ミート矢澤が仕掛ける日本初のチキンカツ専門店「矢澤チキン」にいったら、チキンカツの印象が180度変わった
「ミート矢澤」といえば、東京・五反田に本店のあるステーキ・ハンバーグの有名店である。精肉卸のヤザワミートが運営を行っており、グループブランドに「焼肉矢澤」やハンバーガー専門店「ブラッカウズ」、スイーツ専門店「ガスタ」などを展開している。
そんな矢澤ブランドの新業態、日本初のチキンカツ専門店が東京ミッドタウンに2025年6月2日にオープンした。その名も「矢澤チキン」だ。
牛肉のイメージが強い矢澤が、ついに鶏肉にも着手したのである。お店に行ってその味をたしかめたところ……。さすが食肉のスペシャリスト企業だけあって、その味は格別! 私(佐藤)が食べたなかではトップクラスの美味しさのチキンカツであった。
・ミート矢澤といえば
私にとってのミート矢澤は、五反田本店の肉汁あふれるハンバーグではなく、テイクアウトのお弁当である。過去に大丸東京のテイクアウトステーションで2018年当時9980円だった「極味(きわみ)弁当」を買ったことがあるし、恵比寿のテイクアウト店舗で2019年当時8500円だった「贅沢弁当」を買ったこともある。
あれから6~7年が経過して、いずれの弁当もメニューとして健在であり、価格は極味弁当が1万1000円に。贅沢弁当が9000円に値上がりしている。とはいえ、上げ幅はそこまで大きくないことに改めて驚かされる。でも相変わらず高級なことに変わりはないのだが……。
とにかく、肉に関しては業界でもトップクラスの企業であり、高いブランド力を誇っている。そんな矢澤のチキンカツとは、どれほどのものなのだろうか。見せてもらおうか、矢澤のチキンカツの実力とやらを……。
・3種のカツ、4種のソース
お店は東京ミッドタウンの地下1階ガレリアにある。6月2日にオープンしてから約1週間経った平日の昼頃に行ってみると、新規のお店の割には落ち着いている様子。そこまで混み合っている印象はない。
メニューは大きくわけて3種類。カツの盛り合わせの矢澤プレート。チキンカツとオムレツを合わせたオムカツボウル。それからカツカレーである。
各種メニューのカツはフィレ・ムネ・モモのいずれかから選ぶことができる。また追加でトッピングすることも可能だ。それからソースはチキンカツソース・藻塩・タルタルソース・特製ジンジャーソースの4種が用意されている。
メニューを見る限りでは、とくに特徴はなさそうだが……。どこにでもありそうな食堂のメニューといった印象。実際に注文したのは、フィレ・ムネ・モモの3種のカツが乗った「矢澤プレート トリプル」(ライススープ付 税込1880円)である。
カツは左からムネ・フィレ・モモだ。実物を目の当たりにしても、グッと来るものはない。まあ、ハンバーグやステーキと違って、美しい焦げ目やあふれる肉汁を見せるのは難しいものなあ。
これらをジンジャーソース・藻塩・タルタルソースで頂くわけだが、ジンジャーソースとチキンカツソースは、直にかけて頂くとのことだ。
チキンカツソースと梅ドレッシングは卓上にあって、矢澤チキンのオリジナルのものである。
このソースが少し変わっていて、黒酢と黒砂糖を使用している。カツのソースといえば、シャバシャバのウスターソースや、とろみのきいたブラウンソースタイプのものが主流。ビネガーと果実味を感じさせるものが多いのだが、黒酢と黒砂糖を材料にしたものは珍しいのではないだろうか。どんな味がするんだろう。
・チキンカツってこんなに美味かった?
ではさっそく食べてみよう。まずはムネカツから。そのまま食べてみると……、むむ! これは今までに食べたことのないチキンカツの食感! これほど柔らかい鶏肉のカツがあっただろうか? いや、ないかも。
衣はかなり薄くて、パン粉の粒が細かい。ザクザクと歯ざわりを感じる厚衣も良いのだが、薄衣のサクっと軽やかな食感も悪くないな。
鶏肉は繊維を感じさせないほどふっくらで、それでいてジューシー。どう下ごしらえをしたら、こんなに柔らかくなるのか? 味よりもその作り方が気になってしまった。力を入れずとも噛み切れてしまう。鶏肉を揚げてこんなに柔らかくなるものなのか?
最初につけたはタルタルソース。チキンカツにはある意味定番のソースのひとつなのだが、このカツにはタルタルがそこまで合わない気がする。というのは、タルタルのクリーミーな食感は、ザクザクの厚衣とこそ相性が良い。したがって、この薄衣ではそのポテンシャルを出し切れていない。なくても良いかもな。
続いて藻塩。肉の甘さを引き出してくれるので、塩はいいと思う。邪魔にならないしね。
続いてはモモカツにジンジャーソースを試してみた。肉質は先のムネよりもさらに柔らかくて肉感が強く、旨味も勝っている。ひと口味わうたび、「チキンカツってこんなに美味かったっけな?」と自らの経験を振り返ってみたが、ここより美味いチキンカツを食べた記憶にたどり着かない。
ジンジャーソースは生姜の風味が控え目であっさりしている。このくらいの柔らかいとろみのあるソースが、このカツの食感には1番合う。シャバシャバとドロドロの間くらいのソースがふさわしい気がするな。
そして最後にフィレをチキンカツソースで頂く。先に述べたように軽すぎず重すぎないソースとの相性は良い。オリジナルソースはそのちょうど良い濃度に仕上がっている。それからソースの味もくどくない方がいい。あとを引かない酸味と甘味を考慮して、原材料に黒酢と黒砂糖を選んだのだろう。
鶏肉の旨味を最大限に活かすために、あえて薄衣で仕上げて、クセの少ないソースを提供している。シンプルな美味しさを追求した結果ではないだろうか。食べる前は正直なところ「所詮、チキンカツでしょ」と軽く見ていたが、実際は今まで食べたなかで1番美味しい味だったかもしれない。
チキンカツと侮るなかれ。豚にも牛にも負けないポテンシャルを秘めていることを、矢澤は示している。
・今回訪問した店舗の情報
店名 矢澤チキン
住所 東京都港区赤坂9丁目7-1 東京ミッドタウン ガレリアB1
時間 11:00~21:00
定休日 なし(施設に準ずる)
参考リンク:バリュート株式会社
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24