週何回行くべき? 自主練習は何をしたらいいの? サッカーの「習い方」がわからない問題
小学校からのサッカーの習い方、週に何回行くべきか、個人練習は何をしたらいいのかわからない。おすすめの「習い方」があれば教えてほしい、というご相談をいただきました。
わが子に合った練習回数、強度が知りたい、「習い事の正解が知りたい」と思う方もいますよね。子どもがやっているスポーツを親が未経験だとそのような意識を持つ方もいるようです。
スポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、子どものスポーツに「リラックスしてつきあう」ためのアドバイスを送ります。
(構成・文:島沢優子)
(写真は少年サッカーのイメージ ご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)
<<人一倍繊細な息子、「ミスしたら怒られる」と泣き出すように。親の期待が強くて無理させていたのか問題
<サッカーママからのご相談>
幼稚園サッカーを年長になってから始め、とても楽しんでいます。年少からやってる子や、小学校のキッズクラブ、習い事でサッカークラブに入っている子たちに比べたら全然ですが、動きも上手くなってきました。幼稚園の先生方の指導がうまくて、本人はサッカーが得意なんだ! と本当に大好きになりました。
1年生に上がってからのサッカーの続け方に悩んでいます。
小学校の土日に練習があるクラブチームは指導が保護者で結構厳しいようです。平日にやってる近くのクラブは技術を練習するのをメインでしていたり、夜6時台からの楽しむ試合メインのクラブもあるようです。
幼稚園サッカーは小学生は参加できないので、引き続き息子に合うサッカーの習えるところについて悩んでいます。
ちなみに私も夫もスイマーで、サッカーには触れてきていないのでどういう習い方が一番いいのかが全くわかりません。週何回行くべきとか、なにを個人練習したらいいとか。
小学生からのおすすめの習い方があれば教えてください。
<島沢さんからの回答>
ご相談ありがとうございます。
私がお母さんにお伝えしたいことは、大きく分けて3つあります。
■親はサッカーに詳しくならなくていい リラックスして楽に構えよう
1つめ。息子さんのサッカーのことに少し力が入っていませんか。力が入り過ぎると、過干渉になりがちです。もう少し息子さんがどうするかを見守りましょう。親が先行せず、後ろについて回るイメージで寄り添ってください。
お母さんもお父さんもスイマーとのこと、自分たちの運動歴にはないサッカーをさせているのはとてもいいですね。自分もやっていると、どうしても自分と子どもを比べたり、競技を知っているがゆえに、ああしろ、こうしろといろいろうるさく言いたくなります。
が、自分たちとは縁遠い競技であれば、完全に素人。例えば「うわ、足でボールをそんなに操れるのはすごいね」と思わず子どもを尊敬の目で見てしまいます。私も自分はバスケットボールをしていたので、何十回と続けてリフティングできる息子や娘に「なんでそんなことできるの?」といつも感動させられました。
したがって、どうかサッカーにあまり詳しくならないでもらいたいです。そう言うと「いや、逆でしょ」と言われそうです。子どもがやってるのだから詳しくならなきゃ! ちゃんと考えてあげなければ! と力が入っているのではないでしょうか。
どうかもっとリラックスして楽に構えましょう。親があれこれ探してこなくても、小学校に通っていればサッカーをする仲間とも出会います。そうすると「僕はこのクラブに入ったから一緒に行こう」などと誘われたりします。
もしくは、通学路に看板があったとか、グラウンドがあったとか、自分で見つけてくるはずです。そうやって息子さんが見つけてきたチームに一緒に見学に行ってみてはどうでしょうか。
■チーム、スクールなど所属先を選ぶ際に大事な6つの要素
2つめ。お母さんのいう「習い方」のひとつは、チーム選びかと思います。その際、私が大切にしてほしい要素は以下の6つです。
1.子どもの足で通えるなど、自宅と比較的近い場所で練習しているチーム。
2.○○大会優勝など、強いことをアピールするのではなく「サッカーの楽しさを伝えます」といったビジョンを掲げているチームが望ましい。
3.子どもを怒鳴ったり、過度に厳しくしたりしないチーム。
4.活動(練習)回数が選べる自由度があるのが理想。もしくは「週に3回以上来ないとダメ」といった縛りがないチーム。
5.全員に対し、ほぼ平等に試合に参加させてくれるチーム。
6.夜遅い時間に活動しないチーム。毎日夜8時から9時の間に就寝する生活リズムをキープできるチーム。
これらを優先項目にして、お子さんと一緒に考えてみましょう。
また、いきなりチームに所属せずに、2、3年生くらいまで平日か土曜日などのスクールしか選ばない子もいます。
ずっとサッカー漬けでは、週末に親御さんやほかのきょうだいと一緒に出掛けたり、遊ぶこともできません。早期教育に走るよりも、家族の時間を大切にして過ごすのもいいでしょう。
■手取り足取り教えてもらう「習い事」ではなく「好きで楽しむもの」と心得るほうが上手くなる
(写真は少年サッカーのイメージ ご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)
3つめ。
サッカーなど、スポーツは「習い事」ではないと心得ましょう。相談文に「どういう習い方が一番いいのかが全くわかりません」とあり、最後に「おすすめの習い方があれば教えて」と書かれています。
始める入口は特に大人に基礎的なことを教えてもらう場面は多いでしょう。とはいえ、サッカーは上達するために人から習うものではありません。楽しくて夢中になっているうちに知らない間に上手くなっている。そのようなとらえ方をしてください。
私がつくった本で『サッカーで子どもの力をひきだす 池上さんのことば辞典』(カンゼン)という書籍があります。この本は、8万部のベストセラー『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(小学館)の著者である池上正コーチが監修し、私が書いたものです。
サッカー関連の「ことば辞典」で、「ドリブル」とか「パス」といったよくある言葉を、本質をつく視点で解説しています。そして、その中に「習い事」も載っています。一部抜粋してご紹介します。
「サッカーは習い事です」
そのように話す保護者や子どもが非常に多いです。スクールやスポーツクラブなどに通わせている方は、月謝を払っているからでしょうか。月謝を払っているからには上手くなってもらいたい。それでなくてはお金がもったいない。そのようにとらえられています。このことは、ずいぶん以前から非常に気になっています。反対に、私はサッカーは「遊び」だと思っています。「スポーツ(sports)」の語源は「遊び」です。技術を習得したり、上手くなりたい、試合に勝ちたいといった気持ちはもちろん大事ですが、小学生ではそれらはすべて遊びだと考えてほしい。
ところが、保護者や指導者が過度にわが子に期待して力が入ってしまうと、子どもは練習や試合のたびにストレスを感じるようになってしまいます。遊びだと思っていないので、出来栄えや結果が気になって仕方ありません。大人たちの顔色、もっとエスカレートすると、仲間の顔色までうかがうようになります。
(中略)
「サッカーは習い事じゃなくて遊びだよね」
親子とも、そのように考えられるほうがもっと上達します。
出典:『サッカーで子どもの力をひきだす 池上さんのことば辞典』(カンゼン)
いかがでしょうか。
どうか、サッカーを楽しむ、好きになるということを第一に考えてあげてください。
島沢優子(しまざわ・ゆうこ)ジャーナリスト。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』『東洋経済オンライン』などでスポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実 そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート 夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』(小学館)『世界を獲るノート アスリートのインテリジェンス』(カンゼン)『部活があぶない』(講談社現代新書)『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)『オシムの遺産 彼らに授けたもうひとつの言葉』(竹書房)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著・小学館)『教えないスキル ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術』(佐伯夕利子著・小学館新書)など企画構成者としてもヒット作が多く、指導者や保護者向けの講演も精力的に行っている。日本バスケットボール協会インテグリティ委員、沖縄県部活動改革推進委員、朝日新聞デジタルコメンテーター。1男1女の母。