映画のなかに気候変動が存在するか? 物語の現実性を評価「ザ・クライメイト・リアリティ・チェック」
映画のストーリーに気候変動が存在するかチェック
映画やテレビのなかで、気候変動の現実が描かれているか評価する「THE CLIMATE REALITY CHECK(ザ・クライメイト・リアリティ・チェック)」。アメリカの非営利団体グッド・エナジー(Good Energy)が行っているものだ。
「ザ・クライメイト・リアリティ・チェック」は、ジェンダーバイアス測定のために用いられる「ベクデル・テスト」にヒントを得て、200人以上の脚本家、ショーランナー(現場責任者)、コミュニケーションの専門家らにインタビューをして作成された。
テストの目的は、脚本家や業界関係者が映画の物語について検証する機会とすること、観客が映画の中で気候変動がどう表現されているかを知ること、また気候変動にまつわる表現を取り入れた映画が増加しているかどうかを測定することなどが挙げられている。
なお彼らによれば、今日のテレビや映画において、気候変動について言及しているものはわずか2.8%だという。
評価基準は「気候変動が存在しているか」と「登場人物がそれを知っているか」
このテストが対象とするのは、「現在・(比較的近い)過去・未来の地球を舞台にした物語」。ファンタジー作品や、他の惑星が舞台のもの、遠い過去が舞台の物語には適用されない。
チェックするのは、以下の2つの項目だ。
・物語のなかに気候変動が存在しているか
物語の世界に気候危機が存在するかどうかを、影響や解決策を通して測ることができる。例えば物語の中で、前例のない熱波が起きる、海面上昇に関するニュースが流れている、街中に気候変動に関するグラフィティーが描かれている、など。
・登場人物が気候変動について知っているか
登場人物が気候変動について知っているかどうかは、その人のセリフやナレーション、行動、視覚的イメージを通して示すことができる。例えば、登場人物が気候変動に関するニュース記事を読んだり、異常気象について会話したりする。
2024年のアカデミー賞候補作では3作品が基準をパス
このテストを開発したGood Energyのチームは、2024年のアカデミー賞にノミネートされた長編映画作品の分析を行った。調査対象となったのは31のノミネート作品のうち、地球が舞台であり、現在、近未来を描いた13の作品。
その結果、『バービー』、『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』、『ナイアド 〜その決意は海を越える〜』の3作品がこのテストをパスした。同チームは、対象となった作品のうち23%が合格したこの結果を好意的に受け止め、「2027年までに(現在または未来の地球を舞台にした)アカデミー賞ノミネート作品の50%が、このテストに合格することを願っています」とコメントしている。
このテストはもちろん、すべてのストーリーが気候変動をテーマにすることを推奨するものではなく、また映画制作者がどのようなストーリーを語るべきかを規定するものでもない。単に、現在の気候変動の現実がスクリーンに反映されているかどうかを測るものだという。
一方でこうしたテストの存在は、映画業界や観客の気候変動についての意識を高めたり、映画制作にインスピレーションや新たな視点を与えるきっかけにはなるかもしれない。
※参考
THE CLIMATE REALITY CHECK