日本将棋連盟は100周年! 将棋観戦記者・後藤元気さん連載「渋谷系日誌」【NHK将棋講座】
『渋谷系日誌』は、NHK「将棋講座」テキストの人気連載です。毎月、NHK放送センターや千駄ヶ谷の将棋会館など、渋谷界隈(かいわい)の棋士や関係者のエピソードを、将棋観戦記者・後藤元気さんがお届けしています。
今回のトピックは、「日本将棋連盟100周年」です。
100周年記念
ページ順としては前後しますが、このあとの「おたよりの広場」で日本将棋連盟100周年について質問がありましたので、こちらの欄を使って簡単に説明させてもらいます。
江戸幕府の瓦解によって経済的にも人材的にも大打撃を受けた将棋界。明治時代に入って家元御三家は給料をもらえなくなり、棋士の多くは路頭に迷うしかない状況になりました。
明治後期から大正時代に入ると新聞の新興と部数増加の競争もあり、将棋は有力な大衆娯楽の担い手として存在感を増していきます。
それでも戦国時代の群雄割拠のような感じでまとまらない状況が続きましたが、ようやく関根金次郎十三世名人を中心に東京將棋聯盟の創立を見たのが1924年の9月8日。ちなみに囲碁でも2024年が日本棋院100周年となります。日付では7月17日で将棋が9月8日なので、あちらが少しお兄さんですね。
そして100年後の2024年9月8日に催されたのが、関係者を中心とした「100周年記念式典」と、多くのファンが参加した「100周年を祝う会」でした。会場内はこれでもかという密度であの棋士この棋士そんな棋士まで。免疫のない人は気絶しちゃうかと心配になる豪華さ。来場された方、大丈夫でしたか?
100周年の記念事業はこのイベントだけではありません。そのなかで最も大きいのは、やはり東西の将棋会館の移転でしょう。
東京は千駄ヶ谷の総鎮守である鳩森神社前から、千駄ケ谷駅前の新築ビル1階に移ります。こちらにはカフェ「棋の音」が併設され、対局室の数も増えるなど大幅グレードアップ。関西も大阪市の福島駅から、高槻市の高槻駅近くへ。本号が書店に並ぶころ、11月17日の「将棋の日」に完成式典が催される予定です。
はみだし広場
恒例のはみだしでございます。
「9月号に、11月17日を『将棋の日』に制定とありましたが、何か理由があるのでしょうか?」(愛知県・Tさん、男性)
実にタイムリーな質問が来ました。徳川家康が作った江戸幕府では、家康が将棋と囲碁が好きだったこともあって、将棋所と碁所が作られました。つまり政府がスポンサーとして扱ってくれていたということです。
将棋は初代名人に大橋宗桂が就き、17世紀後半から公務として御前で将棋を指す「御城将棋」が始まりました。これが18世紀に入って八代将軍吉宗のとき、11月17日(旧暦)に「御城将棋の日」として行うことが定められます。これを由来として、日本将棋連盟が1975年の11月17日(新暦)を「将棋の日」に制定したと、そういう流れでした。
将棋と落語
先日、大先輩の湯川博士さんに声を掛けてもらい落語の会に行ってきました。会場の「お江戸両国亭」は十一世名人の伊藤宗印が居を構えていた場所。縁深いですなぁ。
湯川さん(仏家シャベル)が高座にかけたのは、盲目の西本馨七段を題材にしたドキュメントのような落語でした。内容は野暮なので書きませんが、代わりに写真を1枚どうぞ。
文
後藤元気
元奨励会、指導棋士四段。名人戦・順位戦や棋王戦の観戦記者。NHK将棋講座テキストの編集に携わっている。毎月『渋谷系日誌』を連載中。
◆NHK『将棋講座』テキスト2024年12月号より