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保護者、支援者に読んでほしい!不登校ジャーナリスト・石井しこうさんが選ぶ3冊【発達ナビ・あの人の本棚から】

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保護者、支援者に読んでほしい!不登校ジャーナリスト・石井しこうさんが選ぶ3冊【発達ナビ・あの人の本棚から】

石井しこうさんが選ぶ3冊は?

中学2年生から不登校を経験し、フリースクールに通った後、NPO法人で不登校の専門紙の編集長を務めた石井しこうさん。現在は不登校ジャーナリストとして、不登校の子どもたちや保護者に寄り添い続けています。

そんな石井さんが、「保護者の方へ」「支援に携わる方へ」「著者ご自身の作品」という3つの観点から厳選した書籍をご推薦いただきました。実体験と豊富な取材経験に基づく選書は、きっと多くの方の心に響くはずです。

石井しこうさんが選ぶ!保護者の方におすすめの1冊:『学校に行かない君が教えてくれたこと』(今じんこ著)

小学校入学から間もない5月、息子・もっちんが「明日学校に行かない」と宣言したことから始まる、作者・今じんこさんの実録コミックエッセイ。わが子の発言する様子に右往左往し、学校の言い分に揺れる等身大の親の姿をリアルに描いています。
本書では、息子の味方でいるつもりでも、気づかぬうちに追い詰めてしまっていることへの気づき、仕事との両立の難しさ、そして親自身のメンタルが追い詰められていく様子……不登校という状況に直面している保護者の方はもちろん、すべての子ども、大人におすすめできる一冊です。

「わが子の行きしぶりが始まった」「うちの子、不登校になったのかもしれない」と思ったら、まずは読んでほしい本です。行きしぶりや不登校の子の親ならば、読み終えるまでに何度も泣くはず。「そう、それがつらいんだよ」「同じだ!」とつぶやき、親自身が孤独だったこと、闘ってきたことに気がつくでしょう。親自身の気持ちが見えてくると、こどもの気持ちも見えてきます。

支援者の方におすすめの1冊:『かがみの孤城』(辻村深月著)

学校での居場所をなくし、部屋に閉じこもっていた中学生・こころが主人公の物語。ある日、部屋の鏡が光り、手を触れると異世界の城へと導かれます。そこには見ず知らずの中学生6人が集まっており、オオカミ様から「どんな願いでも叶えてやろう」と告げられます。

不登校の中学生たちの心情をリアルに描いた作品で、2018年本屋大賞受賞作品。「リアルすぎて途中で読めなかった」と言われるほどの描写力で、不登校の子どもたちの内面世界を体感できます。

専門的なマニュアルや行政のガイドラインは「正しい」のですが、支援者自身の実体験に紐づいた「引き出し」につながりづらいという弱みがあります。現場で目の前にいる子の気持ちが分からない時に役立つのがこの小説です。主人公たちの心情のリアルさが他の書籍と比べてとびぬけており、不登校を疑似体験することで、現場で打開したい際のカギになります。

発達ナビユーザーへおすすめの自著1冊:『学校に行かなかった僕が、あのころの自分に今なら言えること』(石井しこう著)

不登校だった著者が一番どん底で悩んでいた時に、何が救いの言葉になったのか。当事者が本当に悩んでいた時にどんな対案を必要としていたのかを、悩み別でまとめた一冊です。

不登校の子は「学校へ行けない」という単純な悩みを抱えているわけではありません。「ふつうになれない自分が悔しい」「不登校の理由が分からない」「学校へ行かなくていいと言われてもモヤモヤする」など、実に多様な悩みを抱えています。400名以上への取材で得た筆者の経験と知見がつまっています。

「不登校当時の私、つまり絶望していた私に言えそうなことが見つかってきました」と著者が語るように、当事者の心に寄り添う言葉を丁寧に紡いだ「安心のきざし」を与えてくれる本です。

困っている不登校の子にどう声がけしたらいいか、悩んだらぜひご検討ください。自身の本で恐縮なのですが、本人の悩みの本質に向き合うことが新しい一歩への第一歩になります。なかなか返答の方向性が見つからない時の参考にしていただけたら幸いです。たくさんの取材で得た結論がつまっていますので、当事者の方にも、支援する方にも役立つはずです。

まとめ

石井しこうさんが選ばれた3冊は、不登校という体験を出発点としながら、人間の多様性と可能性を深く掘り下げた珠玉の選書です。
不登校に直面している親御さんや当事者の方はもちろん、画一的な価値観に息苦しさを感じている方、自分らしい生き方を模索している方にとって、これらの本は道しるべとなるでしょう。石井さんの等身大の体験から生まれた、やさしくも力強いメッセージに触れてみてください。

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