【中学受験】「社会の伸ばす勉強法」入塾希望者増の注目の中学専門塾代表が解説
教育ジャーナリスト・佐野倫子さんによる「中学受験伴走」連載。中学受験専門塾「ジーニアス」代表・松本亘正先生に「社会を得意にする勉強法」を取材。今回は低学年について(全3回の1回目)。
〔中学受験伴走〕低学年から「社会」に強くなる方法とは⁉教育ジャーナリスト・佐野倫子です。「中学受験伴走(サポート)」連載。今回は、「社会」の勉強法についてです。中学受験の社会の勉強法は、よく「最後は暗記」「受験直前に猛チャージでなんとかしよう」「歴史が好きならなんとかなる」など、さまざまな説が流れているものの、どれも保護者の立場からすれば確証が得られないので不安の科目でもあります。
そこで難関校の合格率を年々上げ続け注目を集める中学受験専門塾「ジーニアス」代表兼社会科講師の松本亘正(まつもとひろまさ)先生にお聞きしてきました。1回目は低学年の勉強法編です。
子どもとスーパーでの会話が「社会」の勉強になる理由
──中学受験の科目のなかで、意外にその勉強法について語られていることが少ないと感じる社会について、今日はいろいろな角度から質問させてください。
まず幼少期、そして小学校低学年の時期に、「社会が得意な子」を育てるために親ができることはありますか?
松本亘正先生(以下松本先生):社会は生活に根差した身近な科目ですから、「あ、それ知っている!」とか、「聞いたことあるな」「行ったことあるな」ということが有利になります。だから、お子さんが小さいときにできることはたくさんありますよ。
──なるほど、生活のなかに学びの種がたくさんあるイメージですね。幼少期から自然や遊びのなかでさまざま見聞きしたほうがいい、とはよく言われることですが、社会もそれが有効ということですか?
松本先生:はい。ただ、ひとつ注意したいのは、iPadやスマホなどのデジタルデバイスで動画を見せることよりも、見聞きしたり、触ったり、食べたりした、実際の「体験」から入ってきたリアルな記憶のほうが、後に塾で勉強したことと結びつきやすいですね。
例えば、家族で沖縄に行ったとき、2泊3日のうち、半日だけ首里城に寄ってみる。欲張ってあれもこれも学習に結び付けなくても大丈夫です。「沖縄と言えば首里城だね!」と、記憶に残れば、塾で学んだときに、沖縄の位置や気候など、周辺知識も答えられるようになります。
小学生はそれで充分なんですよ。これだけのことで自己肯定感が高まりますし、社会という科目が好きになるきっかけにもなりますから。
──日常生活でもできることはありますか?
松本先生:ありますよ! 例えば、昨日も4年生に授業をしましたが、『みんながおうちで食べているお米の銘柄はなに?』と聞くと、即答できる子とまったく知らない子と半々でした。「銘柄ってなんだ?」という子もいるし、「新潟産のこしひかり!」と即答する子もいます。地理の勉強で、どちらが米どころについてすんなりと学べるかは明白ですよね。
他にも、牛肉は国産とアメリカ産、オーストラリア産が並んでいるとか、養殖サーモンにはチリ産とノルウェー産が多いとか、知っているだけで輸出入の勉強がしやすくなります。
そういうことは、日ごろスーパーに一緒に買い物に行き、会話をしているかどうかというだけ。ぜひこれから意識してみてください。
──つい「忙しいから」と、スーパーはさっと母だけで行ったり、子どもをお菓子コーナーに誘導してさっと買い物したり、となりがちな自分を反省しました。
松本先生:幼少期や低学年だけじゃなく、高学年でも遅くはありません。無理なく、生活のなかで取り入れてみてください。ふるさと納税の返礼品についても一緒に探してみるといいかもしれませんね。ご当地名物、産地など、学びの宝庫ですからね。
歴史は漫画がダメなら動画できっかけづくりを
──次に歴史の勉強についてお聞きします。生活と接点がある地理に比べて、歴史は興味がある子とない子の差がつきそうなイメージがあります。
例えば、戦国武将に興味がある子は、そこを切り口に歴史が得意になると思うのですが、一方で、まったく興味がない子にとって、歴史の受験勉強は一筋縄ではいかないと思うのです。そこで低学年の子だと、どのようなアプローチが有効でしょうか?
松本先生:おっしゃるとおり、まず興味を持つきっかけ、入り口を作れるといいですよね。ご家庭に歴史漫画を揃えておいて、いつでも手に取れるようにしておくとか、歴史上の人物の伝記を読ませるなどは王道です。
とはいえ、歴史漫画がうまくヒットしないこともあるでしょう。そういうときは、テレビや動画をきっかけにするのもアリだと思っています。
YouTubeの歴史に関する動画なども、選べば良質なものはあります。何も引っ掛かりがないよりは、動画でも見ていればフックになるということです。
最小限のスタートなら何を勉強すべき?
──低学年からどうしても教材を使って準備したい親御さんもいると思います。時間があるうちにこれはやっておこうというのはありますか?
松本先生:お気持ちはわかります。ただ低学年に向けてなので、あくまで時間にゆとりがあれば、かつ生活の中で実体験を積むのが優先という前提となりますが、都道府県の名称を漢字で書けるようにしておくことでしょうか。
さらにパズルや地図を使って位置がわかるといいですね。もっと余裕があれば、県庁所在地まで書けるとかなり強いです。歴史漫画を読むときにも、地名がわかっているとぐっと記憶に残るでしょう。
地理に関しては導入として「改訂版 合格する地理の授業 47都道府県編」という参考書を作りましたので、よかったら書店で見てください。これは4・5年生に向けて作りましたが、3年生の親御さんにも好評をいただいています。
『改訂版 合格する地理の授業 47都道府県編』著:松本亘正(実務教育出版)
──なるほど、漢字で書けるに越したことはありませんね。そのくらいの学習でOKと言われるととても心強いです。
松本先生:低学年に詰め込み暗記は全く必要ありません。細かいことを無理に暗記させてもどうせ忘れてしまいますから。
それよりも学びの種を植えていくイメージで、社会という科目になじみを持たせてあげましょう。その効果はきっと絶大です。
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次回2回目では、地理や歴史の勉強が始まる4・5年生の勉強方法について、引き続き松本先生にお聞きします。
撮影/日下部真紀
取材・文/佐野倫子
『中学受験ウォーズ 君と私が選んだ未来』著:佐野倫子(イカロス出版)