私って繊細さん? ——人の目を気にして、仕事に挑戦できない。悩める人の「自己効力感」の高め方
(イラスト:なおにゃん ヤメコミ! byマイナビ転職「気にせずいきたい」( https://tenshoku.mynavi.jp/knowhow/cat/yamecomi/nao/?src=mtc ))
「いつも人の目を必要以上に恐れたり、少し失敗すると、ずっと落ち込んでしまいます。最近自己効力感が低い人もそうなりやすいと聞いたのですが、自己効力感を高める方法はありますか?」
キャリア相談の現場でもたびたび寄せられる話題だという、今回のお悩み。例えば、会議で発言したいのに不安で黙ってしまう、新しい仕事に挑戦したいのに失敗が怖くて動けない——そんなふうに、挑戦の一歩を踏み出せずにいる方は少なくありません。
「もっと自信があれば」「気にしすぎる性格を変えたい」と思っても、どうすればいいのか分からない。その背景には、“自己効力感”の低さが関係しているかもしれません。
今回は、「自分を信じる力」をどう育てていくかについて、キャリアコンサルタントの林碧先生にアドバイスをいただきました。自分を責めるのではなく、自分の可能性に目を向けるきっかけにしていただければ幸いです。
キャリア・コンサルタント
林 碧(はやし みどり)
株式会社キャリアイズ 代表取締役社長、国家資格キャリアコンサルタント・キャリアコンサルティング技能士2級、両立支援コーディネーター。
企業人事経験および個別相談対応経験を活かし就職・転職の相談からライフキャリアビジョン構築、育児・傷病など個別事情との両立まで、幅広い相談に対応。通算4000件以上の個別面談実績、年100件以上の研修登壇実績を保有。特に若年層のキャリア形成支援を得意とし、大学での登壇実績が豊富である他、企業向けの育成者研修や若手定着支援、人材コンサルティングも実施。日経Xwomanアンバサダー。小学生2児の母。
•そもそも自己効力感って何でしょうか
•自己効力感と能力は一致するものではない
•「自己効力感」は「成功体験の積み重ね」
•考え方の癖を修正すれば自己効力感は高くなる
•焦らず無理ないところから取り組んでみましょう
———今回いただいたのは、「人の目を必要以上に恐れてしまう」「少し失敗するとずっと落ち込んでしまう」という方からのご相談ですね。
失敗や人目を過度に気にしすぎてしまうという自覚はあるけれども、どうしたらいいか分からないというご相談は、個別相談でもよく受けるお悩みのひとつです。
いろいろな観点からアプローチができるテーマではあるのですが、今日はご質問者様が「自己効力感」というキーワードを出してくださっているので、自己効力感を上げていくためにはどうしたらいいのか?という観点でお話ししていきたいと思います。
そもそも自己効力感って何でしょうか
「自己効力感」という言葉は聴いたことがあるけど、実は意味が分かっていない……という方もいらっしゃるかもしれませんね。
「自己効力感」とは、言い換えるならば「自分にはきっとできると“自分を信じる”力」のこと。心理学者のアルバート・バンデューラが提唱した考え方です。
人は生きているなかでさまざまな課題に直面します。また、個々人の夢や目標を抱きます。
その課題を乗り越えることができるだろうと思える力や、夢や目標を叶えることができるだろうと思える力を「自己効力感」といい、自己効力感が高い方が人は幸せであると考えられています。
整理すると、「自分が課題を乗り越える力は無いのではないか、夢や目標が叶えられないのではないか?」と心のどこかで思っている人の共通点として、「必要以上に人目や失敗を気にしすぎてしまう」という傾向があります。
そして、それを踏まえたときに前提となる、自分に対する自信を持つ方法はあるのか、「きっと乗り越えられると自分を信じる力」はどうやったら高まるのか、というのが今日のお話です。
自己効力感と能力は一致するものではないまず、皆さんに最初にお伝えしたいことは、自己効力感と能力は必ずしも一致しない、ということです。
実際、能力的にはいろいろなことができるにもかかわらず自己効力感が低い方もいらっしゃいますし、到達までの先は長いと感じつつも自己効力感が高いという方もいらっしゃいます。
よく、自信が無いので何か手に職をつけたい、能力をつけたい、と話される方がいらっしゃるのですが、実はそこには直接的な結びつきはないのです。
大前提として、皆さんのなかに課題を乗り越える力というのは存在しています。
確かにすぐには突破できない壁や簡単には叶わない夢に向き合っているケースも多くありますが、それらも時間をかけて段階を踏めば、いつかは達成という結果につながることでしょう。その段階がイメージでき、自分を信じる力があることが、自己効力感が高いということなのです。
遠くにあったとしても達成を信じることができるからこそ目の前のことに前向きに取り組みやすく、そのため最終的には良い結果を出せる。こうした点が、「自己効力感が高いことが幸せに生きることにつながる」と言われる理由でもあります。
「自己効力感」は「成功体験の積み重ね」ではその「自己効力感」はどうやって築かれていくのでしょう。
それは「自分はうまくできた」「やり遂げられた」と感じた経験、逆に「うまくできなかった」「失敗してしまった」と思った経験の数や頻度に由来しています。
「これまでもたくさん達成できた」との実感が、「今後もきっと達成できるだろう」という想定につながり、いつかはたどり着ける、と自分を信じることにつながってくるのです。
こうお伝えすると、「成果を成し遂げる必要があるなら、やはり能力は必要ではないか」と考える方もいらっしゃるのですが、そうではありません。
確かに、何か大きな成果を出したと思う出来事があれば達成感も感じますし、一時的には自己効力感は大きく向上するでしょう。ただ、そのような経験というのは、なかなか高い頻度で現れるものではありません。その結果、自信を維持するのは難しくなりますし、大きな成果を目標とすればそれを成し遂げるハードルは上がるため、逆に自信を無くしてしまうリスクも大きくなってしまいます。
先ほどお伝えしたとおり、「自己効力感」を高くもつには、「高い頻度」で「うまくいった」と感じられるかどうかが重要です。
つまり、いかに日々の出来事のなかで、「うまくいった」と感じる経験=成功体験を積み上げることが、自己効力感の高い状態を維持できるかどうかに直結します。
逆にいえば、同じような日常を過ごしていたとしても、うまくいかなかった部分に注目し続けてしまうと、それは失敗体験となって積み上げられてしまい、結果的に自己効力感も下がっていきます。
考え方の癖を修正すれば自己効力感は高くなる自己効力感が低い方はぜひ一度、自分の考え方を見つめてみてください。ひとつひとつの物事について、できたところよりもできなかったことにフォーカスを当てて捉える癖がついてはいないでしょうか?
例えば「80点を取った」という結果に対して「80点分理解ができた」と考えるか、「20点も落としてしまった」と考えるかはその方次第ですが、落としてしまった20点に常に注目している状態では、自己効力感はなかなか高まっていきません。
課題の難易度が上がれば上がるほど、自分の想像通りパーフェクトな結果が出る、ということはなかなかないもの。だからこそ、そのなかでもうまくいった部分に着目し、それができた自分を認めて、前向きに物事を捉えることが重要になっていきます。
実はこの物事の考え方は、子供の頃の親御さんからの言葉かけや、周囲の人からの言葉かけの影響で癖になっているケースも多いものです。厳しく育てられた方の中には、何十年とかけて考え方が蓄積されているという事例も多く見受けられます。
長期間かけて根付いた考え方の癖であればあるほど、一朝一夕には変えていけないもの。日々のなかで少しずつ、ポジティブな面や達成できていることにも意識を向けていけるようになるといいでしょう。
まずは自分に対して厳しくなってしまう自分の意識を自覚することが、最初の一歩といえます。
焦らず無理ないところから取り組んでみましょうもちろん、批判的に捉えられるからこそ、改善点が明確になるという部分もあるでしょうし、まだまだ自分は……と捉える姿勢を「謙虚」だと、前向きに受け取って貰える場面もあるでしょう。
すべての捉え方を180度変えてくださいと言うつもりもありませんし、その必要も無いとは思っています。
ただ、あなたの一番の味方であるのはあなた自身。
自己効力感を高めていきたいという方は、1日に1度、あるは週に1度、ご自身の無理ないペースで大丈夫ですので、ご自身のできたことに意識を向け、ご自身を褒めてあげる、そんな時間を作って差し上げてくださいね。
やり方はいろいろありますが、寝る前にできたことを紙やスマホのメモに書き出してみるなど、習慣のひとつして組み込むことも有効です。あるいは「うまくできなかった」と感じるような場面で、敢えてできたことや成長した部分を考えてみるのも良いかもしれません。自己効力感の高い自分になれたなら、この状態でどんな風な言葉を発するだろうと想像してみるのも有効です。
今回はあなた自身の可能性を信じる力を高める方法をご紹介しました。少しでもあなたの日々の過ごしやすさにつながることを願っています。
文:マイナビ転職編集部
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( https://tenshoku.mynavi.jp/ft/woman-job/?src=mtc )