仕事に前向きになれないあなたへ贈る3冊【三宅香帆が選ぶ、働くあなたへ贈る本】
新緑のまぶしさとともに、季節の変わり目を感じる5月。少しずつ日常が落ち着いてくる一方で、心の中にはまだモヤモヤした気持ちが残っていませんか? 新年度の慌ただしさが過ぎ去った今こそ、自分と静かに向き合う時間を取ってみることも大切です。
新書大賞2025を受賞した話題作『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』の著者であり、年間365冊の本を読む三宅香帆さんによる連載 「三宅香帆が選ぶ、働くあなたへ贈る本」 。「働くあなた」へ向けて、文学、ビジネス書、エッセイなど、ジャンルを超えた3冊をご紹介します。
5月のテーマは、 「仕事に前向きになれないあなたへ」 。
迷いや悩みを抱えるあなたに、三宅さんの選書とあたたかなメッセージをお届けします。
今月のテーマ:
「仕事に前向きになれないあなたへ」
1冊目『なぎさ』
三宅香帆
仕事でストレスを感じている時のしんどさと、仕事に楽しさを感じている時の高揚感、どちらも余すことなく描かれている素晴らしい小説。主人公は妹から誘われてカフェを開設することになるが、一方で夫はブラック企業の仕事に呑まれていく。
しんどい時こそ小説に頼ってほしい、と言いたくなるのはこういうものがたりがこの世にあるからだ。
内容
故郷を飛び出し、静かに暮らす同窓生夫婦。夫は毎日妻の弁当を食べ、出社せず釣り三昧。行動を共にする後輩は、勤め先がブラック企業だと気づいていた。家事だけが取り柄の妻は、妹に誘われカフェを始めるが。
著:山本 文緒
発売日:2016年6月18日|出版社:KADOKAWA/角川文庫
2冊目『サブカルサラリーマンになろう 人生をよくばる108の方法』
三宅香帆
ラジオやコラムで知られるスージー鈴木さん、実はずっと、サラリーマンとラジオパーソナリティーを両立していた。なぜそんなことが可能なのか? 自分の好きなことと仕事を両立させるコツは? 鈴木さんの仕事術は、柔らかく、それでいて具体的。読むと「自分も好きなことを諦めずに明るく頑張ろう」と思える名著なのだ。
内容
会社員になっても、サブカルをあきらめない。
元会社員、元中間管理職の音楽評論家・スージー鈴木が、オリジナル格言で勧める“サブカルチャー×仕事”!
一部上場企業に30年勤め上げ、一方でサブカルチャーを突き詰め、評論家として10数冊の著作を刊行し続けたスージー鈴木が、会社員とサブカルを両立する楽しい生き方を指南。108のオリジナル格言を通じ、「サブカルサラリーマン」として人生を2倍楽しむ方法を伝授する。
著:スージー鈴木
発売日:2024年3月29日|発行:東京ニュース通信社|発売:講談社
3冊目『私たちのテラスで、終わりを迎えようとする世界に乾杯』
三宅香帆
仕事はただ疲れるばかりかもしれないけれど、まあ友達とその愚痴を言ったり、何か楽しみなことを見つけられたらいいよね……と思える短編小説集。働いている人がさまざまな視点から登場する。一編一編がとても短いので、疲れてる時も読みやすいところもおすすめ。韓国の小説で少し頭を海外に飛ばして、明日からも頑張る活力を得られたらいい。
内容
チョン・セラン初の掌篇小説集。仕事はぼちぼちで、海外旅行なんて行けないけれど、ルームメイトと乾杯する小さなテラスはある──『フィフティ・ピープル』のチョン・セランが、明るい未来が見えない世界だからこそ、ささやかな希望を失わずに生きる人々をおかしみをもって描く、掌篇小説集。
著:チョン・セラン|訳:すんみ
発売日:2024年11月7日|出版社:早川書房
三宅香帆さんから「仕事に前向きになれないあなたへ」
今年も暑い夏がやってきそうで、うんざりしてませんか? 大丈夫ですか?
私は日々寒暖差に怯えています。毎日何を着たらいいのかよくわかりませんね。新生活だと余計に何を着たらいいのかわからなくて悩んだりしますよね。
季節の変わり目のテンポについていけず、しんどい時もあるかと思いますが、あなたがゆっくり本を読んだり好きなことをしたりする時間をとれますように。応援してます!
プロフィール
三宅 香帆 (Kaho Miyake)
1994年高知県生まれ。京都大学人間・環境学研究科博士後期課程中退。リクルート社を経て独立。主に文芸評論、社会批評などの分野で幅広く活動。著書『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』『「好き」を言語化する技術』等多数。
X(旧Twitter) @m3_myk YouTube 三宅書店【本を読むモチベを上げるチャンネル】