ゲイとレズビアンで違った「参加しにくさ」虹色に託した“あらゆる差別にNO”の現在地
9月15日、札幌市で行われたさっぽろレインボープライド。
今年で24回目を迎え、性的マイノリティへの差別解消などを訴えてきました。
「あらゆる差別に『NO』を」。
初めての開催から受け継がれるその思いの背景を取材しました。
初の1000人超
2024年のパレードには、1000人以上が参加し、沿道は多くの人たちであふれていました。
1000人を超えたのは初めてで、過去最多の人数。
札幌市役所にも、今回初めて性の多様性の尊重を表す「レインボーフラッグ」が掲げられました。
第一回の開催を実現させたとき…
初めて札幌でパレードが開催されたのは1996年のこと。
第1回目のイベントの名前は、「レズ・ビ・ゲイ プライドマーチ」でした。
「ビ」とは、男性のことも女性のことも好きになる「バイセクシャル」を指しています。
いまほど、多くのセクシャリティが存在することは、認識されていませんでした。
美唄市出身で北海道大学名誉教授、明治大学教授の鈴木賢さんは、自身もゲイの当事者として1994年に東京のパレードに参加しました。
「東京という誰にも自分が知られていない場所でパレードをしていても意味がない。日頃生活しているところで可視化されないと」
2年後に有志で集まった仲間たちと、札幌市での開催を実現させました。
「『差別の解消』というこの主張は、最初からはっきりと出している。これは政治的なデモンストレーションなんだと」
いまより差別が根強い時代。セクシャリティを打ち明けあった仲間からは、「誰か知り合いに会うかもしれない。歩けるはずがない」と言われることもあったといいます。
沿道には、「過激派ではないか」といった懸念があってか、警察の機動隊も出動しました。
「『思いっきりゆっくりやれ』『警察の言うことを聞く必要はない』。とっとと終わらないように。要するに可視化される時間が長い方がいいわけだから」
ずっとぶれずに訴えてきた「差別」の解消
これまで行われたイベントのパンフレットや報告書の数々。
第1回の報告書を開くと、多くの企業の広告がある現在と異なり、当時は主にゲイを対象とした店や雑誌の広告が多く掲載されていました。
一方で、当時から一貫して教育現場や職場などでの差別解消を明確に求めていたこともわかります。
性的マイノリティだけでなく、障害がある人や女性など社会的に弱い立場におかれがちな人たちもパレードに参加したといいます。
今とは違った「世間」のイメージに
レズビアンの当事者で、札幌開催を実現させた1人、工藤久美子さん。
「沿道の人やビルの窓からも手を振っている人がいて、応援してくださるのが見えて、とてもうれしかったことを覚えています」
パレードを仲間と一緒に歩き、駅前通りに出たときに広がるマチの景色が、印象的でした。
工藤さんは当時は大学生。
周囲にセクシャリティを打ち明けられている仲間は、いまよりも随分と少なかったといいます。
いまパレードのゴールは大通周辺ですが、1回目のゴールは札幌市北区にあるJR高架下の公園でした。
「パレードには参加しない」と言っていた仲間が、いざ当日になると、フルフェイスのヘルメットをするなど姿がわからないようにしてでも参加してくれたことに「感動した」と話します。
「レズビアンに対する性的なイメージは昔の方がもっと強かった」
工藤さんは、レズビアンにはゲイとは異なる「参加しにくさ」があったと感じています。
「性的要素」で見られ、傷ついたことも
主に異性愛男性からの性的な目線が強く、「性に奔放だ」というイメージを持たれたり、インタビューの記事が、性的な要素を強く出した書き方をされたりして傷ついた経験もあります。
また、いまよりも「女性が家庭に入るのは当たり前」とする風潮もあり、女性たちは経済的にも弱い立場に置かれがちでした。
そのため、すでに結婚・出産をしているレズビアンの仲間にとっては、自分の状況を訴えづらい環境だったといいます。
「生活費は夫婦だから夫が出している状況で、おうちに帰ったらお母さんにならなきゃいけないし妻にならなきゃいけない。その中で、自分のことを考えるのがどれくらいできるのか」
独身だったり、外に仕事に出たりするゲイたちと比べ、多くのレズビアンたちはつながりを持つ機会も乏しく、当事者コミュニティの中でもさらにマイノリティに置かれていたと工藤さんは話します。
「20歳のころの私はパレードができるなんて思っていなかったし、LGBTQが取材の対象になる時代が来ると思っていなかった、今不安なことや色々なダメージを受けている若者や女性たちには、自分の大事なものは信じてほしいと思う」
イベントのそのときだけでなく…
それから28年。
パレードは多くの人が見て参加し、多くの企業も協賛するようになりました。
性的マイノリティだけでなく、あらゆる差別や偏見に「NO」と訴え続ける。
「さっぽろレインボープライド」副実行委員長 満島てる子さんは今回もパレードを一番近い場所で見て、参加してきました。
「イベント期間だけでなく、性的マイノリティだけでなく、様々な違いに対する差別というものを考えて行かなければならないし、市民の一人一人が自分事としてそうした問題を考えていくきっかけになっていければなと思います」
その思いはまた、来年のパレードへ引き継がれていきます。
文:HBC報道部 泉優紀子
編集:Sitakke編集部あい
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2024年9月16日)の情報に基づきます。