“大したことない”はNG!「嫌だった出来事」を何度も言ってくる子どもとの向き合い方
臨床心理士・公認心理師のyukoです。昔嫌だった話、何年も前に起きた話を何度もしてくる子がいます。親からすると「もうそれはいいんじゃない?」と思うことも多いもの。同じ話を何度もするのはその子にとってどんな意味があるのか、どのように対応すればよいのかを考えます。
昔嫌だったこと。いつまで言い続けるの?
「あのとき腕を引っ張られたのが嫌だった」「プールのテストを頑張ったのにほめてくれなくて傷ついた」。また始まった。小4の娘は度々数年前のことを掘り起こして、しつこく言ってくる。謝っても聞き流しても忘れる様子がなく、親としても責められている気持ちになりうんざり。私はそんなに悪いことをしたのかな? どうやったら忘れてくれるんだろう。
昔のネガティブな記憶が忘れられず、たびたび口にする子がいます。親からすると些細なことであったり、そんなつもりで言ったわけではない言動であることも多いもの。早く忘れてほしいことをいつまでも覚えており、何度も繰り返し伝えてくるのはなぜでしょうか。
子どもの行動をどう理解すればよいのか、どんな風に対応すればよいのかを考えます。
こんなに違う、親の認識と子どもの認識。
あるとき、こんな話を聞きました。
Aちゃんは4歳のとき、妹と喧嘩し、父親に怒られたことがあります。Aちゃんが使っていたおもちゃを妹が取ったので、Aちゃんは妹を叩いてしまった。それを見ていた父親がAちゃんのほっぺを両手で挟み、「そんなことをしてはいけないよ」と注意して怒ったんです。母親もそのときの様子は見ていたが、Aちゃんはのちに「パパが首を絞めてきた」と言い、思い出してはよく泣いていた。母親から「そうじゃなかった」と伝えても記憶が修正されず、数年たっても言い続けている。
令和になった今、叩いたり、蹴ったりするのは虐待であるという認識は、多くの親御さんに根付いているでしょう。しかしいけないことをしたとき、軽くたたいたり、注意する意味で身体を抑えたりするのは「普通」であると感じている方は多いのでは。
もちろん、全ての状況で一概に間違いであるともいえません。
しかし、子どもにとって体格が大きく逆らえない親の些細な行動が恐ろしく、怖い記憶として根付くこともしばしばあるんです。嘘をついている、大げさすぎると捉えるのではなく、「子どもにはそう見えていたんだ」と感じて受け止めるのが第一に大切です。
「大したことない」「しつこい」で余計に傷が深まっていく。
親が忘れてほしい記憶を何度も掘り起こして繰り返し言われるとうんざりしてきますよね。そのようなとき、「大したことじゃないでしょ」「しつこいからもうやめて」と言うと、余計に傷が深まっていきます。
心の傷は受け止められないと余計に深まり、さらに傷ついていくんです。
まずは親御さん自身が「この子にとっては心の傷になってしまっているんだ」「この子にとってはそれほどの出来事だったんだ」と認めるのが大切。そのうえで、「どういうところが忘れられないのか」「何をきっかけに思い出すのか」「そのときどう感じたのか」をしっかり聞いて整理していく必要があります。
嫌な記憶は、嫌な気持ちと連動する。
ネガティブな記憶のトリガーはネガティブな出来事にあります。
思春期の子が反抗的にイライラしているとき、「ママのそういうところ、幼稚園のときにあんな風にされたときから嫌だった」と言ったりしますよね。親としては「そんな昔のことをずっと引きずってたの? 根に持つ子ね……。」と感じ、余計に衝突しやすくなります。
皆さんにも経験があるかもしれませんが、嫌な記憶は絶えず持ち続けているものばかりではありません。似た出来事、嫌な気持ちになったとき、ふと蘇ってくる記憶も多いんです。
何が過去の嫌な記憶と繋がっているのか、子どもの記憶の引き金は何によってひかれるのか。そこを理解していくのも、子どもの記憶と付き合っていくうえで重要です。
ネガティブな記憶をケアしていけるよう、子どもに寄り添いながら見つめていけるといいですよね。
yuko/臨床心理士・公認心理師