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神姫バスの「日本一長い新感覚の定期観光バス」乗ってみた 水戸岡デザイン「YUI PRIMA OLIVIA」で上質な瀬戸内の魅力を味わう旅

鉄道チャンネル

瀬戸内の歴史や文化、食を巡る上質な旅

兵庫県姫路市に本社を置く神姫バスが、2025年3月下旬から日本一長い定期観光バスの運行を開始しました。使用車両は昨年デビューした「YUI PRIMA OLIVIA」です。1台につき総工費1億円以上をかけて改造したこのバスは、JR九州の豪華観光列車「ななつ星」で知られる水戸岡鋭治さんがデザインを担当しており、ゆったりとしたシートで地酒や名産品を楽しみながら瀬戸内の魅力を味わうことができます。

「YUI PRIMA OLIVIA」は多島美で知られる瀬戸内海周辺を6日間かけて巡ります。6日間のクルーズツアーを予約して瀬戸内を1周しても構いませんし、旅程の中に1日だけ組み込んで移動・体験・現地観光を楽しむこともできます。ルートは下図の通りです。

「YUI PRIMA OLIVIA」ルート概要(画像:神姫バス)

「神戸から3日間かけて宮島へ行き、3日間かけて帰って来る」と考えれば分かりやすいでしょうか。立ち寄れる場所や体験は各日で異なっており、たとえば火曜日出発のルート①では神戸三宮・姫路を出発。兵庫県相生市にある「羅漢の里」で刀鍛冶を見学したり、倉敷美観地区を散策することができます。

現地ガイド付きで倉敷美観地区を見学。知る人ぞ知る地元密着型の喫茶店など、ディープな場所へも向かいます

他のルートでは尾道・瀬戸田をガイド付きで散策、秘境「祖谷渓」の訪問やさぬきうどん打ち体験を楽しむなど、様々な角度で瀬戸内というサンクチュアリの奥深い魅力を堪能できます。各体験は神姫バスが各スポットの観光事業者とタイアップして選び抜いたもので、知る人ぞ知る瀬戸内のリアルを味わえるでしょう。

各種体験イメージ(画像:神姫バス)

注目したいのがフリードリンクサービス。瀬戸内の美味しい地酒や、このツアーのために特別に作った日本茶、各地の特産品を使ったジュースが飲み放題なんです。また、飛行機のファーストクラスやビジネスクラスのように、リップクリームやティッシュ、女性の方に喜ばれる小物類などをアメニティとして提供。「陸のファーストクラス」を謳います。

日本酒もノンアルコールも飲み放題!
リップクリームやティッシュなど、車内で提供するアメニティ(イメージ)

乗車料金は63,000円(税込)で、バス代、アテンダントサービス、それぞれのルート記載のコンテンツ体験料などが含まれます。アテンダントは複数乗車し、英語でのガイドにも対応します。なお、日本人限定・期間限定で、2025年9月末まで半額以下の30,000円(税込)で乗車できるキャンペーンも実施中。詳細は「YUI PRIMA OLIVIA」のWEBサイトをご確認ください。

和を意識した水戸岡デザインの車両

鉄道ファンならJR九州の「D&S列車」でおなじみ、水戸岡鋭治さんがデザインを担当しています

ここで視点を変えて、「YUI PRIMA OLIVIA」の車内を見ていきましょう。

記事冒頭で述べた通り、車両のデザインを手掛けたのはJR九州の観光列車でおなじみ水戸岡鋭治さん。外観の色は瀬戸内の雄大な自然をイメージした明るい青に。車内は木を多用した「和を感じるデザイン」でありつつも、アーチ型の天井がクラシックでモダンな雰囲気を感じさせてくれます。

座席は水戸岡さんが九州新幹線の座席をデザインしたときのものをベースとしており、これをバス用に改造しました。もともと45席あったという座席を21席に減らし、広々・ゆったり座れるデザインとしました。各座席のひじ掛け部分には折り畳みのテーブルが収められており、車内で飲食も楽しめます。

新幹線の座席をベースにバス用へ改造したゆったりシート。リクライニングは年配層の利用者を想定し、立つときにあまり力を入れなくとも立てる程度の浅めの角度に設定されています。寝ることが前提の夜行バスとは異なるため、あまり深くは倒れません
座席の背面はポケットが充実、ドリンクホルダーやUSBポートも備えます。Wi-Fiも使用可。電源コンセントではなくUSBポートにしたのは訪日外国人の利用を想定しているといいます
カーテンはロール式。目線の高さを意識し、木の細さを上下で分けています。

鉄道とは異なるバスの事情、神姫バスの「挑戦」

水戸岡デザインで特定の地域をぐるりと巡る旅……こう考えると、鉄道ファンの中には最近デビューしたJR九州の観光列車を思い浮かべる方もいらっしゃるかも。

『「YUI PRIMA OLIVIA」はバス版「36ぷらす3」ではないか?』

「36ぷらす3」は2020年10月にデビューした787系改造の観光列車で、黒光りするボディと水戸岡デザインの和を意識した内装が特徴。九州の各県を、輪を描くように毎週5日かけてぐるりと回ります。利用者は5日間乗り続けることもできますし、ルートの途中で「つまみ食い」するように乗りたい行程だけ乗車してもいいのです。

宮崎空港駅に現れた「36ぷらす3」(過去の取材時に撮影)
2025年4月時点の「36ぷらす3」運行ルート(画像:JR九州)

九州七県という巨大な鉄道網を持つ会社だからこそできること……ですが、よく考えてみれば日本は全国に道路が敷いてあります。標準軌・狭軌や電化・非電化の違いもありません。となると「バスならもっと簡単に広域周遊ツアーが組めるのでは?」と思いがちです。

しかしながら、バスの場合は事情が異なります。道路運送法により事業者ごとに営業地域が定められており、複数の都道府県を跨ぐような観光バスツアーの実施は難しいのが実情です。

一方で欧州に目を向けてみますと、長期間に及ぶツアーや国を跨ぐようなツアーもあり、乗り合い型の観光バスツアーのスタイル「シートインコーチ(SIC)」が普及しています。SICなら、利用者のニーズにあわせ、乗りたい部分だけ乗っても構いません。

神姫バスが「YUI PRIMA OLIVIA」で参考にしたのも、日本の観光列車ではなく欧州の「シートインコーチ」です。バス事業者としては単独での実施となりますが、貸切バスではなく「定期観光バス」とすることで営業権の問題をクリアします。

兵庫県をゲートウェイとする瀬戸内エリアは「瀬戸芸」で外国人にも知られるエリア。新幹線の通る山陽沿線沿いは便利なものの、離島などはアクセスが困難で隠れた魅力も多く、まだまだ開拓の余地があります。そこをバスで巡れば知られざる瀬戸内の良さを気軽に体験してもらえるのではないか……「YUI PRIMA OLIVIA」にはそんな狙いもあります。

オーバーツーリズム解決の一助にも。京都は言うに及ばず、万博が始まった大阪も大変な混雑ぶりを示すなか、交通事業者は京都や大阪から近隣各県へ送客するアイデアを練ります。たとえばJR西日本は「プラスワントリップ」と銘打ち、2025年春に大阪~尾道、夏に大阪~敦賀間で観光列車「はなあかり」を運行。近鉄は大阪~名古屋で特急「ひのとり」を夜行列車として運行するなど、混雑する有名観光地から沿線への誘客を図ります。神姫バスの「YUI PRIMA OLIVIA」も、インバウンドや首都圏の旅行者などを瀬戸内へ送客するという点ではよく似た部分があると言えるでしょう。

記事:一橋正浩

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