FC琉球新監督就任 元浦和レッズ平川忠亮氏 ~新たな指揮官が描く琉球の未来と招聘の理由とは~
「僕自身沖縄がとても大好きで、この場所で県民のみなさまと一緒に戦えることは、身の引き締まる思いです。全身全霊を懸けて沖縄のために頑張りたいと思っています。」
2024年12月18日。八重瀬町で就任会見を開いたFC琉球の平川忠亮(ただあき)新監督。 現役時代は浦和レッズ一筋で17年間プレーしJ1で335試合に出場した実績を持つ。 「2025シーズンはJ2昇格が目標です。琉球の攻撃的でアグレッシブなサッカーを引き継ぎながら、さらにその速度を速めていく。もっともっとゴールに迫っていくサッカーを表現していきたいと思っています。日々の練習からハードワークして、選手たちとともに戦っていきますので、ファン・サポーターの皆さまにはスタジアムはもちろん、練習場にもぜひ足を運んで見に来ていただきたいと思っています。そういった場を増やしたいし、選手とサポーターが一つになって盛り上げていければと思っています。ぜひご期待ください」
昨季までは浦和レッズ・ユースの監督を務めた平川氏。トップチームで指揮を執るのがFC琉球で迎える新シーズンが初めてとなる。新たな指揮官が思い描く琉球の未来とは。招聘に至った理由とは。平川氏と記者会見に同席した八木原泰斗(たいと)強化部スポーツディレクターの言葉から紐解いてく。
攻撃的な琉球のフットボールを継承し進化させる
現在J1の東京ヴェルディでスポンサーセールスやスタジアム演出の責任者などを歴任した八木原スポーツダイレクターは、平川氏にオファーをした理由について大きく3つあると語った。
八木原スポーツダイレクター 「一つは、琉球のフットボールを継承できるという点です。複数得点で勝つ攻撃的なスタイルを培ってきましたが、平川監督体制でもこれを引き継いでいけると確信しています」 平川監督自身も浦和レッズ・ユースでは“複数得点で勝利する”という目標掲げていたと話す。「基本的には全員攻撃・全員守備だと思っています。キーパーから攻撃が始まり、前線の選手だけに任せるのではない。いかにプラス1を作れるのか。分厚い攻撃・湧き出るような攻撃をイメージしています」 湧き出るような攻撃のイメージについては、よりサイド攻撃も強化して厚みを持たせたいと語る。 「去年のサッカーでいえば中央突破のコンビネーションが多かったと思います。素晴らしいコンビネーションが多いので、ボールも握れる、そしてビルドアップも安定していました。その中で、プラスアルファとしてサイド攻撃も増やしていきたい。サイドで仕掛けられる選手の獲得もオーダーしています。個々の武器を最大限生かすところに着目したいと考えています」 もう一つ強調したのが“守備の強度”だ。 「攻撃のために良い守備ができるか、即時奪回をして二次攻撃に繋げられるかというところも求めていきたいと思っています。失ったときにもう一度奪い返す。相手が整う前に攻めることも大事だと思います。そこに向けては必ずハードワークが必要になるのでそこは求めたいと思います。」
数々のタイトルを獲得してきた“勝者のメンタリティ”
八木原スポーツダイレクター 「二つ目は、勝率という確度の読めない部分へのアプローチです。課題発見やそのアプローチ方法が非常に明確で、解像度が高く、琉球の戦術やコンディショニングといった課題に対しても具体的なアウトプットを示してくださいました。何より平川監督ご自身が、浦和レッズで数々のタイトルを獲得され、「勝者のアイデンティティ」を宿した方です。勝者のマインドを持った方にお越しいただくのが良いと考えました」 J1でのリーグ制覇、Jリーグカップ、天皇杯、ACLと17年間の現役生活で主要タイトルはすべて手にしてきた平川氏。自身の想う“勝者のメンタリティ”を植え付けられるよう日々の練習からハードワークを求めていくと力を込める。 「勝者のメンタリティを作るのは、日々の練習だと思っています。どんな試合を潜り抜けるよりも一日一日の練習に手を抜かずに取り組むこと、勝利にこだわることが何より大事だと思います」
また、“沖縄”という特殊な環境だからこそ紅白戦が大事になると説明した。 「沖縄は陸つながりの都道府県が無いので、練習試合が頻繁に行える環境ではありません。だからこそ紅白戦でいかに勝利にこだわれるか。同じ仲間だけど目の前のライバルに負けたくないと思えるか。紅白戦が白熱しなければいけないんです。来季の選手も、スタメンで使えそうという要素だけではなく、全体の層が厚くなるように考えてもらっています。日々の練習で戦えるかが勝利のメンタリティだと思うし試合に繋がってくると思うので、練習から勝利にこだわること求めたいと思っています。
成長のため意見を出し合える組織に
八木原スポーツダイレクター 「三つめは、チームビルディングに対する価値観。クラブのため、エンブレムのため、仲間のために戦える集団であるか。仲間の成長のために、オープンでフラットに意見や指摘をしあえる組織であるか。我々がチームとして大切にしたいこの価値観が合致しました。1+1を2ではなく、10や100にまでできるようなチームの力を強みにしていきたいと考えています。 すでに監督・スタッフ間で意見を出し合い来季に向けた改革も進めている。 「琉球の課題として八木原スポーツダイレクターとも話をしたのが、夏以降に成績が落ちる傾向にあるということです」 振り返れば昨季も前半戦はリーグ上位につけていたが、後半戦は勝ち星が伸びず失速。最終的には14位という成績でシーズンを終えた。 そこで新シーズンはJ1のセレッソ大阪から渡邉翔フィジカルコーチを新たに招聘した。
「若手が夏以降に存在感を上げていけるかだと思います。渡邊フィジカルコーチに来てもらって若手の強化を進めたいと考えています。試合に出ていなくても筋トレから丁寧にフィジカルの部分を強化して、夏以降に出てこられるように準備を進めたい。練習の一コマ、一コでもどれくらいの強度が必要なのか細かく話し合ってチームを作りたいと思っています。夏以降結果が出てくるイメージも持っています。開幕から試合に出ている数人だけでは戦えない、シーズン通して全員が活躍できる場を作りたいです」
沖縄では強いチームが求められている
平川新監督は「沖縄でどのようにFC琉球の存在感を高めていきたいか」という問いに対してこう答えた。 「大事なのは勝利。一つの勝利がチームを強くするし、県民を喜ばせることができると思っています。バスケットボールの琉球ゴールデンキングスも強いですし、強いチームが求められているのかなと思います。一つでも多くの勝利を届けられるように。勝利のため、チームのためにハードワークを求めていきたいと思っています」 昨シーズン所属した選手の多くがこのオフ、チームを去った。出会いあれば別れあり。そしてまた新たな出会いが待っている。そういったサイクルを繰り返しチームは変化していく。 八木原スポーツダイレクター 「1+1を10にも100にもできる、琉球にフィットしてチームとしてバリューを発揮できる、そういった選手たちに声掛けをしており、来週以降にリリースを出していけるかなと思っております」 J2返り咲きへ、新体制のもと新たな航海が始まる。
取材&執筆:植草凜(沖縄テレビアナウンサー)