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勝ちにこだわりすぎて子どもに厳しすぎるコーチを何とかしたい、パワハラコーチングが間違ってると指摘する方法を教えて

サカイク

同じチームのコーチが、自身の子に厳しすぎる発言を連発。しかも、勝ちにこだわりすぎてポジションもメンバーも固定、子どもに考えさせずすぐ答えを言って「楽しませる」より、勝つ練習をしている。

自分はサッカー経験のないボランティアコーチだから我慢しようとしたけど、その過激な手法の片棒を担いでいる気がして......。とのお悩みをいただきました。

今回も、ジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上のあらゆる年代の子どもたちを指導してきた池上正さんが、スポーツ現場でのハラスメントについて解決のアプローチ方法をアドバイスします。
(取材・文 島沢優子)

 

(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)

 

<<鳥かごでずっと奪えない子への対応、自分が介入しているがもっといい方法がないのか教えて

 

<お父さんコーチからの質問>

いつも勉強させてもらってます。
有難うございます。

子ども2人が所属してる少年団(練習は土日のみ)でボランティアコーチをしています。

子どもが入団するタイミングで誘われて、私自身は競技経験は無いのですがU-10のコーチとしてお手伝いさせてもらってます。

悩みというのは同じチームの別のコーチの件です。

まずご自身の子どもへのパワハラがひどいです。

転んでも「すぐ立て!」、負けて悔し泣きしてたら「泣いてるんだったら出ろ!」など、とにかくまず自分の子を悪い見本のように叱っています。父親がそうでも母親がフォローすればいいのですが母親も「謝りに行ってきなさい!」とさらに追い詰める始末です。

他の子どもへのコーチングも、「一人で(ドリブルで)行くな!」「(守備の時)何で行かないんだ!」「クリア!」とすぐに答えを提示して子ども自身に考えさせないやり方です。

他にも勝利に対するこだわりが強すぎて、ポジションもメンバーも固定し、楽しませる練習というよりはとにかく勝つ練習ばかりです。

試合内容もとにかくセーフティファーストで、ゴールキックから縦ポンサッカーばかりでリスクを負ってパスを繋ぐことなど皆無です。勝ちたい余り結局はアクシデント任せで狙いのないサッカーばかりです。(練習ではパスサッカーをしようとしていますが)

我慢しようかと思っていたのですが、その手法があまりにも過激すぎて近くにいてその片棒を担いでるような気分になってしまって正直参ってます。

私自身はとにかく子どもが出来たことを褒め、自分でチャレンジするような、考えさせるようなコーチングを心がけてますが、そもそもメインのコーチがこのような状態では軌道修正もままなりません。

(おそらく自分が現役の頃から受けてきたコーチングから今時のコーチングへのアップデートが全く出来ていない)

パワハラコーチングが間違ってることを指摘したくても競技経験が無い自分の意見を果たして言っていいのかと悩んでます(私の息子たちも所属しているので大ごとになったら困るので)。

全体を統括する代表(異動で来る回数が減ったことも現状が悪化した原因)にも相談しましたが、改善する見込みもなさそうなので、とりあえずキリのいいところでけじめをつけて辞めようとは思ってますが......

少年団にはこのようなチームが多いのでしょうか?
逆にクラブチームにはこのようなチームが少ないのでしょうか?

もしよろしければ意見を聞かせてください。

 

 

<池上さんからのアドバイス>

ご相談ありがとうございます。

コーチ同士がいろいろな話ができる環境であれば、パワーハラスメントや指導スタイルの話をしてもいいと思います。

 

■その人に矢印を向けず「少年サッカーのパワハラ」のように話題提供してみる

その方に矢印を向けるのではなく「少年サッカーでもパワハラが問題になっていますね。どうしてそんなに厳しくするんですかね?」みたいな話題提供をして、他のコーチたちが話を進めるサポートをしてはいかがでしょうか。

そこでさまざまな意見が出て議論が深まれば、その方はそういった指導がしづらくなるはずです。

まずは質問や話題提供といったかたちでコーチ同士で話し合う。そんな機会をつくれるのが一番よいと私は思います。

ところが、日本ではそのような文化というか習慣がありません。結局、ネガティブな話をすると、各々がそれを受け止められずコーチ間の関係がギクシャクしてしまうことが少なくないようです。

 

■「みんなで学ぶ」場を設けて意識を変えるきっかけにするのも手

しかしながら、全体を統括する代表の方が職場異動のため来られる回数が減ったと書いてあります。

代表の方がリーダーシップをとって改善を進めてくださるといいのですが、それが望めそうになければ、クラブやチーム以外の第三者を呼んで話をしてもらったり、みんなで学ぶ場を設けると意識を変えるひとつのきっかけになるはずです。

基本的に、このようなタイプの指導者は、日本にはまだまだたくさんいらっしゃいます。そして残念ながら、そういう人たちが育成の中心になっている現実も否めません。

そういったパワハラを続けているコーチに対し、保護者の皆さんも「厳しく言ってくれる」「怒ってくれる」と評価しているようです。

強い態度で指導するコーチが評価される空気をまずは変えなくてはいけないでしょう。

 

■解決の第一歩目は、代表と話をすること

さて、方策としては、まずは代表と話をしたほうがいいでしょう。一歩目はそこだと思います。代表の方と話をして、そのクラブがどんなフィロソフィーを持っているか? そういうことをあらためて皆さんで話し合う必要があるでしょう。

例えば「もう一度大人同士で確認しませんか?」と提案してみてはいかがでしょうか。

最初は「コーチみんなで話をしたい」と要望を出してみることをお勧めします。

 

■決して良いとは言えない環境なのに子どもを所属させ続けるのはどうして?

相談文を読むとあきらめムードな印象を受けます。切りのいいところでけじめをつけてやめるとありますが、お父さんがコーチをやめたとしてもお子さんは残るわけです。

決して良いとはいえない指導環境なのに、息子さんはそこでプレーさせるのはどうでしょうか。正直に言うと、このコーチの方はなかなか変われないかもしれません。であればなおさら息子さんのことを考えなくてはいけません。

私だったら、コーチをやめる前に子どもに相談すると思います。今のチームや、コーチの指導について、自分はこう思う。なかなか変わってくれそうにない。だから、指導をやめようと思うけれど、君はどうしますか? そんな質問をすると思います。

とはいえ、12歳以下なので小学6年生。最終学年の活動になります。息子さんからすれば、仲間もいるでしょうしやめづらいはずです。他のチームへ移籍するという選択も、まだ低学年や3~4年生ならまだしも6年生ではなかなか難しいでしょう。

 

■どんな環境でサッカーをしたいか、子ども自身が考えるチャンスでもある

またよく読むと「息子たち」と書かれているので、このチームに複数所属しているようです。そうなると、兄弟で違うチームになれば、サポートする親御さんもいろいろと忙しくなりそうです。

そのように多角的に見ていくと、兄弟全員でチームを替えるか、全員残るかという選択になるでしょうか。とにもかくにも、息子さんに「どうしたい?」と尋ねて、「いや、友達もいるし」となったときは、そのまま中学に上がるまで同じチームでプレーすることになりそうです。

当然ながら、子どもにとって一番いい環境にいることが望ましい。パワハラもない、楽しく、心理的な安全が確保される環境でサッカーをやってほしいと私も思います。

が、上述したように、サッカーはチームスポーツなので友達関係など無視できない要素があります。サッカーの指導の質だけが条件ではありません。

しかしながら、逆に考えると、どんな環境でサッカーをしたいか? という大事なことを、子どもが考えるチャンスでもあります。

この際なので、親子で「なんのためにサッカーをするのか」「なぜサッカーが好きか」「どんな環境でサッカーをしたいか」といったことを話し合ってはいかがでしょうか。ぜひ、問いかけて息子さんの意見を聴いてあげてください。

 

 

■個人を責めるだけでは状況は変わらない そうならないためには......

(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)

 

また、ご相談文には、そのコーチの方が「一人で(ドリブルで)行くな!」「(守備の時)何で行かないんだ!」と指示が多いと書かれています。実際どんな場面で言ってしまうのかがわからないので何とも言えませんが、そういったことを責めるだけではこの問題は解決しません。

この「個人を責めるだけでは変わらない」ことはぜひ覚えておいてください。この方がもしもやめたとしても、また何年後かに同じような方が入って来てまた同じ問題が起きるかもしれません。

そういったことがないように、チーム全体で「自分たちコーチ陣は、どうやってて子どもを育てるのか」「どんなことが条件なのか」といったことを話し合ったほうがいいでしょう。

個人攻撃をするのではなく、「一緒に勉強しませんか?」という姿勢を忘れないでほしいです。

 

池上 正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさい サッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。

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