女性の「更年期と老化の受け止め」に3パターン。休むのはわがまま? 更年期休暇も求む!【日日更年期好日 #6】
女性なら誰でも通る茨の道、更年期。今、まさに更年期障害進行形の小林久乃さんが、自らの身に起きた症状や、40代から始まった老化現象についてありのままに綴ります。第6話は「求む、更年期休暇」。
老化を認められない、50代
【日日更年期好日】
「あの~、私も40代になったのでそろそろ更年期が気になっているんですが。Aさん、更年期はどんな症状だったのか教えてもらえないでしょうか?」
「私? 私ね…全然なかったんですよ! 更年期。みんな大変みたいだけどねえ」
「症状なしですか。それは良かったですよね。じゃあ、閉経もすんなりと…?」
「うーん、周期は乱れているけど、まだ…ありますよ!」
40代に入って“更年期障害”のワードが脳裏に散らつき出した頃。とある50代の先輩との会話を思い出した。更年期とはどんなものか、情報収集を始めていたのである。
当時Aさんは猛暑でもないのにやけに汗をかき、カーディガンを脱ぎ着していたので「のぼせですか」と質問してみると、笑顔でかわされてしまった。どうもあの回答は真実ではなかったような気がして、いまだに解せない。
人生の諸先輩方から、更年期に関する話を聞くうちに、老化に関する受け止め方が3パターンに分かれると仮定した。まずは「更年期を認めない、会話を逸らす」系。実はこれが圧倒的に多かった。
同じように女優の斉藤慶子もかつてのインタビューでこう話している。
「私、こんなふうに何も(健康に)気にしてこなかったけど、毎年受ける人間ドックの血液検査は全てA評価。しかもHDL(善玉)コレステロールが高いと褒められます。更年期も一切なかったし、病気もしたことがなくて、体と肌は強いけど、色黒です(笑)。」(「美ST」2021年8月号)
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「更年期症状がない」発言を深読み
でも更年期障害の症状がないというのは、現在ドンズバ世代で悩んでいる私の立場からすると、腑に落ちない。わずかな惨めささえ感じる。めちゃくちゃスタイルの良い女性に「大食いだから!」と、言われる気持ちに近い。
「更年期のない女性はいませんよ。更年期は女性ホルモンが衰退していくことですから、全女性誰にでもあることです。一生、出産できるわけではないです。ただ症状は人によって全く違いますから、小林さんのようにつらい人もいれば、感じない人もいます。それだけです」
そう言うのはかかりつけの婦人科医。
私の推測だけど「更年期症状がない」と言う女性の一部は老化を認められないのでは? と思う。誰でも老けて見られたくはないけれど、芸能人みたいに若々しさは保てない。自分が更年期だとさらしてしまうと、おばさんレッテルを貼られることになる。女ですもの、最後の最後まで足掻きたい。ポジティブな意味での虚栄心だ。
かすり傷で更年期を終えたキャリアウーマン
そして「本当に仕事が忙しくて、更年期なんかに構っていられなかった」系。
かつての女性上司にも前述と同じような質問をしてみた。彼女は出版社の社員で、現在は定年退職をしている。
「更年期? あったかなあ? 50代なんて編集長の仕事が忙しくて、それどこじゃなかったんだよね。怒りっぽいみたいなことはあったかもしれないけど、生理もいつの間にか終わっていたかな。もし(更年期の症状に)気づいたら、そればかり気になっていそうだけど」
元上司の怒りっぽさは更年期以前からだったと記憶しているので、彼女の話してくれたことが更年期の症状とは限らない。
先日小泉今日子さんこと、キョンキョンが『あさイチ』(NHK総合)にゲスト出演した時も「ちょっと暑いな、とは思ったけれど、仕事が忙しくて更年期どころではなかった」と話していた。
他も脚本家や文筆家など、忙しそうな女性に聞くと同じような返答だった。仕事が薬とは、幸せなことなのかもしれない。私もそうなりたい。
求む、更年期休暇!
最後は「自分が更年期だと堂々と話して、理解を得よう系」。これが私だ。まだ「おばさん」だと自称することが憚れることもある昨今。「更年期です」なんて言うと、
「どんなふうに返して良いのか分からないから、おばさんだ、更年期と言われたら困りますよ…」
そう男性から言われたこともある。いや、同情して欲しいわけでもなく、本人の意図しないところで、体調が悪いのだから「病気ではないよ」という宣言だと捉えて欲しい。目の前にいる人が突然汗をかいたり、眩暈で辛そうにしていても、心配は無用なのです。
最近、企業でもやっと月経に関する理解が深まってきたと聞く。女性なら分かると思うけど、1回につき20~140mlの経血量があれば休暇を取って、寝ていてもおかしくはない。男なら、血液量に驚いて死ぬ。
そのほかにもPMSなど日常生活の弊害は数多あるのに、男性の前では口にできない「恥ずかしいこと」だったと思うと、モヤっとする。
2022年のNHKによると、およそ5300人(女性4296人・男性1038人)に取った調査では、更年期症状によって仕事にマイナス影響が女性で15.3%、男性で20.5%出ていると聞く。
「仕事を辞めた」「雇用形態が変わった」「労働時間や業務量が減った」「降格した」「昇進を辞退した」などの影響は大きい。中でも更年期離職によって、年間6300億円の経済損失もあるそうだ。
こんな状況なのだから、そろそろ日本も更年期休暇を作ったほうがいい。体温調節もできず、だるくて、精神がイライラしているのに仕事ができるのかと言えば、無理。休むことはわがままではない。
ホルモンに関わることは生活へ影響が大きいのに、我慢を強いられるのは、おかしい。これは女性だけではなく、男性も同じだ。恥ずかしいことではなく、全てが生理現象だと思い出そう。
「今日は更年期の症状がしんどいので、午後から休みます」
そう言って、許可をしてくれない上司がいたら、この連載のURLを水戸黄門の印籠のごとく突き出して、休みを勝ち取ってほしい。
(小林久乃/コラムニスト・編集者)