扉の向こうは異世界。明石に誕生した『theater cafe&bar金木犀』 明石市
JR・山陽明石駅から徒歩15分。隣に立つ青いビル『SoraToUmi(ソラ・ト・ウミ)』の横で、ひときわ目を引く白壁と木目調のあたたかな外観。そこに掲げられた「金木犀(きんもくせい)」の文字と、「異世界です」と書かれた看板が、道行く人の好奇心をくすぐります。
ドアを開けると、そこは外の喧騒が嘘のような落ち着いた空間。劇場でもあるカフェバーという、少し珍しいこの場所は、訪れる人々の心に寄り添い、新たな物語が生まれるステージです。
今回は、子どもたちの未来を想い、アーティストを応援し、多様な人々が集うこの場所の仕掛け人、『theater cafe&bar 金木犀』(明石市)のオーナー・神足さんにお話を伺いました。
「すごい素敵な名前だなと思って」と思わず私が伝えると、神足さんはその由来をそっと教えてくれました。「金木犀って、自生しない花なんです。誰かがそこに植えないと、育つことができない」。その言葉には、人の手によって大切に育まれていく場所でありたいという想いが重なります。
さらに、金木犀の小さな花が集まって咲く姿を、音楽家や芸術家など多彩な才能を持つ人々が集まる様子になぞらえたのだとか。この場所で出会った人たちが繋がり、それぞれの才能の花を咲かせてほしい。店名には、そんな優しくて力強いメッセージが込められているのです。
もともとこのビルの4階でコワーキングスペースを運営していた神足さん。「子育ての街と言われる明石で、子どもたちが芸術や音楽に気軽に触れられる場所が少ないと感じていた」と語ります。
「ここで音楽に触れて『私も舞台に立ってみたい』と感じたり、大人のプレゼンテーションを見て『こんな働き方があるんだ』と知ったり。子どもたちの将来の選択肢を広げるきっかけになる場所を作りたかったんです」。さらに、「明石発のミュージシャン」としてここから巣立っていってほしい、という熱い想いも。このステージは、未来を担う子どもたちと、夢を追いかける大人たちのための優しい光が灯る場所なのです。
このお店の魅力は、その変幻自在な空間設計にもあります。普段はカフェとしてゆったり過ごせるテーブル席が、イベント時にはなんと50席のライブハウスに早変わり。
「この机は全部折りたたみ式で、ステージの下にはパイプ椅子が50脚収納されているんですよ」と神足さん。まるで中学校の体育館を思い出すような仕掛けに、思わず「すごい!」と声を上げてしまいました。
さらに壁際には「hacolier(ハコリエ)」と名付けられた展示スペースが。これは箱とアトリエを組み合わせた造語で、クリエイターが自分の作品を発表できる場所。細部にまで、表現する人たちへの応援の気持ちが満ちています。
現在は、毎週金曜日の夜にバータイムのみ営業中。まさに「金曜日だけの大人の隠れ家」です。そんな特別な夜にぜひ味わってほしいのが、神足さんイチオシの「2種の国産黒毛和牛のローストビーフ」。
「明石で一番美味しいと思います」という言葉通り、口に入れると、しっとりとした食感と上質なお肉の旨みが広がり、思わず頬が緩みます。
ドリンクは、写真映えも抜群な「七色のフロート」がおすすめ。
私がいただいたのは、鮮やかな青色が美しい「アクアマリンフロート」。甘すぎずすっきりとした味わいで、見た目も気分も爽やかになります。ステージのプロジェクターに映し出される癒しの映像を眺めながら、日常を忘れる穏やかな時間を過ごせます。
今後はアーティストを呼んでの「ミュージックナイト」やDJイベント、さらには4階のコワーキングスペースと連動した「異業種交流会」など、様々なイベントが企画されています。「チャレンジ枠」を設けて、ステージに立ったことのない人にも機会を提供するなど、誰もが主役になれる仕掛けも。
「ここに来たら何かが解決する、そんな場所にしたい」。クラウドファンディングでは多くの支援が集まり、街ぐるみで応援されているこの場所。カフェ、バー、劇場、コワーキングスペース…さまざまな顔を持つ「金木犀」は、これから芸術と文化、そして多様な人々が交差する、明石になくてはならないコミュニティハブになっていくことでしょう。
場所
theater cafe & bar 金木犀
(明石市港町6-17 1F)
営業時間
金曜日 18:00〜24:00
土曜日、日曜日 11:00〜17:00
定休日
<10月より>
月曜~木曜日(ただし事前連絡があれば営業対応可能)
駐車場
なし