アメリカ近代建築の巨匠・ライトの世界を体感できる貴重な住宅建築『ヨドコウ迎賓館』 芦屋市
芦屋市の山麓、芦屋川に沿う緑に囲まれた小高い丘の上に建つ『ヨドコウ迎賓館(旧山邑家住宅)』は、アメリカの近代建築の巨匠、フランク・ロイド・ライト(Frank Lloyd Wright)によって設計された国の重要文化財です。
今年、竣工100周年を迎えたライトの貴重な住宅建築を見学してきました。
日本では旧帝国ホテルの設計者として知られていますが、建築当初の姿をほぼ完全に残すライトの住宅建築は、日本ではここだけなんだそう。
建物は1918年(大正7年)に、灘の醸造元の櫻正宗当主・山邑家別邸として設計されました。当時、東京の旧帝国ホテルを建設するために来日していたライトが設計を行い、アメリカへ帰国した後は彼の弟子が引き継ぎました。
玄関の車寄せは左右対称の厳格なデザイン。幾何学的な彫刻を施した大谷石(おおやいし)の質感や暖かい色合いは、日本におけるライト建築の特徴なのだとか。
応接室に入ると、天井の高い広々とした空間が目の前に広がります。壁面には複雑な細工の飾り棚や置台、長椅子までも作り付けにした統一感のある装飾が施されています。
ライトは土地と建物の一体化や自然に溶け込んだ建築を理想としたといわれます。緑に囲まれた邸宅の大きな窓からの景観はまるで絵画のよう。
建物の中には湿気がこもらないようたくさんの通風孔が設けられています。ドアの形で並んだ小窓がライトらしい独特の雰囲気を醸し出しています。
3階の長い廊下は、大きなガラス窓によってとても明るくなっています。窓に使われている飾り銅板は植物の葉がモチーフとなっており、ほかにもドアや欄間など随所に同じモチーフが使われています。
洋風の外観からは想像できない畳敷きの和室も。当初のライトの設計にはありませんでしたが、施主の強い要望で実現した部屋なのだそう。飾り銅板を使用した欄間が目を引きます。
食堂は特に装飾性が強く、正方形に近い平面を持ち、暖炉を中心に左右対称のデザインになっています。天井は中央部が最も高い四角錘のような形になっており、厳粛な教会のような雰囲気。
南側のドアから屋上のバルコニーに出ると六甲の山並みや市街地、晴れた日は大阪湾の眺望を目にすることができます。
当時の文献によると、建物内の設備は全て電化していたと記されています。大正末期にオール電化⁈と驚きを隠せませんが、沿線の私鉄と直接契約を結び、電気を引き込んでいたそうですよ。
『ヨドコウ迎賓館』は、1974年(昭和49年)に建物が国の重要文化財に指定され、1989年から一般公開が始まりました。2024年8月には敷地全体が国指定重要文化財に追加指定となり、今後ますます注目が集まりそうです。
迎賓館の担当者は、「当時の風景に思いを馳せながら、ライト建築の魅力にゆっくり浸ってほしい」と話しています。開館日は、水・土・日曜日と祝日。時間をかけてじっくりとライトの建築美を堪能してみてはいかがでしょうか。
所在地
ヨドコウ迎賓館(旧山邑家住宅)
(芦屋市山手町3-10)
開館時間
10:00~16:00(入館は15:30まで)
入館料
大人 500円(団体 400円)
小・中・高校生 200円(団体 100円)
※団体は30名以上から
問い合わせ
<ヨドコウ迎賓館>
TEL 0797-38-1720