中学受験【親の伴走】 勉強方法を徹底解説 御三家・早慶進学8割以上の算数専門塾「フォトン算数クラブ」塾長
2024年、中学受験の伴走を終えた教育ジャーナリスト・佐野倫子さんによる中受伴走連載。今回は、驚異の御三家・早慶以上進学率8割以上、知る人ぞ知る中学受験算数専門塾「フォトン算数クラブ」塾長・武井信達先生に聞く、算数が得意になる方法について伺いました。全3回の1回目。
【写真35枚】子どもが自ら学ぶ「自由進度教育」の実例を紹介2024年に中学受験伴走を終えた、教育ジャーナリスト・佐野倫子です。今回は中学受験の「算数」について。「中学受験は算数が得意だと有利」。
そんな話を聞いたことはありませんか? その真意をひも解いたところ、算数は非常に差がつきやすい科目だということが挙げられます。
実際の入試でも、合格者平均点と受験者平均点は、算数で差がひらきがちです。各学校が公表する合格者・受験者平均点のデータを見ると、算数1科目の点数差の開きが大きいことも珍しくありません。
そうだとするならば、これから中学受験を控えているお子さんには、算数に苦手意識を持たせたくないですよね。そこで算数が得意になる勉強法はないかと探していたところ、「フォトン算数クラブ」という少人数制の算数塾の存在を知りました。
「フォトン算数クラブ」は、毎年塾生の8割以上が御三家・早慶以上の中学に進学する算数専門の塾。2024年の中学受験実績は、在籍105名のうち、御三家・早慶以上に塾生の87%が進学。開成18名、桜蔭15名という驚異的な数字。
そこで今回は、快進撃を続けるフォトン算数クラブの塾長・武井信達先生に、算数を得意にするための方法について直撃してきました。
佐野倫子(さの・みちこ)
東京生まれ、早稲田大学卒。航空業界・出版社勤務を経て作家・教育ジャーナリストに。おもな著書に『天現寺ウォーズ』、『中学受験ウォーズ 君と私が選んだ未来』(イカロス出版)。2人の男の子の母。
武井信達(たけい・のぶたつ)
フォトン算数クラブ塾長。慶應義塾大学大学院理工学研究科修了(同大学卒業)。中学受験算数指導歴30年以上。2007年に東京・自由が丘にて、算数1科のみの中学受験塾「フォトン算数クラブ」を1人で創業。現在は、自由が丘・白金高輪・日本橋の3エリアに教室を構える。
中学受験の算数は差がつきやすい科目
中学受験の算数は差がつきやすい科目
──2024年2月に中学受験を終えた我が家も、不合格だった学校は算数の手応えがあまりよくなく、合格した学校は算数で力を発揮できたと息子が振り返っています。合否は算数の成否と一致していました。筆者の所感ですが、中学受験にとって算数の出来は合否を左右すると考えられます。
「フォトン算数クラブ」は、算数1科目を教える塾として、まずどのような理念とメソッドで教えられているのでしょうか?
武井信達先生(以下、武井先生):創業は2007年、私が1人で始めた塾です。その前から塾講師や家庭教師をしていて、算数が伸び悩むお子さんを、なんとしても志望校へ合格させるにはどうすべきかを考えては実践していました。
プロとして再現性のある方法を寝ても覚めても考えた結果、「先取り学習」と「徹底的な反復」を実践したところ、生徒の成績が爆発的に伸びたんです。それがのちのフォトン算数クラブ(以下、フォトン)の核になりました。
「フォトン算数クラブ」塾長・武井信達先生(左奥)。
算数を得意にすること
──フォトンでは、大手塾の算数の、さらに1年先を先取りして授業が進んでいきますね。そして効果的なタイミングで少しずつ復習をしていくといいますが、私たちが家庭でも取り入れられるコツや学習法はありますでしょうか?
武井先生:そうですね。親御さんは“算数が好きな子が、算数が得意になる”と考えていらっしゃると思うのですが、まずそこから違うんじゃないかと私は考えていまして。
──「好きこそものの上手なれ」と言いますし、算数が好きだから得意になると思っていました。
武井先生:私は、「得意だから好きになる」と考えています。だからまずは算数を得意にすること。できると子どもは嬉しいですから、好きになるんじゃないかと。そこをサポートしてあげたいと思っています。
そこで、ライバルよりも先に勉強をして余裕を作ること、そして独自のペースで定期的に、適切なタイミングでしつこく復習することを塾の勉強方針にしました。すると、生徒たちの成績がものすごく上がったんです! とても効果がありましたね。
武井先生は今後、“算数おじさん”として、子どもたちに算数をもっと教えていきたいと話していました。
計算力は大事な土台
──算数を得意にするために、家庭で取り組めることはありますか?
武井先生:やはり計算力は大切です。計算を間違えると、すべてが台無しになってしまいます。こと中学受験の算数においては、いかにそこでミスをしないかが大切です。
そもそも、計算力がないと家庭学習にも時間がかかり、そのうえ間違いが多いとやる気もなくなります。土台となる計算力は、未就学児~小学校低学年のうちから鍛えておくにこしたことはありません。
ところで「計算が速い」ということは、頭の回転が速い、ということだと思っていませんか?
──そうじゃないのですか!?
武井先生:厳密に言うと、計算は“覚えている数字と数字の組み合わせの答えを、いかに速く頭から引き出せるか”なんです。
「九九は暗記」と言えば皆さん納得されると思うのですが、実は足し算もパターンの暗記。足し算要素の組み合わせは、よく見ると81個しかないんです。
引き算も割り算も実は九九があるのです。無限にあるように見える計算は、実はそれだけの繰り返しなんです。
「計算は、実は暗記です」(武井先生)。
武井先生:それをいかに素早く正確に頭から引き出してこられるか。要素を正確に覚えれば、速く計算をすることができるからです。
これなら、「数字の数だけ答えが無限にある!」と思うよりもやる気が湧いてきませんか? お子さんには、最初から四則演算(+、-、×、÷)の九九の仕組みや、パターンがあることを見せておきましょう。カードなどを利用し、それをランダムで覚えることを繰り返すことで、計算の土台ができ、速く正確になっていくんです。
ただし、これが意外に覚えられない。それだけ土台作りが大事ということです。
もちろん、これは四則演算の原理をはじめによく理解させたあとの話で、表面的に覚えても意味がありません。
毎日反復する習慣をつける
武井先生:もうひとつ大切なことは、コツコツ反復する習慣をつけること。フォトンでは、新2年生から入塾できますが、入塾すると、1日1問ノートというのを作ります。
テキストで間違えた問題に印をつけておいて、毎日1問だけ、それを解き直すというのを、中学受験の入試まで1日も欠かさず繰り返していきます。4年生になると、大手塾の問題も入れて、1日2問にしますが、毎日専用のノートに間違えた問題を解いていく。1日にしたら10分程度です。ただ、これがものすごく効果を生むんですよ。
──毎日1問10分程度でいいんですか?
武井先生:負担になると続きません。大事なのは、毎日やること。そしてやるのは相当前に間違えた問題ということです。人間、考え方に癖がありますから、ミスした問題には自分の考え方の癖が関わっていて、そう簡単に修正できない。だからこそ、間違えた問題を解き直すことは大切です。
適切なタイミングで各単元の解法を思い出すことで、記憶は定着していきます。間違えた問題を単元に関わらず貯めておいて、毎日少しずつ解き直してみましょう。ご家庭でもすぐにできることなので、やってみてください。これは効果絶大です。
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間違えた問題を毎日解き直す。確かに毎日とはいえ、10分くらいならば家でも実践できそうです。
しかし、意外にもコツコツ型のアドバイスに驚きました。次回2回目では、ずっと算数の苦手意識を持ったままの高学年の勉強法について、引き続き武井先生にお伺いします。
撮影/安田光優
取材・文/佐野倫子
『中学受験ウォーズ 君と私が選んだ未来』著:佐野倫子(イカロス出版)