生ケーキ、棚には焼き菓子やパンが並んでいます。
こちらのお菓子を手掛けているのは、ホテル日航福岡で長年シェフパティシエを務めたオーナーの渡辺拓志さん。もともと実家は香椎の商店街で練り物店を営んでいたそうですが、3代目となる渡辺さんは練り物店を継がずにパティスリーに職種を変更。“作るものは先代と違っていても、喜んで欲しいという気持ちは同じ”という気持ちを込めて「PRESQUE EGAL」(=ほとんど同じという意味のフランス語)を店名に掲げたのだそう。
シェフにおすすめを伺ったところ、すべてがおすすめとのことなので、まずはオーソドックスな「苺のショートケーキ」(660円)をいただきました。アーモンド入りのしっとりとした生地に古賀の農家から届く摘みたてのイチゴとバニラビーンズ入りのカスタードクリームをサンド。イチゴのフレッシュな甘酸っぱさとクリームがよく合います。
そして丸いフォルムがユニークな「レアチーズケーキ“mariee”」(600円)は、シェフが友人の結婚式のために考案したという一品。中にはデンマーク産クリームチーズ「BUKO」と蜂蜜のスフレ、レモンのムースが入っていて、すっきりと爽やかな味わいです。
私がパティスリーで出会ったら必ず買うと言ってもいいほど、大好きな「ミルフィーユ クラシック」(620円)もいただきました。香ばしく焼き上げた自家製パイ生地の間にカスタードクリームとバタークリームを合わせた“クレームムスリーヌ”をサンドしたシンプルな王道のミルフィーユは、厚くキャラメリゼされたパイがカリッとしてサクサク! この一品からもシェフの技のすごさが伝わってきます。
クリームやフルーツももちろんですが、ケーキの味は小麦のおいしさに左右されると考えるシェフは、配合、焼き方、他素材との組み合わせなど、小麦のおいしさを最大限引き出すよう注力し、ケーキ一つ一つに合わせて生地のレシピを変えているのだとか。写真のチョコレートケーキ「ショコラショコラショコラ」(650円)のように、1つのケーキで3種の生地が味わえるものもあります。
小麦を極めるシェフらしく、焼き菓子やパンもそれぞれにこだわりがあります。個人的には焼菓子はふんわりしたものよりも焦げるほどに焼いたものが好みなのですが、こちらの店頭に並ぶ焼き菓子はどれもかなり濃いめの茶色でしっかりと焼きしめたものばかり。中でも気になったのが「マドレーヌ」(300円)。10秒ほどレンジで温めてくださいと言われたので温めてみると中からバターがトロ~リ。小麦の香ばしさとバターの香りが広がるなんとも贅沢なマドレーヌです。
このほか、焼き上がると同時に売り切れてしまうという「クイニーアマン ランベルセ」(350円)、ギフトによさそうなパウンドケーキ、クッキーなど、いろいろ気になるものがありますが、一度にすべてはいただけないので足繁く訪れることになりそうです。
長年培ってきた伝統的なフランス菓子の技法は守りながらも、素直に食べておいしいと思えるお菓子を時代に合わせて作っていきたいという渡辺さん。7月ごろからは、店内のカフェスペースでお菓子とお茶を楽しめるようになりますので、シェフの思いを聞きながらいただくときっとおいしさもひとしおでしょう。
目で見て味わって、こんなにも幸せな気分になれるなんて……、スイーツの魅力を改めて実感しました。
PRESQUE EGAL HIROSHI WATANABE(プレスク・エガル ヒロシ・ワタナベ)
福岡市東区名島3−1−15
092-662-1539