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リノベ古民家で昼食を!北千住『あさり食堂』の定食はご飯と味噌汁のおかわり無料

さんたつ

あさり食堂_DSC_0555

北千住駅西口側の静かな路地にある『あさり食堂』。2階建ての古民家をリノベーションした下町情緒あふれる空間で、心安らぐひとときをすごせる。ランチタイムには肉や魚の定食を提供しており、ご飯と味噌汁はおかわり自由。あさり食堂特製しょうが焼き定食なら、甘めの自家製タレを絡めた豚バラ肉でご飯をモリモリ食べられる。

あさり食堂(あさりしょくどう)

ひっそりとした路地にあるスタイリッシュな古民家食堂

近年、駅周辺の再開発事業が進んでいる北千住は、近代的に発展し続けている街だ。一方で、駅から数分歩いた場所には、下町の風情を色濃く残すノスタルジックなエリアがある。その筆頭と言えるのが、駅の西口側を代表する飲み屋横丁だろう。

ユニークな居酒屋が軒を連ねる「飲み横」から脇道へ入ると、その先は昼間でもちょっと薄暗い路地。道幅は自転車ですれ違うのが困難なほど狭く、一軒家が密集している住宅地だ。そんな穴場スポットに、木造古民家の趣をフルに生かした『あさり食堂』がある。

建物は路地の一軒家をリノベーションしたもの。出入り口の引き戸が懐かしさを感じさせる。

「この通りって結構、写真家の人が撮影に来るんですよ。こういう下町っぽい景色って、いまの日本にはあんまりないみたいなんですよね」

そう教えてくれたのは千住を拠点に『あさり食堂』をはじめとした飲食店を多数展開する会社、明珠の代表取締役・島川和己(しまかわかずき)さん。明珠系列の姉妹店には『古民家酒場 萌蔵』や『café わかば堂』など8店舗ある。それらのほとんどは北千住にあり、なおかつ古民家を改修した店舗なのが特徴だ。

1階には厨房に面したカウンター席と、その奥に2人掛けのテーブル席がある。

「ぼくはもともと長崎出身なんですけど、15~16歳のときに北千住に引っ越してきたんですよ。だからこの辺りのことはよくわかるし、商売を始めた2000年頃は家賃がすごい安かったので、やりやすかったんですよね。いまは都心より家賃が高いなんて、ぼくからしたら信じられないって感じですけど」

下町の面影を随所に残し、発展も遂げている北千住の街に、古民家をリノベーションした食堂はよく似合う。余談だが、店名の「あさり」は貝類ではなく、島川さんが昔飼っていたネコの名前から取ったのだとか。

ご飯のおかわり必至のしょうが焼き定食で満腹に

昼どきの『あさり食堂』では、主食・主菜・副菜のバランスが取れた定食を中心に提供。煮込みハンバーグと手作りコロッケ定食1200円や本日のお魚定食1200円のほか、週替わりの定食もある。

今回は、あさり食堂特製しょうが焼き定食1200円をオーダー。厨房にお邪魔して、調理の様子を見せてもらった。

まずは程よい厚みでカットされた豚バラ肉をフライパンに並べて焼く。

メインのしょうが焼きの主な具材は、豚バラ肉とタマネギ。いずれもひと口で食べやすい小さめのサイズにカットしてある。

豚肉の両面が焼けてきたら、タマネギをたっぷり加え、トングで混ぜながら炒めていく。

しょうが焼きのタレは自家製で「醤油や生姜、白ワインなどを使った秘伝のタレです」と島川さん。生姜や白ワインが豚肉の臭みを取り、パサつきのない柔らかな食感を生む。

具材に火が通ったところで、自家製のしょうが焼きのタレを投入する。

フライパンを揺すりながら強火で手早く炒め、具材にまんべんなく味を絡めていく。豚肉とタレがジューッと焼ける音に食欲を刺激される。

フライパンを振りつつ、さらに加熱。ときおりコンロから火が上がり、いい香りが立ちのぼる。

しょうが焼きの調理と並行して、正方形のお盆に付け合わせを用意。内容はその時々で変わり、取材日は和風ドレッシングのサラダ、たくあん&しば漬け、きんぴらごぼうだった。

お皿に盛り付けたら刻んだネギをふりかけ、仕上げにマヨネーズを添える。あとはご飯と味噌汁をよそうだけ。

定食のご飯と味噌汁は、なんとおかわり自由。さらに無料で納豆を付けてもらうこともできるのがうれしい。

「おなかいっぱい食べてもらいたいっていうのがコンセプトとしてあるので、食べられるだけ食べてもらって。ご飯を5杯ぐらいおかわりする人もいますよ。まず味噌汁でご飯1杯、それからおかず1個につき1杯みたいな(笑)」

あさり食堂特製しょうが焼き定食。付け合わせのサラダ、漬物、きんぴらごぼうが彩りを添えている。

できあがった定食を席へ運んでもらい、さっそく実食。しょうが焼きのタレは、醬油ベースの甘辛さとともにおろし生姜がふんわり香るテイストで、濃厚でありつつ奥行きもある。

甘辛いしょうが焼きのタレが豚肉とタマネギにガッツリ絡む。味変にはマヨネーズを。

豚バラ肉とタマネギの旨味や甘みがしっかり味わえるところもたまらない。タマネギには程よくシャキシャキ感があり、いいアクセントになっている。

適度に脂がのった豚バラ肉は、しっとり柔らかい食感。かめばジュワッと肉汁があふれ出す。

途中でマヨネーズを混ぜれば、まろやかな甘さやコク、酸味がプラスされ、食欲が加速していく。これがご飯に合わないわけがない。

豚肉にタレをしっかり絡めて白米の上にのっける。ご飯が進むこと間違いなし!

箸休めにはパリパリ食感の漬物や、ピリッと辛いきんぴらごぼうがぴったり。また赤味噌を使用した味噌汁には、山椒を加えてあるのがポイント。コクのある塩味の中に爽やかな香りとほのかな痺(しび)れも感じられる、深みのある味わいだ。

主菜から汁物まで、とにかくご飯がほしくなるラインアップゆえに、ご飯おかわり自由なのはありがたい。さすがに5杯は食べられないけど……。

誰かの人生のワンシーンに登場する店をつくりたい

2003年にオープンした『あさり食堂』。当初、島川さんは「昼も夜も食堂でやろうと思っていた」という。だが、夜はお酒を飲む人が多かったため、お客さんの要望を汲み、夜は居酒屋の形に変わっていった。

「飲食店だけじゃなく、会社は環境に適応したものが生き残るんです。ただ、時代がどうあってもブレない、変えないところは変えないことが信用・信頼になる。ここの場合は、立ち上げからずっとやっているご飯おかわり自由とか、納豆の無料サービスです。物価が上がっても、そういうところは修正したくないんですよね」

2階の客席は、2~4人掛けのテーブルが中心。夜は和と洋の飲み処になるため、店内も和洋折衷の雰囲気だ。

店づくりの信条のほかに、島川さんは素敵な経営理念についても語ってくれた。

「ぼく、人生は映画だと思っているんですけど、この店がお客さんの人生におけるワンシーンに出てきてくれたらうれしいですよね。たとえばここで告白をして付き合ったとか、何かの記念日に来たとか、思い出に残る店にしたいなと思っています。ここで働いているスタッフにとってもそう。だからスタッフと向き合って話すことは大切にしていますね」

爽やかな笑顔で撮影に応じてくれたのは店長の持田さん。しょうが焼き定食の調理もしてくれた。

これまで『あさり食堂』のほかに、カフェやスタンディングバー、バーガースタンドなどを北千住の路地裏にオープンしてきた島川さん。今後の目標は「ここの通りに年間10万人を呼ぶこと」なのだとか。

「10万人来たらイノベーションが起こるかな、と。違う業態のお店を出してきたのは、いろんなお客さんを集めるためなんですよね。あとは中華屋さんをつくりたいなと思っています(笑)」

北千住の路地裏にスタイリッシュな町中華ができる日は、そう遠くないかもしれない。

あさり食堂(あさりしょくどう)
住所:東京都足立区千住1-34-8/営業時間:11:30~15:00LO・18:00~22:30LO(日は~21:30LO)/定休日:無/アクセス:JR・私鉄・地下鉄・つくばエクスプレス北千住駅から徒歩3分

取材・文・撮影=上原純

上原 純
ライター
東京都出身。編集プロダクション勤務を経て、2018年からフリーランスに。雑誌やWeb媒体で、グルメやビジネスなどの取材記事を中心に幅広く執筆。カレーとスイーツ全般、とくにチョコレートには目がなく、毎月コストコに通ってお菓子を買い溜めする。ブリティッシュロックやハードロック、ヘヴィメタルなどの音楽が原動力。

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