【「鈴木邸 ~登録有形文化財~ 秋の探書会2024」の「いきつづける万国博 ―太陽の塔内部公開―」上映会】 1970年大阪万博のエピソード満載
静岡新聞論説委員がお届けするアート&カルチャーに関するコラム。今回は11月9、10日の両日行われた「鈴木邸 ~登録有形文化財~ 秋の探書会2024」の2日目プログラム「いきつづける万国博 ―太陽の塔内部公開―」上映会を題材に。
今年4月に静岡市清水区で上映があった「キャメラを持った男たちー関東大震災を撮る-」の井上実監督が来静し、1970年大阪万博の熱狂と2018年の「太陽の塔」復元作業を記録した映像作品を上映した。
太陽の塔にまつわる1970年の難工事の様子は、映像の中で施工技術者がかなり細かく語っている。何より衝撃的なのは、正三角トラス構造の大屋根(幅110×長さ300×高さ30メートル)を地上でつなぎ合わせ、全体をジャッキアップしたというエピソード。重さ4800トンにも及ぶ構造物を持ち上げるのは、海外でも類例がなかったという。
映像では、当時のコンパニオンの皆さん、子どもだった建築史家橋爪紳也さんらが万博を振り返り、自らの半生と現代日本社会への影響を考察する。太陽の塔の内部にそびえる「生命の樹」の再塗装など復元作業も収める。
当時の来場者はもちろん、2018年時点で証言する人々も一様に上気した顔なのが印象的。「万博」のインパクトそのものが伝わる。それは未来を「夢」として語ることが許された時代、万博だったからではないか。さて、2025年大阪万博はいかに。(は)