介護現場の高齢者虐待はなぜ起こる?虐待の原因や職員個人ができる対策方法を解説!
本日のお悩み:高齢者虐待はなぜ起こってしまうのか?対策方法も知りたい!
先日、介護職員による高齢者虐待が過去最多件数となったニュースを見ました。
高齢者虐待については、高齢者虐待防止法が定められていたり、「身体拘束廃止未実施減算」や「高齢者虐待防止措置未実施減算」が定められていたりするにもかかわらず、なぜ起こってしまうのでしょうか。
また、施設単位ではなく職員個人個人ができる虐待の対策などがあれば教えてください。
絶対に防ぎたい高齢者虐待対策~私たち個人ができること~
執筆者/専門家
山本 武尊
https://mynavi-kaigo.jp/media/users/23
近年、介護施設や在宅介護の現場における高齢者虐待が社会問題となっています。特に、2023年度には介護職員による高齢者虐待の件数が過去最多となり、その深刻さが浮き彫りとなりました。
しかし、日本には「高齢者虐待防止法」や、介護報酬上の「身体拘束廃止未実施減算」「高齢者虐待防止措置未実施減算」などの仕組みが整備されています。このような仕組みがあるにも関わらず、なぜ虐待は発生してしまうのでしょうか。
本記事では、その背景を探るとともに、施設単位ではなく、職員個人ができる虐待防止の対策について考えていきます。
なぜ、介護現場において高齢者虐待は起こるのか
高齢者虐待が発生する背景には、主に以下のような要因が関係しています。
1.過重労働や人手不足
2.介護スキル・知識不足
3.精神的ストレスやバーンアウト
4.施設の運営体制や文化の影響
1.過重労働や人手不足
介護業界は慢性的な人手不足に悩まされています。厚生労働省の調査によると、2040年には約57万人の介護人材が不足すると予測されています。※
人手不足の中で業務をこなさなければならない職員は、身体的・精神的に疲弊しやすくなります。その結果、感情的になり、虐待につながるケースが生じます。
※参考:厚生労働省第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について
2.介護スキル・知識不足
介護の専門知識や技術が不足している職員は、適切な対応ができず、虐待に至ることがあります。
例えば、認知症の利用者さんへの対応を誤ることで、職員が強いストレスを感じてしまい、暴言や不適切な対応につながることもあります。
3.精神的ストレスやバーンアウト
介護現場では、利用者さんとの関係性やそのご家族とのやり取り、業務負担の多さなどが職員に精神的なストレスを与えます。
これらが積み重なることでバーンアウト(燃え尽き症候群)を引き起こし、虐待を誘発する要因となることがあります。
4.施設の運営体制や文化の影響
施設全体の風土が虐待を許容する雰囲気であったり、管理者が職員の働きやすさを考慮しない運営を行っていたりすると、虐待のリスクは高まります。
また、報告・相談しづらい職場環境も、虐待が発生・継続する要因となります。
職員個人ができる高齢者虐待防止の対策
上記環境の中において、虐待を防ぐためには、職員一人ひとりが意識を高く持ち、具体的な対策を実践することが重要です。介護職員は高い専門性と倫理観が求められます。
しかし、介護職員も1人の人間であることは否定できません。そうした環境下においてこそ、介護の専門職である皆さまである各々の高い専門性と倫理観が現場では求められます。
1.適切なストレス管理
2.同僚や上司との相談・報告体制の確立
3.介護技術やコミュニケーションスキルの向上
4.利用者さんの尊厳を守る意識づけ
5.第三者機関や外部相談窓口の活用
1.適切なストレス管理
自分自身のメンタルヘルスを守ることが、虐待を防ぐ第一歩です。
休息をしっかり取り、趣味や運動などでリフレッシュするよう意識しましょう。
また、カウンセリングやメンタルケアの研修を活用することも有効です。
2.同僚や上司との相談・報告体制の確立
虐待を未然に防ぐためには、職場内での相談しやすい環境を作ることが不可欠です。日常的に同僚や上司とコミュニケーションを取り、困ったことがあればすぐに報告・相談するようにしましょう。
3.介護技術やコミュニケーションスキルの向上
適切なケア技術を身につけることで、利用者さんとのトラブルを減らし、虐待のリスクを低減できます。特に、認知症ケアや行動心理学を学び、利用者さんの気持ちを理解することが有効です。
また、利用者さんやそのご家族とのコミュニケーションスキルを高めることで、トラブルの防止につながります。
4.利用者さんの尊厳を守る意識づけ
介護の現場では、利用者さんの尊厳を常に意識することが求められます。「高齢者だから仕方がない」「指示に従わせることが重要」といった考え方ではなく、一人の人間として接することが重要です。
利用者さんの立場に立ち、共感を持って対応することが虐待防止につながります。
5.第三者機関や外部相談窓口の活用
虐待の兆候に気づいた際には、施設内の上司だけでなく、外部の相談窓口や自治体の高齢者虐待相談センターに連絡することも重要です。
職場の環境が改善されない場合は、第三者機関の支援を受けることも選択肢の1つになるでしょう。
チェックリストを活用し、心身の健康チェックを行いましょう
上記までを理解したうえで、以下のセルフチェックリストで確認してみましょう。
特に勤務前日の休日に確認をされることをおすすめしています。
上記項目のすべてとまではいきませんが、多くの項目にチェックがつくと心も身体も健康である状態であると考えております。
日々仕事とプライベートは別であると理解をされていても、仕事以外の心身が満たされていない状況であれば、どれだけ高い倫理観を持っていても、利用者さんに接することや感情のコントロールが難しい場面があるということも少なくありません。
しかし、どれだけプライベートで辛く、悲しいことがあっても、虐待は是認されるものではありません。出勤前には気持ちを切り替えて、利用者さんの前ではプロフェッショナルとなりましょう。
最後に:職員一人ひとりの個人努力が適切なケアに繋がります
高齢者虐待は、職員一人ひとりの意識と行動によって防ぐことができます。介護の現場では、虐待を防ぐための制度が整備されていますが、最も重要なのは、職員自身が利用者を尊重し、適切なケアを提供することです。虐待防止のためには、職場全体の取り組みだけでなく、職員個人の努力が不可欠です。
介護のプロフェッショナルである皆様の仕事は本当に尊いことであります。だからこそ、介護は誰でもできるものではないということは、現場の最前線で働く皆様が一番ご存知であるかと思います。
そして、これからの介護業界では、職員が適切なストレス管理を行い、専門知識を深めることで、より質の高い介護を提供できる環境を作ることが求められます。一人ひとりの意識の変化が、より良い介護の未来を築く第一歩となるでしょう。本記事が皆さまへの一助となれば幸いです。
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