寺地拳四朗は令和のシン激闘王!矢吹正道にリベンジ後、7戦7勝6KOの大変身
ユーリ阿久井政悟に12回TKO勝ちでフライ級統一
プロボクシングのミニマム級からフライ級まで3階級で世界王者になった八重樫東(現大橋ジムトレーナー)は現役時代、両まぶたを腫らしながら一歩も下がらず打ち合い、「激闘王」の異名を取った。
現役の世界王者で「激闘王」を受け継ぐとしたら2団体統一世界フライ級王者・寺地拳四朗(33=B.M.B)しかいないのではないだろうか。愛くるしいベビーフェイスと左ジャブを効果的に使う正統派のスタイルからは想像もつかないほど、最近はエキサイティングなファイトを続けている。
3月13日には東京・両国国技館でWBAフライ級王者・ユーリ阿久井政悟(29=倉敷守安)と統一戦を行い、最終12回TKO勝ち。11回終了時点でジャッジ2人は1ポイント差で阿久井を支持していたが見事な“逆転劇”で、WBCの緑のベルトに続いてWBAの黒いベルトも奪取した。
寺地はこれで25勝(16KO)1敗。2022年3月に一度敗れた矢吹正道(緑)に3回KO勝ちでリベンジして以来、7戦7勝(6KO)と無類の強さを誇っている。
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日本歴代6位タイの8度防衛も試合はハイライト録画
元日本ミドル級、東洋太平洋ライトヘビー級王者・寺地永を父に持ち、奈良朱雀高から関西大でアマチュアのリングに上がった。高校3年時のインターハイでは当時新磯高1年だった井上尚弥とも対戦経験がある(3回RSC負け)。
アマチュアで74戦58勝(20KO・RSC)16敗の戦績を残し、父が経営するB.M.Bジムからプロ転向。アマチュア出身らしいスタイリッシュなアウトボクシングで2017年にWBCライトフライ級王座を奪取した。
的確な左ジャブと速いフットワークで危なげない試合を続け、8度の防衛に成功。日本最多13度の具志堅用高以下、12度の山中慎介、11度の内山高志、10度の長谷川穂積、9度の勇利アルバチャコフに次ぐ歴代6位タイの防衛回数だった。
しかし、当時のボクシングは世界戦でもメインイベントしかテレビで生中継されず、井上尚弥や村田諒太のアンダーカードが多かった拳四朗の試合は、ハイライトシーンが録画放映されるのみ。パワー不足で迫力に欠けるため視聴率が期待できないのがその理由だろう。8度も防衛しながら人気も知名度も一向に上がらなかった。
井上尚弥の前座からトリプル世界戦のメインに
しかし、9度目の防衛戦で矢吹正道に10回TKO負けしてベルトを失ってから拳四朗のボクシングが大きく変わる。2020年11月に起こした不祥事も自らを省みるきっかけになったのかもしれない。
2022年3月に矢吹へのリベンジを果たすと、同年11月に京口紘人(ワタナベ)とのライトフライ級統一戦で会心の7回TKO勝ち。2023年4月には現WBOフライ級王者アンソニー・オラスクアガ(アメリカ)との壮絶な打撃戦を9回TKOで制した。
それまで足を使って安全な距離まで離れるスタイルだったが、足を止めて打ち合うシーンが急増。同時にボクシング中継がテレビの地上波から動画配信に移行したのも拳四朗にとっては幸運だった。
見応えのある試合がハイライト録画ではなく、完全生配信されると人気も上昇。今回の試合もU-NEXTでライブ配信され、拳四朗はトリプル世界戦のメインイベンターを務めた。アンダーカードで注目度の低かった頃のひ弱さはかけらもない、逞しい世界王者の勝ちっぷりだった。
今後はスーパーフライ級に上げて3階級制覇を目指したい意向を示している。3階級制覇なら日本では亀田興毅、井岡一翔、八重樫東、長谷川穂積、井上尚弥、田中恒成、中谷潤人の7人しか達成していない偉業だ。
亀田和毅(TMK)が3階級制覇を懸けて5月24日にIBFフェザー級王座に挑戦するが、遅かれ早かれ拳四朗もスーパーフライ級に上げるだろう。シン激闘王の挑戦はまだまだ終わらない。
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記事:SPAIA編集部