「驚愕のラストに言葉を失う」「最後まで展開が読めない」ニコケイ史上最狂『シンパシー・フォー・ザ・デビル』の衝撃
絶好調ニコラス・ケイジ主演の怪作
ニコラス・ケイジの勢いが止まらない。ケイジ自身をメタ的に演じた快作『マッシブ・タレント』(2022年)あたりからドライブががかかり、アリ・アスター製作のA24作品『ドリーム・シナリオ』(2023年)が大きな話題に。そして大胆な宣伝戦略で大ヒットを記録したスリラー『ロングレッグス』(3月14日より日本公開)など、最近の出演作は軒並み“大当たり”だ。
そんなケイジのキャリア史上“最狂”との呼び声も高いミステリアスなスリラー、『シンパシー・フォー・ザ・デビル』が2月28日(金)より全国公開となる。共演はリメイク版『ロボコップ』(2014年)や『スーサイド・スクワッド』(2016年)で知られるジョエル・キナマンだ。
強引すぎるヒッチハイク! 招かれざる“狂”乗客は何者か?
ある夜、実直な会社員のデイビッドは、愛する妻の出産に立ち会うため、ラスベガス中心部の病院へ車を走らせていた。ところが病院の駐車場で、見覚えのない男が後部座席に乗り込んでくる。
「車を出せ」
拳銃を突きつけられ、やむなく指示に従ったデイビッドは、ハイウェイを走行中にあの手この手の脱出策を試みるが、非情にして狡猾な男にことごとく阻まれてしまう。支離滅裂な言動を連発する正体不明の男は、なぜデイビッドに異常な悪意を向けるのか。やがて狂気を剥き出しにした男の暴走はエスカレートし、さらなる大惨事が勃発するのだった……。
――終始緊張感たっぷりに対峙する謎の男とデイビッド。彼の目的は? 何かを目論んでいるのか? それともガチの狂人なのか? デイビッドが迫られる“告白”とは……? 1時間半弱のドライブは、予想もし得ない方向へと突っ走っていく。
狂ケイジ×怪キナマンのスリリングな競演
映画の開始から10分もしないうちに謎の赤髪の男=ケイジが登場し、妻の出産に立ち会おうとする男性デイビッド(キナマン)の車に乗りこむや銃で脅し、ただ「走れ」と命令。観客は早々にデイビッドと同じく「わけがわからない」状況にさらされ、じっと次の展開を見守ることになる。しかも病院では今にも出産しそうなデイビッドの妻が待っているわけで、その焦燥感も共有させられるため心拍数の上昇は避けられない。
狂人との邂逅によってそれまでの日常がガラガラと崩れてしまう、という物語は多い。スピルバーグの名作『激突!』(1971年)やそのオマージュ作品でもある『ロードキラー』(2001年)、トム・クルーズ主演の『コラテラル』(2004年)やカート・ラッセル主演の『ブレーキ・ダウン』(1997年)、ルーク・ウィルソン×ケイト・ベッキンセイルの『モーテル』(2007年)、トラウマ級の胸糞スリラー『ザ・バニシング -消失-』(1988年)、巻き込まれスリラーの名作『ロードゲーム』(1981年)などなど……。
しかし本作は、よりクローズドなシチュエーションで、悪人の目的が一切わからないミステリー要素を強調し、観客の想像を否定するかのように分かりきったことをわざわざセリフで言わせる等、こってりとした狂気を観客の顔に塗りたくるような演出が特徴。あまりにもクレイジーなケイジの存在は、妄想なのか真実を話しているのか、あるいはすべてジョークなのか、終盤までまったくわからない。
だが最後には間違いなく戦慄することになる。ケイジのワンマン映画であればデイビッド役は無名の俳優でも問題なかっただろう。しかしキナマンが狂人に翻弄されるだけの無害な男性をのほほんと演じるわけはなく、溜めに溜めた挙げ句に静かにぶちまけられる“かつて起こったこと”の衝撃度は、それまでの印象をひっくり返すほどのインパクトだ。結末は賛否が分かれそうだが、狂ケイジと怪キナマンの競演をぜひ劇場で見届けよう。
『シンパシー・フォー・ザ・デビル』は2025年2月28日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開