【詐欺師のレシピ】第9回:炒飯クロスカウンター被弾! デートクラブ詐欺師ゆきこの「ハルピン腸詰チャーハン」
詐欺師との攻防における「チャーハンスチール(盗炒飯)」は、格闘技そのものだ。しばし、お互いに手を出しながら様子をうかがう。脱力して、さぐり的なパンチを打ち合う。
「ここぞ!」というタイミングは唐突にやってくる。そのチャンスをモノにできるかどうか。それが勝敗の分かれ目であり、“百戦錬磨の迷惑メール評論家” としての腕の見せ所でもある。
渋谷区在住のネイルアーティスト「ゆきこ」との勝負は、まさに一瞬で双方が “チャーハンの打ち合い” になるという、大変珍しい一戦になった。
【動画】実食の感想はノーカットYouTube動画(6分)にて
・なぜハルピンなのか
どんな攻防だったのかは後々解説するとして、まず最初にゆきこが教えてくれたチャーハンレシピを紹介したい。題して「ハルピン腸詰チャーハン」。
無論、ゆきこが言うレシピそのままではなく(そのままでは到底作れない)、調理師免許所持の私(GO羽鳥)による解釈とアレンジしたものが以下だ。
■デートクラブ詐欺師ゆきこの「ハルピン腸詰チャーハン」
【材料】(1人前)
・ご飯(できれば一晩寝かせた冷飯) 大盛り1杯分
・卵 2個
・ハルピン腸詰 半分(サイコロほどの大きさにカット)
・玉ねぎ 半分(みじん切り)
・万能ねぎ 適量(小口切り)
・黒コショー 適量
・醤油 小さじ1
・鶏ガラスープの素(小さじ半分)
・サラダ油 適量
※ポイント
ゆきこは「ソーセージ」と言ったが、玉ねぎやごはんの分量に対して普通のソーセージ1本だと少なすぎる。これは一体……と、都内某所の中華食材屋さん店主に相談したところ、「腸詰ではないか」との予想。
その店には、やや甘めの味付けな台湾式の腸詰(香腸)と、中国北東部「ハルピン(ハルビン)」に伝わる、スモーキーな味付けの『ハルピン腸詰(哈爾賓紅腸)』があった。
どちらがこのレシピに適しているのか中国人店主と相談の結果、「味や大きさ的にハルピン腸詰(半分)では?」となり、ハルピン腸詰をチョイスした次第である。
【作り方】
その1:熱した鍋に油をひき、溶き卵を加えて素早く炒め、半熟になったら取り出しておく。
その2:鍋に再度油を加え、カットした腸詰を入れて軽く焦げ目がつくまで焼くと、腸詰から旨味を含んだ油が出てくる。
その3:みじん切りにした玉ねぎを加え、柔らかくなるまで炒めて香りを出す。そこにごはんを加えてほぐし、具材と混ざるように炒(チャオ)る。
その4:醤油(小さじ1)と、黒コショー適量を加え、さらに鶏ガラスープの素(小さじ半分)を加え味を整える。
その5:最後に「その1」で作った半熟卵と万能ネギを散らし、全ての材料がよく混ざるまで均等に炒(チャオ)って……
完成!
そのお味は……
うまい。うまいのだが、ちょっと小さくまとまりすぎている感もある。いわゆる普通の「腸詰チャーハン」といった感じで、もっと尖った、振り切った味付けでも良かったのではないか、なんて思ったりも。
腸詰チョイスに関しては、甘めと言われる台湾式ではなく、スモーキーなハルピン腸詰で正解だったと確信。
なぜ甘めの台湾式でなくて正解だったのかというと、具材の玉ねぎがかなり甘いから。ここに「甘」な腸詰が来たら、ちょっと甘々で早々に飽きてしまったおそれもあった。中華食材屋さん店主にシェイシェイ。
仮にハルピンでなかったとしても、このチャーハンは日本のソーセージではなく、ぜひとも中国本場の「腸詰」を使ってほしい。段違いで本場度マシマシだ。
なお、最後までおいしくいただけたが、非常に「おとなしい」味付けだったので、個人的にはもっとパンチが欲しかった。たとえば刻みニンニクを入れたり、唐辛子を入れたり……。
しかしそうなると、国際ロマンス詐欺師かなえのカーチャン式「台湾チャーハン」に近くなるので、今回のコレはコレ(ハルピン)で良かったのではないかと思ったりも。
・デートクラブ詐欺師ゆきこについて
ゆきことは、その後もかなり長いやりとりをした。設定的には、架空の「デートクラブ」で紹介された同士であり、大きく分類すれば「ロマンス詐欺」にあたる詐欺展開だった。
具体的には、普通にLINEでとりとめのないやりとりをし、徐々に親密に。そして「会う」となったら、「デートクラブの会員カード」が必要とくる。
そしてその「会員カード」に登録するためには、さまざまな個人情報を入力しなければならない。また、それにともない、登録費用なども請求される……という流れになるのだ。
一般的にロマンス詐欺は、いきなり女性から連絡が来て「好きです」など、ダイレクトにやりとりしてくるパターンもあれば、このような「デートクラブ」を装ってくるパターンもある。
後者の場合、「紹介者」から連絡が来たと思ったら「誰が良いですか?」と選ばせて(ワンクッション置いて)、その後はその人と……みたいな流れになるのが主流にして王道。
それゆえ私は、今回のゆきこは、ロマンス詐欺師(国際ロマンス詐欺師)ではなく、より細かい「デートクラブ詐欺師」と表現してみた次第である。
・チャンスは一瞬。見逃さず畳み掛けろ
最後に、今回の攻防のポイントを簡単に説明しておきたい。流れ的には、やや長い「自己紹介」 → 「好きな食べ物は?」という質問が来たので、間髪入れずカウンター気味に「チャーハン」を放った。
すると! なんとゆきこは……
間髪入れずにチャーハンの写真を送ってきたのだ。質問が来てから私が炒飯カウンターを放ち、それに対するクロスカウンター(チャーハン写真)が放たれるまでの時間はわずか1分。もしや、ゆきこはAI……?
とまあれ、「誘い」 → 「チャーハン」 → 「チャーハン(写真)」と、どちらかといえば私がチャーハンを食らった感じになっているのだが、そこからはズルズルと寝技に持ち込み、
なんだかイイ雰囲気になったりもした。
・詐欺を防ぐためにはどうしたらいいのか
いずれせよ、ゆきこは典型的なロマンス詐欺師。そして、いまだ、毎日のようにロマンス詐欺による被害のニュースが報じられている今日この頃。
ちょっと調べただけでも、つい先日、会社役員の70代男性が4000万円の被害に。数日前には70代女性が1億1000万円を騙し取られたと。少し前には60代男性が3860万円の被害に……。
これらを防ぐためにはどうしたらいいのか。その答えは、難しいかもしれないが「孤立させないこと」である。
ロマンス詐欺は、「孤独」や「寂しさ」につけ込んでくる詐欺だ。これだけロマンス詐欺のニュースが飛び交っていても、孤立しているからそれが詐欺だと気づかない。
警視庁などがいくら注意喚起をしても目に入らない。なぜなら騙される人たちは、相手が詐欺師だなんて思っていないので、詐欺師の情報を流布しても他人事と感じ読んでくれないのである。
もしも知り合いに「騙されているのでは?」という人がいたら、ぜひとも私の書いた「GO羽鳥の迷惑メールシリーズ」を教えてあげてほしい。
なぜ私が真面目なテイストではなく、こうしてチャーハンをからめたり、笑えるような体で書いているのかといえば、「面白かったら読んでくれるかもしれない」からである。
読んでくれたら、頭の中にうっすらでも「詐欺」が残る。その結果、詐欺に直面したら「もしかしたら……」となり、被害を防げるかもしれない。
今も昔も、私は1人でも騙される人が減ることを願っている。
執筆:迷惑メール評論家&チャーハン探求家・GO羽鳥
Photo:RocketNews24.
こちらもどうぞ → 『GO羽鳥の迷惑メールシリーズ』