小林親弘さん&白石晴香さんが振り返る杉元・アシㇼパと歩んだ7年間の軌跡|「劇場先行版『ゴールデンカムイ』札幌ビール工場編【前編】」公開記念インタビュー
2018年の放送開始から約7年。多くのファンを熱狂の渦に巻き込み続けるTVアニメ『ゴールデンカムイ』が、ついに最終章へ突入ッ!!
最終章の幕開けとして、劇場先行版『ゴールデンカムイ』札幌ビール工場編【前編】が全国の映画館で大ヒット公開中、【後編】は2025年10月31日(金)より公開されます。
樺太から帰還した杉元とアシㇼパは、脱獄囚・海賊房太郎と手を結び、新たな標的・上エ地圭二を追って札幌へ。現地では、第七師団の斥候に加え、土方歳三の一味が「連続娼婦殺害事件」の犯人である別の脱獄囚を捜索していました。各勢力の思惑が札幌ビール工場で交錯し、状況は混迷を極めていきます。
アニメイトタイムズでは、杉元佐一役・小林親弘さんとアシㇼパ役・白石晴香さんのインタビューをお届け。これまでの旅路、そして最終章への想いを語っていただきました。7年間の絆、互いに演じるキャラクターへの愛情――。お二人が語るアニメ『ゴールデンカムイ』の“これまで”と“これから”とは。
【写真】劇場先行版『ゴールデンカムイ』小林親弘&白石晴香インタビュー
『ゴールデンカムイ』と共に歩んだ7年間
──2018年から始まった長い旅も、いよいよ最終章に突入します。まずは率直な今のお気持ちからお聞かせいただけますでしょうか。
杉元佐一役・小林親弘さん(以下、小林):約7年間、常にどこかで意識している作品でした。他の作品をやっていても、心のどこかに「『ゴールデンカムイ』はまだ続いているな」という感覚があったので、終わりに近づいてきたことに寂しさを感じています。ここまで来たことへの感慨深さも大きいですね。
アシㇼパ役・白石晴香さん(以下、白石):私もこの7〜8年、『ゴールデンカムイ』と共に人生を歩んできた感覚です。いつの間にか自分の思い出と作品の内容が重なっていましたし、アシㇼパの成長と共に「当時の私にはこの芝居は難しかった」と感じる瞬間もあります。
原作では、野田サトル先生が思い描くラストをキレよく描いてくださったじゃないですか。それが寂しかった半面、登場人物たちのことを思うと納得できるような、繋がるような感覚もあったので、アニメもラストまで突き進み続けられるのはすごく嬉しいです。盛大な花火を打ち上げたいと思っています。
──7年間、お互いにとっての“相棒”を演じる中で、おふたりの信頼関係などもより深まったのではないでしょうか。
小林:そうですね。ただ「深まった」というよりは、最初からずっと頼りにしていました。お芝居もそうですし、例えば舞台挨拶でも、「晴香ちゃんが締めてくれれば何とかなる」と(笑)。
僕自身、最初の頃は「左に同じ」としか言っていなかった気がします。本当にずっと頼りにしている役者さんなので、そこはずっと変わりません。ただ、目に見えて役者としてやれることがどんどん増えていらっしゃるのは、お会いするたびに感じます。杉元を通して、それを見られているのもすごく楽しいですね。
白石:私も初期の頃に築かれたものが続いている感覚です。というのも、初期の頃から小林さんと伊藤健太郎さん(白石由竹役)と3人で、杉元一味としてよくご飯に行かせていただいていました。アフレコのたびにご飯に行って親睦を深めていたので、そこで絆が深まったんだと思います。その後忙しくてなかなか会えなくても、どこかで“相棒”という気持ちは途切れず、アフレコ期間が空いて再会しても、あまり久しぶりな感じがしなかったんです。
小林:たしかに。不思議ですよね。
白石:なので、安心感がすごくあります。初期の頃はアフレコで手が震えるほど緊張していた私にとって、座長として立ってくださる小林さんが、周りの皆さんと円滑にコミュニケーションを取れるように導いてくださいました。
他の現場でお会いした時も、違う役なのに「お互いの呼吸は分かるよね」みたいな空気感があって。マイクの前に2人で立てば「よし、いける」と思える。長く相棒を演じさせていただいたからこそだなと感じます。
──杉元とアシㇼパも、様々な経験を経る中で変化や成長があったと思います。その点はいかがでしょうか?
小林:杉元に関しては、あまりないかもしれないなと思っていて(笑)。成長というより、周りとの関係性の変化の中で「どう一生懸命生きていくか」という感じなんです。結構同じミスもするし、毎回アシㇼパさんを奪われちゃうし…。
白石:意外にそうですよね(笑)。
小林:自己肯定感がとても低い人なんですよ。『ゴールデンカムイ』は杉元というよりアシㇼパさんが大人たちに立ち向かい、見違えるほど成長していく物語という気がしています。僕はそれを見守り、見届ける役回りなんです。
白石:逆にアシㇼパは、一番成長が分かりやすいキャラクターだと思います。杉元と出会った当初は誰も信用せず、警戒心がとても強かったですよね。旅を続けるうちに変顔を見せるようになったり、年相応の可愛らしさが出てきたりしたのが第一段階の成長。そして、大きなターニングポイントは樺太編(TVアニメ第三期)です。信頼する相棒と離れ離れになったことで、「自分はどうすべきか」を深く思い悩んだ時期でした。様々な経験を経て彼女はより一層強く、たくましくなった。それが最終章にも繋がっていくんです。
アシㇼパの“余裕がないモノローグ”と恐怖の“鶴見劇場”
──劇場先行版『ゴールデンカムイ』札幌ビール工場編では、アシㇼパの更なる成長も描かれつつ、各勢力が大集合するエピソードとなっています。
小林:原作をリアルタイムで読んでいたので、「これがアニメになったらどうなるんだろう」「あのキャラクターは誰がやるんだろう」とすごく気になっていました。それが映画館で観られると聞いた時は嬉しかったです。
個人的に「挑戦だな」と思ったのは、ビールを浴びた鯉登の横で「んぐっ、んぐっ」てやるシーン。「これはどうやればいいんだろう?」って(笑)。
白石:私も原作を読む時から声を出しちゃう癖があるのですが、台本で読むと周りの皆さんの声が聞こえてきて、全く違うものになると感じました。物語的には盛り上がるシーンですが、台本を読んだ時は「これは大変なことになりそうだ……」と覚悟を決めたというか(笑)。
小林:(笑)。前編は戦いも多くて、杉元と土方、牛山と宇佐美、尾形が絡んでくるアクションシーンはかっこよかったです。それと、やっぱりギャグシーン。漫画でも面白いですけど、動きと声がつくと笑ってしまいます。
白石:ギャグシーン、めっちゃ良かったですよね! 「チンポ先生」と再会する時のアシㇼパさんの顔と動きがやばかったです(笑)。
逆にシリアスなシーンでは、アシㇼパが刺青人皮(いれずみにんぴ)の暗号を前にして、「これは自分の条件と一致するかしないか」と判断する場面が印象的でした。完成した映像をお客さんとして観た時に、「あれ、今までのモノローグと聞こえ方がなんだか違うな」ってハッとしたんです。
小林:ああ、たしかにそうだなと思います。第一期の頃のアシㇼパは、モノローグでアイヌ文化の知識とか、「分かっていること」を理路整然と語ることが多かったじゃないですか。一方で、今回の彼女には「これを解き明かさなければならない」という焦りと使命感があった。「私がここで何とかしなければ」という責任や葛藤の中で発せられる言葉だったから、響き方が違ったのかもしれません。
白石:そういうことか……! 聞いていて「なんだろう、ただ冷静なだけじゃない」と感じたんです。アシㇼパさんの余裕がないモノローグは「今までそんなになかったかもしれない」と気づいて。これは最終章ならではの“聴きどころ”だと思います。
──続く後編では、鶴見中尉との対峙が待っています。
小林:「鶴見劇場」……いやあ、怖かったですね。
白石:本当に恐ろしかったです。アシㇼパにとっては知りたくなかったかもしれない事実にも直面させられて……。
小林:優しかったりすることが、また怖いんですよね。
白石:大塚芳忠さんのお芝居から、ものすごい圧力を感じました。
杉元は「第二の相棒」アシㇼパは「師匠」。7年間の旅路の果てに最終章へ
──今までの7年間を経て、お二人にとって、杉元とアシㇼパはどのような存在になりましたか?
小林:僕にとっては、まさに「第二の相棒」です。彼がいるから声優業を頑張れていますし、本当に特別な作品であり、存在なので、最後まで一緒に走り抜けたいと思います。まだ先に悩んでいるセリフもありますが、それも含めて楽しみですし、最高の相棒ですね。
白石:私の人生を語る上で、外せない存在です。一言で言うなら……「師匠」ですかね。
小林:なるほど、「師匠」か。
白石:ずっと「かなわないなあ」と思いながらアシㇼパさんを演じていました。あんなに幼いのに、その知識の量や彼女の強さを見て「こうなりたい」と思いながら追いかけてきた感覚があります。常に私の先を行く存在ですし、色々なことを教えてくれました。
──最後に、この最終章を楽しみにしているファンの皆様へメッセージをお願いいたします。
小林:ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございます。アニメを観てくださる方がいなければここまで続けることはできませんでした。今この記事を読んでくださっている、あなたのおかげでここまで来れたと思っています。どうか後編も、そしてその先の物語も楽しんでいただければ幸いです。
白石:原作が完結した時、寂しい気持ちもありましたが、同時に「アニメも最後まで走りきるぞ」というキャスト一同の気持ちがより一層強くなった気がします。
劇場で『ゴールデンカムイ』を観るのが夢だったので、それが最終章で叶って本当に嬉しいです。ここまで連れてきてくださったファンの皆様には心から感謝しています。皆さんが観たかったシーンが凝縮された内容になっていると思いますので、ぜひ劇場でご覧ください。
そして、最終章を観た上で、改めて第一期から見返していただくのも、また新たな発見があって面白いと思います。最後まで盛り上げていただけたら嬉しいです。よろしくお願いします!
[インタビュー/失野]