標準和名に<春を告げる花>が付く魚たち 「ウメ」「ナノハナ」「モモ」「スミレ」?
梅、桃、桜、タンポポ、スミレなど、春を告げる花は数多く存在します。
これらの花はいずれも日本人にとって非常に身近な存在であり、古くから様々な作品に登場してきました。
また、生物の名前に春の花が使用されることは珍しくなく、魚の世界においても春を告げる花が標準和名に用いられることがあります。
「熟した梅」のような色だから<ウメイロ>
「梅」は品種にもよりますが、冬から春にかけて花を咲かせる植物で、「春を告げる花」「早春の花」として知られるほか、春の季語としても知られています。
そんな「梅」が標準和名に用いられている魚の代表であるフエダイ科のウメイロ。本種の標準和名は漢字で「梅色」と書き、体側背面にある大きな黄色班が「熟した梅」のような色をしていることが由来だそうです。
また、この黄色班に起因した別名「ウグイス」も知られています。
梅という身近な植物が名前の由来となっている魚はウメイロ以外にもウメイロモドキ、ユメウメイロが知られていますが、これら3種以外で梅が付く魚がいないのは意外かもしれません。
なお、ウメイロモドキとユメウメイロはフエダイ科ではなく、タカサゴ科に属する魚であり、ウメイロモドキはウメイロと比較して鱗が粗いことが特徴です。
「菜の花」が付く魚たち
春の花といえば「菜の花」を連想する方もいいのではないでしょうか?
標準和名に「菜の花」が付く魚として、スズメダイ科のナノハナスズメダイ、ハゼ科のナノハナフブキハゼが知られています。
ナノハナスズメダイはかつて、浅海に生息するキホシスズメダイと混合されていたものの2018年に新種記載。幼魚では体色が鮮やかな黄色であることから、菜の花に因んだ名前が付けられました。
スズメダイ科にはナノハナスズメダイのほかに黄色い体色を持った種が記載されており、中でもタンポポスズメダイ、ヒマワリスズメダイはナノハナスズメダイと並び、標準和名に黄色い花が用いられている種として知られています。
恐らく春の花に由来した魚たち
魚の名前の由来というのは命名者のみぞいるものであり、外見上、由来が推測できるものでも文献等で触れられていなければ推測の域を出ません。
これから紹介する魚たちは、おそらく春の花に由来した魚たちです。
ウスモモテンジクダイ
ウスモモテンジクダイはテンジクダイ科イトヒキテンジクダイ属に属する小型種です。
熱帯~亜熱帯にサンゴ礁域に生息する魚で、見た目の美しさから観賞魚として需要があります。よく似た同属のイトヒキテンジクダイとは尾柄の後端に黒斑があることで区別することが可能です。
本種の名前は「薄桃」に由来すると考えられますが、和名の由来を記した確かな文献を見つけることができませんでした。
スミレナガハナダイ
スミレナガハナダイはハタ科(またはハナダイ科)ナガハナダイ属に分類される魚です。
本種は水深6~70メートルの岩礁域に生息し、見た目の美しさから観賞魚として需要があります。
スミレナガハナダイの特徴はなんといっても体側前半部に大きく鮮やかな班です。恐らく標準和名のスミレナガハナダイは、この色彩が菫色をしていることに由来しているのでしょう。
ちなみにハタ科(またはハナダイ科)にはスミレナガハナダイの他に花の名前が付く魚が多く存在し、春の花の代名詞である「桜」が付く魚だけでも、サクラダイやカスミサクラダイ、イッテンサクラダイなどが知られています。
標準和名に花の名前が付く魚はたくさんいる
今回は春の花として菫、桃、菜の花、梅が付く魚たちを紹介しましたが、この他にも春の花はたくさんありますし、花の名前が付く魚もたくさんいます。
春はお花見をするのも良いですが、名前に「春の花」が付く魚たちを見て、季節の移り変わりを感じるのも良いかもしれませんね。
(サカナト編集部)