東広島トップに聞く! 志和貨物自動車株式会社 社長 牧尾和志氏 自動車部品運送が柱
今年が創業108年目となる志和貨物自動車株式会社(東広島市志和町別府、牧尾和志社長)。物流のなかの〈輸送〉を担う会社として、地域に支えられてきたことが、会社を長く続けてきた原動力、という。5代目となる牧尾社長に、トップとしての思いを聞いた。(日川)
強みは自社配送率の高さ
―輸送で一番得意とする部門は。
売上高の8割を占める自動車部品の運送業務です。マツダの城下町が形成されている県内のサプライヤーさんからの製品を、山口県や宇品にあるマツダの工場に運んでいます。培ったノウハウを生かし、近年は、トヨタの大手物流会社や部品メーカーから仕事を受託し、愛知県と九州を結ぶ中継拠点としての役割を担っています。愛知県や九州から運ばれてきた製品を、弊社でトレーラーヘッドとドライバーを変えて、九州や愛知県にあるトヨタの工場・拠点に納品しています。
―2019年暮れの社長就任直後にコロナ禍に見舞われました。
工場が止まり、物流も止まってしまって、正直終わったなと思うこともありました。ただ、自宅待機をしてくれていたドライバーが、宅配をやりたいと言ってきたことで光が見えました。会社として宅配事業に乗り出すことを決め、大手の宅配業者と業務委託契約を締結。コロナ禍を機に、新しい生活様式が生まれ、EC(電子商取引)需要も伸びています。これまではBtoBのビジネスがメインでしたが、宅配事業を通じて、消費者向けのBtoCで地域に貢献したいと思っています。
―会社の強みは。
弊社のドライバーが弊社所有のトラックで荷物を運ぶ自社配送の割合が高いことです。そのメリットは品質を担保できること。取次を行って、協力会社に走ってもらうと、大きな仕事を大きくさばけるメリットはありますが、管理は不十分になります。
品質とはドライバーのことだと認識しています。運送業のドライバー不足が指摘されている中で、良いドライバーに仕事が集まります。つまり良いドライバーを多く雇用していくことが、会社存続の要になると思っています。
会社の要、ドライバー育成に尽力
―要となるドライバーの育成については。
言われなくても行動できる自立性の高いドライバーや、お客さまの前で、自らをきちんとPRできるドライバーを育てていくことが目標です。育成のためには、ドライバーの技量で、給料が上がる仕組みを構築するのも、その方法でしょう。品質は努力次第で誰でも上げることができますから。
一方で、ドライバーの安全教育については、これまでと同じように、毎月1回、外部講師を招き開催していきます。
私たちの仕事は、ドライバーがいて、トラックと荷物があって成り立つ仕事です。来年4月から軽油の暫定税率が廃止される予定です。運送費にかかる経費が軽減できる分、ドライバーの育成や採用にコストを注力していきたい、と思っています。
―これからの思いは。
一日一日の積み重ねがすべてだと思っています。時代に取り残されないよう、アンテナを張り巡らして一生懸命にやるしかありません。東広島市という地域にしっかり根を下ろし、雇用を含めて東広島に貢献していければ、と思っています。
これまで、東日本大震災やリーマンショック、西日本豪雨災害、コロナ禍、と物流が停滞する出来事を何度も経験してきました。免疫力が付いたというか、今後、どんな事が起こってもやっていけるという自負は持っています。
【志和貨物自動車㈱ 会社概要】1917年創業。広島―東志和間で乗合自動車事業を始めたのが会社の第一歩。55年、株式会社化。従業員数は約120人。うちドライバーが90人を占める。トラック約90台、軽貨物車両約30台などを所有する。主な取引先は自動車メーカー、大手物流統括会社など数百社に上る。2025年9月期の売上高は過去最高の15億5000万円に上った。
【牧尾和志さんプロフィル】1979年、東広島市志和町生まれ。広島修道大学卒。大手アパレルメーカー勤務などを経て、2007年、志和貨物自動車に入社。専務を経て、19年12月、社長に就任した。好きな言葉は、「我が我がの『我』を捨てて、おかげおかげの『下』で生きよ」。髪の毛をウィッグに活用する「ヘアドネーション」の活動のため、髪の毛を伸ばしている。