賑わい創出にシネマ? 町田駅周辺 機運高まり
町田駅周辺の賑わいを生むものの1つとして複数の映画スクリーンを有するシネマコンプレックスの誕生を期する機運が高まっている。町田駅周辺の再開発を進める町田市の推進計画に想定の1つとしてあがり、2000代前半まで駅前で映画館を運営していた町田駅前商店会の会長を務める佐藤雅男さんは「需要は高いと思う。場所を確保できるかが課題になるのでは」と話している。
町田駅周辺にはかつて10を超える映画館が存在していた。戦後の復興が進む時代、市民の娯楽として人気を集め、街の賑わいを生むものの1つに数えられた。ただ、さまざまなものが溢れ、娯楽が多様化していくと、町田駅前の映画館は数を減らすようになっていった歴史がある。
独自に選んだ映画を上映していた単館の映画館を2006年まで運営していた佐藤さんは「祖父が1949年にオープンさせたものを引き継いだが、40年代は『映画館は金儲けになる』と参入が相次いだと聞いた。でも、2000年代にもなると町田周辺にはうちだけに。いろいろな企画を実施したが経営し続けるのは困難だった」と振り返る。
開発進む
市は町田駅周辺の開発を進めている。70年代から80年代にかけて大規模な商業ビルの建設が進み、多摩地域を代表する商業地の1つに数えられるようになった。しかし、それからおよそ半世紀が経過した現在は代表的な施設の老朽化が進行する一方、町田の周辺地域では次々と集客力のある新たな施設が誕生。町田の優位性が下がっているとして、官民通じた開発への機運が高まっている。
そんななかで賑わいを生むものの例の1つとして市の開発推進計画にあがるのが、シネマコンプレックスだ。市の資料によると、町田駅(JR横浜線、小田急線)の1日あたりの乗降者数はおよそ51・8万人で改札を出た「街なかへの来街者」の割合は13・4%。乗降者数が約33・7万人である立川駅の22・8%に比べて、「街なかへの来街者」の割合は9・4ポイント低いが、比較的新しい商業施設が立ち並ぶことに加えて、シネマコンプレックスが駅近にあることも立川駅周辺の賑わい創出にひと役買っているとみることができそうだ。
他にも駅周辺にシネマがある橋本駅(相模原市/13・8%)や新百合ヶ丘駅(川崎市/30・2%)の「街なかへの来街者」の割合は町田駅周辺よりも高くなっている。
佐藤さんは「シネマコンプレックスであれば単館系とは異なり、多種類の映画を上映することができるため、『はずれの作品』があったとしても他のものでカバーするなど、集客を安定させることができる」と分析。町田駅に近い南町田にもシネマコンプレックスはあるが、「それでも町田駅周辺でシネマコンプレックスを運営したいと考える会社は少なくないと思う。場所を確保できるかが課題になるのではないか」と話す。
学生時代から映画ファンという町田駅近くで店を開く石井康一郎さんは「学生のころまでは町田で映画を観ていたが、今は新百合ヶ丘などまでいく。再び近所で楽しめるようになればと思う」と話している。