日頃のコミュニケーションを大切に 大切な家族のためにできること
相続や葬儀、お墓のことは、本人よりも残された家族の方が「当事者」に。
生前に決めたことは家族に「伝えておくこと」が大切です。
お話を聞いたのは
有限会社ヤタガイ 花想庵~結~
谷田貝剛幸さん
終活カウンセラー、遺品整理士、相続診断士
葬儀の事前相談で見るべきは「人」
葬儀社への事前相談や式場の見学は、プラン内容や予算、そして施設そのものの設備や立地はもちろんですが、「人」を見ることが大切です。
気の合う会社かどうか、「この人に任せたい」と信頼できるスタッフがいるかどうかを確かめるつもりで、1社で終わらせず複数の会社や施設を見ることをお勧めします。
できれば当人たちだけでなく子ども世代も同席するのがベストですが、離れて暮らしているケースも多いでしょうし、現役世代のスケジュールを調整するのは難しいかもしれません。
しかし、当人が生前にどれだけ準備や相談もしくは契約をして、「これで大丈夫!」とすっきりした気持ちでいたとしても、それを「喪主」「遺族」になる配偶者や子ども世代が知らなければ、伝えていなければ、せっかくの事前準備が無駄になってしまいます。
日頃から、コミュニケーションをとっておくことが大切ですね。
また、「子どもたちに迷惑をかけたくないから」と、当人が一から十までガチガチに決めすぎるのもお勧めしません。
時代はどんどん変化していて、今のベストが5年先、3年先もベストであるとは言い切れません。
そこは子どもたちを信頼して、ある程度任せる部分があってもいいのではないでしょうか。
そして、できるなら定期的に内容を見直すようにしましょう。
知っておきたいキーワード
その1【死後事務委任契約】
死後事務委任契約とは、委任者(依頼する人)が自身の死後に発生するさまざまな事務を、信頼できる人(受任者、弁護士や行政書士など)に生前に委任する契約です。
遺言では対応できない法律上の制約がある事項についても、生前の本人の意思に沿った形で実現させることが可能です。
散骨や樹木葬など、本人が望む埋葬方法を相続人に確実に実行してもらいたい場合や、SNSアカウントの解約や削除、ペットの世話や適切な引き取り先への引き渡しなども依頼できます。
身寄りのない人や、家族に負担をかけたくない人には特に有効です。
その2【相続登記義務化】
亡くなった人の土地の相続登記(名義変更)が、2024年4月1日から義務化されています。
相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に行う必要があり、正当な理由なくこの期限を過ぎると10万円以下の過料(罰金)が科される可能性があります。
改定前に相続した土地などの不動産にも、さかのぼって適用されるので注意を。
猶予期間は2027年3月までです。
その3【安置のこと】
日本の法律では、死亡診断を受けてから24時間以内の火葬は禁じられているため、遺体は必ずどこかに「安置」しなければなりません。
かつては自宅に安置することが一般的でしたが、住宅事情や生活スタイルの変化によって難しいケースが増えています。
マンションなどの集合住宅では管理規約で禁止されている場合も。
自宅に安置できない場合、葬儀社や斎場の安置室を利用します。
空調管理やドライアイスによる遺体の保全などを施設のスタッフに任せられるので家族の負担が減るのがメリットですが、面会時間が限られている場合は、故人をゆっくりしのぶことができないかもしれません。
また、最近では「火葬待ち」という言葉もよく耳にするようになりました。
火葬場が混み合い、安置期間が長くなる傾向にあります。
自宅であれ施設であれ、安置期間が長引けば、その分、費用もかさみます。
葬儀の予算に「安置」に関する費用を入れておくことを忘れないようにしましょう。
家族の負担を考えると、これからは施設の安置室を利用するのが一般的になるでしょう。
安置室があるか、どんな部屋か、面会時間なども葬儀社や斎場選びのポイントの一つとして考えておきましょう。
<自宅に安置できないケースの一例>
・自宅に安置するスペースの確保が難しい
・室温管理を適切に行うのが難しい
・自宅では来客の対応ができない
・マンションなど集合住宅の場合、搬入経路が狭くて対応できない、また管理規約で禁止されている
・家族が近くに住んでいない高齢夫婦が連れ合いを亡くした場合、一人では遺体の見守りができない、お線香やろうそくの火の元が心配…etc.