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【まだ間に合う!京都のおすすめ紅葉】嵐山・嵯峨野エリア ~祇王寺・天龍寺・宝厳院の庭園

草の実堂

画像:二尊院。(撮影:高野晃彰)

社寺や名所にある庭園を中心に、京都を旅するのも楽しいものです。

京都には各時代に作られた数多くの庭園があり、その種類も坪庭・枯山水・池泉廻遊式などバラエティーに富んでいます。

各々の庭園には造られた時代の歴史や文化が反映され、庭園ゆかりの人々の想いが込められているので、そこから奥深い京都の歴史を感じ取ることができます。

今回は、晩秋から初冬のこの季節、紅葉が美しい嵐山・嵯峨野エリアの「祇王寺・天龍寺・宝厳院の庭園」を紹介しましょう。

画像:祇王寺。(撮影:高野晃彰)

記録的な暑さが続いた今年は、夏から秋への季節の移ろいが遅れ、紅葉も延び延びになってしまいました。

それは京都も例外ではなく、11月中頃からようやく本来の錦繡に彩られた風景が見られるようになったのです。

それでは、この時期ならではの祇王寺・天龍寺・宝厳院の3寺院の魅力をお伝えしましょう。

「祇王寺」~ささやかな尼寺の庭園を紅一色に染める紅葉

画像:祇王寺。庭園から本堂をのぞむ。(撮影:高野晃彰)

「祇王寺」の始まりは、平安時代末期に法然上人の弟子・念仏坊良鎮が、往生院を創建したことと伝えられます。

当初は広い寺域を有していましたが、やがて荒廃してささやかな尼寺として残り、後に当地に隠棲した祇王にちなみ「祇王寺」と呼ばれるようになったとか。

この寺院を有名にしたのが『平家物語』です。

同書によると、平清盛の寵愛を失った白拍子の祇王が母の刀自、妹の祇女とともに剃髪して尼僧となり、後に祇王から清盛の寵愛を奪った仏御前も加わって隠棲し、念仏三昧の余生を送ったと記され、「祇王寺」はその遺蹟とされます。

画像:祇王寺。庭園をうめる散り紅葉。(撮影:高野晃彰)

茅葺の本堂の前には、緑の苔に覆われた庭園が広がり、四季それぞれの表情の美しさでつとに有名。

春には祇王寺桜が風に舞い、初夏から夏には新緑と苔の緑がひときわ生き生きと輝く。そして、秋から初冬かけては真っ赤に色付いたカエデと、その落ち葉が幾重にも散り紅葉となって苔の庭に散り積もります。

どの季節に訪れても、ささやかな草庵と庭園を取り巻くように生い茂る竹林を渡る風の音が、奥嵯峨ならではの旅情を誘います。

なかでも、晩秋の散紅葉の美しさは筆舌に尽くしがたいものがあります。

画像:祇王寺。花手水にも秋の気配。(撮影:高野晃彰)

祇王寺公式サイト:https://www.giouji.or.jp/

「天龍寺」~夢窓疎石作庭の池泉回遊式庭園の水面に移る楓

画像:天龍寺。小方丈からのぞむ大方丈と庭園。(撮影:高野晃彰)

「祇王寺」からは、竹林と田園風景の中を散策しながら嵐山へ。

そんな風景を楽しみながら、のんびり歩いてもおおよそ20分ほどで「天龍寺」に到着します。

「天龍寺」は、室町幕府初代将軍・足利尊氏が、暦応2(1339)年に後醍醐天皇の菩提を弔うため夢窓疎石を開山として創建。

武家の手で京都に初めて建てられた禅寺で、室町期には幕府の強大な援助を得て、京都五山の内、第一の位を占めて隆盛を誇りました。

画像:天龍寺の曹源池庭園。(撮影:高野晃彰)

そんな同寺の中でも特に人気なのが、大方丈の前に広がり、嵐山や亀山を借景とする「曹源池庭園」です。

この庭園は、曹源池を中心に構成される風雅な池泉回遊式庭園。多くの人々が大方丈の床に腰掛け、思い思いに庭園を眺める姿は、この寺院の馴染みの光景といえるでしょう。

「曹源池庭園」に目を移すと、池の中央の奥には三尊を象った石を配し、山裾から流れ落ちる2段の滝を表わす滝石組の龍門瀑を構え、その下には日本最古といわれる石橋を架けます。

池の周囲に配した岩島や出島。さらには池の前庭や周辺に、目にも清々しい白砂が敷き詰められ、庭全体が王朝風の雰囲気に包まれています。

滝の石組をはじめとする「曹源池庭園」の石組は、日本庭園ではじめての水墨画的表現といわれ、大和絵がもつ柔らかで情緒豊かな景観の中に、水墨画の枯淡の美を添えるとされる。

秋になるとカエデが鮮やかに色付き、その姿を曹源池に浮かべるさまは、まるで庭全体が大和絵のようです。

画像:天龍寺。庭園は嵐山・亀山を借景とする。(撮影:高野晃彰)

天龍寺公式サイト:https://www.tenryuji.com/

「宝厳院」~点在する巨岩・巨石を紅葉が彩る借景回遊式庭園

画像:宝厳院。獅子岩の傍らに赤く染まる楓。(撮影:高野晃彰)

「天龍寺」のお隣にあるのが塔頭の「宝厳院」です。

同寺は寛正2(1461)年、室町幕府の管領細川頼之により、夢窓疎石から三世の法孫にあたる聖仲永光禅師を開山として創建された寺院です。

同寺の本尊は、脇仏に三十二体の観世音菩薩を従える十一面観世音菩薩。

足利尊氏が信仰したという地蔵菩薩も祀られています。

画像:宝厳院。仏の無言の説法を解く獅子吼の庭。(撮影:高野晃彰)

「宝厳院」の庭園は、嵐山・亀山を借景に取り入れた回遊式庭園。

武田信玄に招かれ甲斐国・恵林寺住職となった策彦(さくげん)禅師の作と伝わり、別名「獅子吼(ししく)の庭」とも称されます。

「獅子吼」とは「仏が説法する」という意味。無数の円い石を敷しめて苦海を、その向こうに築山で彼岸を表わし、そこに中央に高い石、左右に低い石を配する基本的な石組の三尊石を配し、手前には彼岸に渡るための舟石と仏の元に渡る獣石が置かれています。

園内をめぐると目に付くのが獅子岩や碧岩などの巨大な岩の数々。古来よりその地にあった巨岩を生かして石組としているとか。

獅子岩は、獅子の形をした巨岩で、傍らには秋になると紅葉に染まるカエデの木があり、思わず足を止めて見入ってしまうほどの美しさです。

画像:宝厳院庭園の豊丸垣。(撮影:高野晃彰)

また、巨岩の間には豊丸垣と呼ばれる、曲線を用いた独特な形状の美しい垣が配されます。

全体的に石の厳しさが際立つ庭園に、ゆるやかな曲線をもつ豊丸垣や蓑垣で庭趣を醸し出しているのが特徴。

この庭の本来の目的は、回遊式の園内をめぐり、鳥の声・風の音を聴くことにより、人生の真理や正道を肌で感じるという、そんな禅の修行のための庭なのです。

宝厳院公式サイト:https://hogonin.jp/

以上、嵯峨野・嵐山にある祇王寺・天龍寺・宝厳院を紹介しました。

しかし、この3寺以外にも、渡月橋の上流にあたる保津峡・藤原定家遺蹟で2尊を祀る二尊院・古義真言宗大本山で格式高い門跡寺院の大覚寺など、このエリアには紅葉を楽しめる寺社・旧跡がたくさんあります。

画像:二尊院。(撮影:高野晃彰)

時間が許せば、そうした場所もあわせて嵯峨野・嵐山の晩秋から初冬の旅を楽しんでみたらいかがでしょうか。

まだまだ、素晴らしい紅葉が楽しめますよ。

※参考文献
京都歴史文化研究会著 『歴史と文化を愉しむ 京都庭園ガイド』メイツユニバーサルコンテンツ刊

文・写真 高野晃彰 校正 / 草の実堂編集部

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