学年誌「小学二年生」表紙絵でほほ笑む少年は私 60年前のモデルが上越市の展覧会に来場
「小学一年生」など子ども向けの学年別学習雑誌の表紙絵を集めた展覧会が開かれている新潟県上越市本城町の小林古径記念美術館に2024年8月3日、60年前に表紙絵のモデルを務めた男性が来場した。訪れたのは東京都渋谷区在住の上野聡明さん(66)で、当時プロ野球のスター選手だった巨人の長嶋茂雄さんと満面の笑みで共演していた。
《画像:モデルを務めた表紙絵の原画(中央の上下2点)と上野さん。手にしている「小学二年生」の表紙も上野さんがモデル》
《画像:長嶋選手が登場し上野さんがモデルを務めた「小学二年生」1964年5月号》
展覧会は同市柿崎区出身の洋画家、玉井力三(1908〜1982)が20年以上にわたって学年誌の表紙絵を描き続けたことから、同館の企画展として7月6日から開催されている。
上野さんは「小学二年生」(小学館)の1964年4月号から1965年10月号まで計19冊の表紙に描かれた。60年たった今でも、目もとのあたりに生き生きとした笑顔で学年誌の表紙を飾った面影が残る。3歳頃から雑誌や書籍に掲載する写真や表紙絵のモデルを務めており、母親の記憶ではデパートで親子で買い物をしていた時に声をかけられたのがきっかけだったという。モデルは父親の転勤で小学2年生でやめ、年月とともに忘れていた。
2022年に日比谷図書文化館(東京都千代田区)で開かれた特別展「学年誌100年と玉井力三―描かれた昭和の子ども―」のちらしを偶然見かけたことで自分がモデルだったことを思い出し、かつての表紙絵モデルを探していた小学館などの関係者に名乗り出た。
《画像:2022年に日比谷図書文化館(東京都千代田区)で開かれた特別展》
玉井は東京で子どものモデルを写真撮影し、柿崎に戻って写真を基に表紙絵の原画の油絵を制作していた。上野さんは、写真撮影でポーズや小道具も細かく演出していたという玉井についてはあまり覚えていないが、「撮影用のライトで暑いのと、長い時間じっとしているのがつらかった記憶がある」と懐かしむ。学年誌のモデルの前には幼児向け雑誌のモデルもしていて、同様に表紙絵を担当していた玉井が上野さんの自宅を訪れた写真が残っているという。
《画像:表紙絵の制作過程。(左から)写真、原画、完成した学年誌(上野さんとは別のモデル)》
長嶋さんが登場した1964年5月号で上野さんは後ろから長嶋さんの肩を抱いている。“ミスター”の記憶を尋ねると、「実は長嶋さんには会ったことがないんです。何かポーズをした写真から、玉井先生が合成して描いたと思います。なんだか自分じゃないようで恥ずかしい。(展示された表紙絵の原画を見て)こんなに残っていて、ありがたいです」と話した。
企画展「なつかしき表紙絵 玉井力三展」は9月1日まで。月曜休館(8月12日は開館)。
《画像:「なんだか自分じゃないよう」と語る上野さん》
なつかしき表紙絵 玉井力三展 - 上越市ホームページ( https://www.city.joetsu.niigata.jp/site/kokei/kokei-r6kikaku2.html )