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群馬のこんにゃくがピンチ!世界初「こんにゃくビール」でPRも

TBSラジオ

だんだん秋らしくなってきて、そろそろおでんが美味しい季節になってきました。今日は、そのおでんでも活躍する「こんにゃく」の話題です。

こんにゃく芋 生産すればするほど赤字

群馬県は、こんにゃくの原料「こんにゃく芋」の生産量が日本一、全国シェアの9割を占めていますが、こんにゃく芋の販売価格が急落して、いま農家が大変な状況のようです。群馬県渋川市のこんにゃく芋生産農家 八高啓輔さんのお話です。

群馬県渋川市のこんにゃく芋生産農家 八高啓輔さん

こんにゃくの芋の買取価格が、長い間右肩下がりではいたんですけれども、去年の価格が急激な大暴落になって、かかっているコストから見ても「生産すればするほど赤字」というのが、去年の現状でした。みなさんが召し上がっているプルプルのこんにゃくは、われわれが作っている「こんにゃく芋」という地中にできる芋類のものが原料になって作っています。こんにゃくは加工食品なので、芋を粉にして保存がきいてしまう。だんだん在庫がダブついてきて、去年の暴落に一気につながったのかなと。こんにゃくは全て種芋が自家生産なんです。一度生産を辞めてしまうと「もう一回こんにゃくを作ろう」ということが難しくなってしまうんですね。「ちょっと厳しいからこんにゃく一旦辞めようか」っていう選択ができないので、なんとかしがみついて、こんにゃくを今作っているんですね。

近年、食生活の変化、温暖化による鍋物需要の低下などで徐々に需給バランスが崩れて、価格が年々下落していましたが、去年は夏の猛暑と雨が少なかった影響で特に生育が悪かったとのこと。農林水産省によると、こんにゃく芋30キロあたりの価格はここ数年4000円前後で推移していたのが、去年は3018円に急落しました。

そのうえ、過去にとれたこんにゃく芋の在庫を抱えたままで供給過剰の状態が続いているので、なかなか以前の価格に戻りにくいそう。さらに、物価高で肥料、農薬、ビニールなどの資材も高騰。生産コストを考えると「生産するほど赤字という緊急事態」だということなんです。

こんにゃく芋の価格急落 離農する農家も増加

この価格の急落、実際にどんな苦労や不安があるのか、再びこんにゃく芋生産農家の八高啓輔さんに伺いました。

群馬県渋川市のこんにゃく芋生産農家 八高啓輔さん

こんにゃくは、たくさんの農機具が必要なんですね。毎年使っていて、いつかは壊れていくものなので、更新にもトラクター、1台1000万なんていう価格がかかりますので「ちょっとこの機械が壊れてしまったら、うちはこんにゃく、もう辞めようかな」という声も多く聞かれるようになっていますね。多くの農家はローンを組んで、大きなトラクターを買って生産性の向上をはかっているんですが、そういう努力が全て水の泡と化すような破壊的な価格になってしまったなと。「早めに見切りをつけて諦めた方がいいかな」と、高齢者だけでなく若手の力のある生産者までそのように舵をシフトしていく動きが出ているので、非常に危機的状況かなと思いますね。

群馬県内のこんにゃく芋の生産農家は、2013年には1490軒あったのが、去年は719軒と、半数以下に減っています。
八高さんは39歳と、農家の中では特に若い世代ですが、高齢の農家だけではなく若手・中堅の生産者も辞めていく、という話も多いそう。こんにゃく芋の価格低下などを受けてJA群馬中央会などは今年8月、こんにゃく芋の農家支援策を求める要請書を、群馬県に提出しています。

世界初「こんにゃくビール」

そんななか、群馬のこんにゃく芋の認知度アップや消費拡大につなげようという動きもあります。
実はこんにゃく芋の生産量は日本一の群馬ですが、消費量は全国平均を下回っていて、こんにゃくが群馬の名物として浸透していないという現状があります。

この状況を打開すべく、世界初のビール「こんにゃくビール」が開発されました。
群馬大学食健康科学教育研究センター 粕谷健一センター長のお話です。

群馬大学食健康科学教育研究センター 粕谷健一センター長

こんにゃく芋を使ったビールです。こんにゃくの主成分「グルコマンナン」を糖にして、それを酵母に食べさせてアルコールを作って、一部、通常のビールに混ぜたものです。こんにゃく芋がなかなか売れないということで、活気づけることもありますし、群馬の名産品を作りたい思いもあったので「こんにゃくビール」というのができたら面白いんじゃないかという提案がありました。こんにゃく芋を直接原料としてビールを作った、ということにおいては世界初ではないかと思っています。群馬県内のファミリーマートで一斉に販売しました。生産したのが550本、2日でほぼ完売でした。非常に嬉しいですし、ものすごくコクがあって美味しいという評判を得ております。

地元の東和銀行の紹介で、群馬大学と群馬県嬬恋村のビール製造会社「浅間高原麦酒」が共同開発したもので、今年6月に初めて販売。2回目の販売として、来月、およそ3000本が群馬県内のファミリーマートなどに並ぶ予定だということです。330ミリリットルの瓶に入っていて、税込704円です。
私も飲ませていただきましたが、香りも味もこんにゃくとは思えない!フルーティーで、飲みやすかったです。

こんにゃく芋生産農家の八高さんは「こんにゃくの消費拡大が価格低下の健全な解決策だと思うので、おでんや、こんにゃくステーキ、こんにゃくを使ったきんぴらなど、いろいろな形でこんにゃくを食べて、応援してほしい」と話しています。

(TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』取材・レポート:西村志野)

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