深海魚「ゲンゲ」の名前の由来は【利用価値がない下の魚】 徐々に食用の動きも
魚の語源は様々ありますが、利用価値が低いことが名前の由来になった魚がいるのをご存じでしょうか?「下の魚」が訛ってゲンゲと呼ばれるようになった深海魚ゲンゲについてご紹介します。
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深海魚ゲンゲとは
ゲンゲはゲンゲ科に属する魚の総称。日本国内では2024年5月現在、64種のゲンゲ科が記録されています。
ゲンゲ科に属する多くは小型種で、いずれも背鰭・尾鰭・臀鰭が連続し柔軟な体を持つことが特徴。腹鰭は目立たない種が多いです。
なお、このグループの魚たちの多くは○○ゲンゲと付きますが、○○ガジという種も少なくないため、タウエガジ科の魚と間違えないように注意しましょう。
また、本科の魚は主に東北、北海道、日本海側の深海に分布する種が多いものの、宮城県から土佐湾にかけて分布するイレズミガジのように比較的南方に生息する種も知られています。他にもナガガジのように浅海に生息し、時に汽水域に出現する種もいるようです。
食用としてのゲンゲ
本科の魚たちはゼラチン質の体を持ち、筋肉中に水分を多く含むことから鮮度の低下が早く、利用価値が無いとされていました。
利用価値がないことから「下の魚」と呼ばれていたそうで、これがゲンゲという名前の語源とも言われています。最近ではマイナスイメージを払拭するために幻魚とも書かれることもあるそうです。
現在、主に食用として流通するゲンゲはノロゲンゲ、シロゲンゲ、カンテンゲンゲ、タナカゲンゲの4種。いずれも東北や日本海側の底引き網などで漁獲される魚で、安価で流通します。
ノロゲンゲ
ノロゲンゲはゲンゲ科ノロゲンゲ属に属する魚で、大きさは30センチ程とゲンゲ科の中では中型の部類。本種の体色は白く滑らかな肌触りを持つことが特徴です。
また、ノロゲンゲは北海道~山口県・宮城県の水深200~1800mという広い範囲に生息する魚で、主に底引き網やカニを狙った漁で混獲されます。かつて、価値がないことから捨てられていましたが、現在では関東でもしばしば見る魚になっているといいます。
富山県では甘えび漁で混獲される魚として知られており、別名「ドギ」とも呼ばれています。
昔は商業的価値はなかったものの食味や食感が評価され徐々に知名度を上げており、「富山のゲンゲ」として富山県の冬のプライドフィッシュにも選定される程に。現在、プライドフィッシュになっているゲンゲ科の魚は全国の中でもノロゲンゲのみです。
汁物や煮付け、干物、揚げ物などで食べられており、特に干物になったゲンゲは生の状態からは想像のできない姿をしています。これはゲンゲが多くの水分を含むことが原因です。
シロゲンゲとカンテンゲンゲ
シロゲンゲとカンテンゲンゲはいずれもシロゲンゲ属に分類され、東北の底引き網で混獲される魚です。両種はノロゲンゲよりも大型になるものの食用としての知名度は高くありません。
流通上、シロゲンゲとカンテンゲンゲが区別されることは無く単に「ゲンゲ」という名前で流通します。見た目がグロテスクと言われることもあるため、ぶつ切りの状態で売られることも少なくありません。シロゲンゲ属の2種は酷似するもののシロゲンゲはカンテンゲンゲと比較して胸鰭が尖らないことや、頭部が側扁しないことで区別することができます。
ノロゲンゲ同様に汁物や唐揚げで食べると美味しいようです。
ババアと呼ばれるゲンゲがいる?
魚には変わった地方名が付けられていますが、人々から「ババア」と呼ばれる魚もいます。
タナカゲンゲはゲンゲ科マユガジ属に分類される魚で、その顔つきから島根県では「ババア」と呼ばれています。本種はゲンゲ科の中では大型になる種でその大きさはなんと1m以上。
主に日本海側の底引き網で漁獲される魚で、地元では煮付けや鍋、フライなど様々な料理で食べられています。しばしば関東の市場にも入荷があり、徐々に地名度が上がっている魚でもあるようです。
かつては利用価値がないことから捨てられていた魚ですが、現在では徐々に食用として流通するようになりました。ゲンゲのように昔は価値が無かった魚たちでも時代が変わり値段が付くのはとても良いことですね。
(サカナト編集部)