便利な電子機器の進化を邪魔する「量子トンネル効果」とは?【眠れなくなるほど面白い 図解 量子の話】
進化を邪魔する「悪ガキ」、その名も量子トンネル効果!
わたしたちの生活には、家の内壁や外壁のほか、至るところに〝壁〟があります。こうした壁は内外の遮断が大きな役割ですが、驚くことに量子には、〝壁〟をスルッとすり抜ける「量子トンネル効果」があります。これは数多い「量子のふしぎ」の中でも代表格といえる量子の効果です。
量子トンネル効果は、量子の「波の性質」に基づいています。たとえば、電子や光などの量子を壁に投げつけます。もちろん大半は跳ね返りますが、量子の波成分の一部が壁内にしみていき、壁が薄いと裏側からポロッと出てくるのです。
さまざまな実験検証が行われ、応用として量子トンネル効果を使ったいくつかのデバイスが市販されています。「トンネルダイオード」や「フラッシュメモリ」などの半導体部品では、量子トンネル効果をうまく使って壁をすり抜ける電子を操作できます。おそらくスマートフォン(以下スマホ)にも入っているもっとも身近な量子デバイスです。
ただし、この「量子トンネル効果」が最近、悪さばかりしているのです。パソコンのいちばん重要な〝計算する部品〟の電気のスイッチ「トランジスタ」は、小さくつくればつくるほどパソコンの性能を向上させますが、現在の大きさ(数ナノメートル)より小さくすると、量子トンネル効果で電気が常にすり抜けて流れるため、スイッチとして機能しなくなるのです。残念ながら量子トンネル効果は、コンピュータの進化を少し邪魔する「悪ガキ」でもあるわけです。
ところで、わたしたちにも「量子トンネリング」ができるのでしょうか。答えはYes(のはず)ですが、分厚い壁だと全身がすり抜けられる確率はかなり下がります。また、手足や頭などすべて同時にすり抜けられる確率はとても低く、壁の中に挟まる可能性が相当高いかも。ですが、量子力学的にはすり抜けられる可能性はゼロではありません。
量子トンネル効果
ふつうのものの場合
必ず上を超えないとダメ
量子の場合
スルッ!
人も壁をすり抜けられる可能性はゼロではないが、壁が厚いと全身をすり抜けさせるのはむずかしいかもしれない。
壁をすり抜けたネコ!
以前テレビの「怪奇現象スペシャル」で、台風で窓やドアを全部閉めきっていたのに、外にいたはず
の飼いネコが部屋の中に突然現れたというのを放映していました。あれは何のふしぎもないのです。
たぶん量子トンネリングで入ってきたんでしょう?
トンネル効果を使っているデバイスと「悪ガキ」極小トランジスタ
電子機器はコンパクトであればあるほどいいが、小さくし過ぎると量子トンネル効果が邪魔をしはじめる。なんて悪ガキだ!
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 量子の話』著:久富隆佑、やまざき れきしゅう