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戦国一酒癖が悪い男! 福島正則の破天荒すぎるエピソード

草の実堂

画像 : 『太平記英勇伝 三十三 福島左衛門太夫正則』 public domain

福島正則とは

福島正則(ふくしままさのり)は、賤ケ岳の戦いで「七本槍の一人」として称された、豊臣家を代表する勇猛果敢な武将である。

その一方で、彼は酒にまつわる数多くのエピソードでも知られている。

民謡「黒田節」にも歌われているように、正則は大酒を飲んだことで、秀吉から賜った天下三名槍の一つ「日本号」を黒田長政の家臣である母里友信(もり とものぶ)に渡してしまったという有名な逸話がある。

戦国一酒癖が悪い男、福島正則のエピソードを紹介しよう。

福島正則の簡単な生涯

画像 : 福島正則 public domain

福島正則は、永禄4年(1561年)に秀吉の母・大政所の妹の子として生まれた。
秀吉とは従兄弟であり、その縁で秀吉の小姓となった。

三木城攻撃で初陣を飾り、賤ケ岳の戦いでは「七本槍」の一人として最高額の5000石を賜り、その名を全国に広く知られるようになった。
その後も、小牧・長久手の戦い、根来寺攻め、四国征伐、九州平定、小田原征伐で武功を挙げ、伊予国今治11万3000石を賜り、朝鮮出兵にも参加したことで、豊臣恩顧を代表する猛将となった。

秀吉の死後は、武断派の代表的な大名として石田三成襲撃事件に参加している。

関ヶ原の戦いでは、三成への敵対心から黒田長政の説得に応じて家康の東軍につき、武功を挙げて広島藩49万8000石の大名となった。

広島藩主としては、実情に合わせた年貢を設定するなど善政を敷いたが、家康の死後に台風で被害を受けた広島城の修復を、幕府の許可を待たずに行ったため、広島藩50万石を失い、高井野藩4万5000石に減封されてしまった。

酒癖が悪かった

福島正則は人情に厚い一方で、酒癖の悪さで知られていた。

画像 : 母里友信。安土桃山時代から江戸時代にかけての武将。別名「母里太兵衛」としても知られている。public domain

前述した「黒田節」のエピソードはその象徴であり、酒の席で名槍「日本号」を母里友信に渡してしまった後、反省して返して欲しいと仲介を頼んだ黒田長政と「返せ!」「返せぬ!」と喧嘩になり、険悪な雰囲気になったこともある。

酒でやらかした話はこれだけではなく、ある時、家臣の柘植清右衛門(つげせいえもん)が、ある事を酔って勘違いをしている正則に対して、誤解を解こうと丁寧に説明したことがあった。

泥酔していた正則は何故かそれに激怒し、何と清右衛門に切腹を命じてしまう。

翌朝、酔いが覚めた正則は昨晩のことは記憶になく清右衛門を呼ぶが、そこで大変な過ちを犯してしまったことに気が付き、号泣しながら清右衛門の首に謝罪したという。

またある日のこと、酔った正則が妾のもとに忍び込み、そのことが継室・昌泉院(最初の妻が亡くなってその後に娶った正室で徳川家康の養女)に知られてしまった。

怒り狂った昌泉院は薙刀を持って正則を追い回し、正則は真剣な表情で詫びながら逃げ回ったという逸話も残っている。

酒にまつわるちょっといい話

画像 : 『太平記英勇伝 三十三 福島左衛門太夫正則』 public domain

このように、酒癖の悪さで数々の逸話を残した福島正則だが、酒にまつわる心温まる話もある。

正則は堀尾忠氏(ほりお ただうじ)の家臣である松田左近(まつださこん)と親しく、飲み仲間であった。
ある日、堀尾忠氏が秀吉に謁見するために伏見城に出向くと聞いた正則は、大手門で堀尾氏一行を待っていた。当然、松田左近も同行すると思っていたのだが、左近は病気療養中で一行の中にはいなかった。

これを知った正則は、供の者も連れずに直ちに大坂に向かい、松田左近の見舞いに駆け付けた。
幸い、左近の病状は軽く、そこまで悪くはなかった。

左近は、正則が好きな酒をたくさん持ってくるように家臣に命じたが、正則は左近の体のためにそれを押し止めて、たった一碗の酒を2人でゆっくりと楽しんだという。

また、徳川の治世が固まりつつあった頃、将軍家に献上する酒を積んだ船が広島から江戸に向かう途中、悪天候により八丈島付近に流されたことがあった。

すると、八丈島から1人の老人が手を振っていたという。それに気づいた船員は、船を八丈島の岸につけた。
話してみると、なんとその老人は、関ヶ原の戦いに敗れて八丈島に流されていた元五大老の1人・宇喜多秀家であった。

画像 : 宇喜多秀家 public domain

秀家は、自分がかつて治めていた備前岡山に近い「備後三原の酒献上」という旗を目にして、思わず呼んでしまったと涙してうずくまった。

これに胸を打たれた福島家の家臣たちは、将軍家に献上する酒を秀家に分け与えた。秀家は福島家の家臣たちに何度も礼を言い、歌を一首したためて正則に渡してくれるように家臣に頼んだ。

関ヶ原の戦いでは、はからずも敵同士になってしまった正則と秀家だったが、かつては同じ豊臣家に仕えた重臣同士である。

この話を聞いた正則は涙ぐみ、家臣たちに深々と頭を下げて感謝をしたという。

おわりに

福島正則は、酒癖の悪さで数々の逸話を残しながらも、人情味あふれるエピソードを持つ武将であった。

正則の生き様は、単なる武勇にとどまらず、豊かな人間関係や情感に彩られた戦国武将の一面を、今も私たちに伝えてくれる。

参考文献:「福島正則 最後の戦国武将」ほか
文 / rapports

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