Yahoo! JAPAN

病院が銭湯やレストランを運営…?「病院らしくない病院」づくりで誰も取り残さない社会へ<社会医療法人三宝会南港病院 三木康彰さん>【大阪府大阪市】

ローカリティ!

ローカリティ!

大阪市住之江区に拠点を置く社会医療法人三宝会南港病院。理事長・三木康彰(みき やすあき)さんは、地域のつながりを重視した「社会的処方」を実践しています。「寿楽(じゅらく)温泉」を復活させたり、レストラン運営をしたりと一見、医療の枠を超えた活動も行っています。しかし、これはすべて医療につながることでなのです。「病院らしくない病院」の実現に向けた三木さんの思いや、思い描く病院像について伺いました。

【本記事中の画像一覧】

病院の外に目を向けるように、「来てもらう」から「出ていく」時代へ

地域・病院の人と人のつながりで健康的な生活を目指そうと、病院以外にも温泉やレストラン、フィットネスクラブなどを運営する南港病院の三木さん。

「これまでは患者さまに病院へ『来てもらう』ことが一般的で、ある種閉じられた環境だったのですが、これからは病院から患者さまのもとへ『出ていく』という訪問の形が主流とケアになっていくと思っています。そのためにも外との関わりをもっと深めていくことが大事だ」と三木さんはいいます。

“裸の付き合い”が「健康管理」にも?解体直前の銭湯を憩いの場として再興

そんな三木さんは、経営者の高齢化によって2021年に閉業した「寿楽温泉」を2023年にリニューアルオープンさせました。

南港病院から歩いて10分ほどにある寿楽温泉は、北加賀屋一丁目商店街の入口にあり、「1963年から約60年間、地域に親しまれてきた銭湯。現在はかつてのにぎわいを受け継ぎつつも、高齢者から子どもまで地域の人が集い、顔を見て話をすることができる居場所となっています。「今日何してたん?」「あの人最近見ないけど?」「ちょっと太ったんとちゃう?」など“裸の付き合い”で、地域の人同士がつながり、健康管理ができる場所です。

「断らない医療」で地域住民との関係を構築。銭湯の存在がある孤立男性を救った

寿楽温泉の2階は元経営者の住居でしたが、現在は「大きな休憩室」として定期的にイベントを開催し、地域の人が集います。

こうした地域ケアへの取り組みが実を結んだ出来事がありました。それは、毎晩のように寿楽温泉に通っていた一人暮らしの高齢男性のお話です。

おじさんは、尿漏れでおむつをしており、服に尿悪臭が染みついていました。温泉に通う周りの顧客からは、その男性の入店を断るようにといわれたそうです。しかし「断らない医療」の精神を持つスタッフは決して彼を拒否することなく、男性に古着を提供したり、男性専用のロッカーを作ったりして、誰も不快にならずに過ごせる方法を模索し続けました。

半年ほどして、おじさんが来なくなりました。法人が運営する地域包括支援センターから情報があり、道端で倒れていたところを発見され、介護施設に入所したそうです。数日後、男性の同級生を名乗る人が病院にきて「あいつは他の銭湯では出入り禁止だったけど、寿楽温泉では断らずに色々とお世話してくれてありがとうな」とスタッフにお礼を言ったそうです。

「困難を抱えた方々を決して見放さず、地域の人が気にして見守るという社会にしていくことができれば医療と地域福祉の新たな形を見つけることができる」。三木さんが“地域とつながる居場所”の存在意義を再確認した出来事でした。

「人と人」、「人と病院」の新しいフラットな関係

妻・順子さんと三木康彰さん

病院の顧問を務める妻・順子さんは、南港病院が運営するレストラン「めばえキッチン」も担当しています。「病院では話せないけど、ちょっと相談いい?」と話しかけられることも多いと言います。

「生きること、死ぬこと、病気のことって絶対みんなに関わってくること。それがもっと話しやすい空間になればって思うんです。それには人と病院がフラットにつながることが必要ですよね」と順子さんは話します。

病院以外に居場所を作ることで、病院のスタッフと地域の人たちとの関係性を作り上げています。

「病院らしくない病院」。ふらっと通り抜けられる場所

現在、南港病院は新しい病院の建設に取り組んでいます。それは「病院らしくない病院」。患者だけでなく地域住民も気軽に立ち寄れる空間として設計され、カフェや多目的スペースを併設する予定です。「ふらっと通り抜けできる場所」というコンセプトを掲げ、医療施設が地域コミュニティーのハブとなることを目指しています。いろいろな世代の人たちの孤独を癒し、悩みを相談できるカフェのような場所も作る予定です。

三木さんらが取り組むのは「社会的処方」です。地域社会の活動を通じて、人と人がつながり健康的な生活を目指すものです。医療と地域をつなぐ新たな可能性を示すものであり、これからの地域社会に必要不可欠な存在として注目されています。

三木さんは、「人々がつながり、支え合う地域づくり」を目指して、地域医療の未来を見据えて日々活動を続けています。

情報

社会医療法人三宝会南港病院
https://www.nanko-hp.com

寿楽温泉
https://jurakuonsen.com

田口有香

【関連記事】

おすすめの記事

新着記事

  1. 「NHKプラスにアップグレードされました」 NHKを騙るツッコミどころ満載のメールに注意

    おたくま経済新聞
  2. アニメ『怪獣8号』日比野カフカ/怪獣8号の“8”つのキーワードを集めたキャラクターPVが解禁!

    PASH! PLUS
  3. 京王線サンリオラッピング電車がリニューアル 京王多摩センター駅と連動デザインに

    あとなびマガジン
  4. 異色のツーリングコミック『終末ツーリング』が2025年にTVアニメ化決定! ヨーコ役は稲垣好さん、アイリ役は富田美憂さんに決定

    PASH! PLUS
  5. 山口大吹奏楽部が3月2日に定期演奏会 73人が11曲を披露

    サンデー山口
  6. ワンダーウィード 天、1st SG「春、走れ!」MV公開!【コメントあり】

    Pop’n’Roll
  7. 【学校外教育費過去最高】小学生の「習い事多すぎ」問題とは[教育ジャーナリスト監修]

    こそだてまっぷ
  8. 大人女子コーデにぴったり!2025年におすすめの「万能スニーカー」5選

    4yuuu
  9. ファミマの"元祖"フラッペ、再販売が決定!コーヒー好き必見の「カフェフラッペ」復刻は嬉しすぎる。

    東京バーゲンマニア
  10. 自然に若く見える!老け顔さんがマネすべきボブヘア〜2025年初春〜

    4MEEE