コジマタケヒロのアルビ日記2024 Vol.12 「I’m hungry for points」トーマス・デン
アルビレックス新潟のトーマス・デン選手
「今日はだいぶ涼しいから回復するのにはちょうどいいくらいの気候ですね」
2024年6月18日の練習後、トーマス・デン選手との会話はこんなふうに始まった。
——足にテーピングをしているけれど?
「前に痛めたんだけど、もうそんな深刻なものじゃないよ。一応付けている程度だよ」
——トーマス選手がセンターバックに入ると、守備の安定感が増す気がします
「そう言ってくれるのはうれしいな。何試合か少し欠場してしまったけれど、前節は鹿島相手でもいい試合(A/△1-1)ができたし、個人的にもいい状態だと思っています」
——試合ごとにコンビを組む選手が代わることもありますが、センターバックの選手たちのコンビネーションはどうですか?
「お互いにどういうふうに助け合うべきか、補うべきかを分かっているので、誰と組んでもまったく問題なくプレーできます」
——今季はタフな試合が続いていますが、ご自分の手応えはどうですか?
「昨シーズンのメンバーから何人か選手が抜けて、その部分を補わなければと思っていた部分もありますが、今ではそんなこともなく、いい感じにチーム全体がなってきていると思います」
——以前、なかなか縦に付けるボールを入れづらいゲームが続いていると話してくれましたが、ここ最近はそういったボールも入るようになったように見えますが?
「相手のプレスや守備の仕方によって、必ずしもパスが出せるわけではないですが、前節の鹿島戦に限っていえば、相手はコンパクトな守備ではあったけれど、結構スペースが間にあったので、それでパスを出すことができました」
——チームが点を取れるようになってきたことがチームにいい影響を与えていると感じますか?
「それはありますね。みんなが同じようなイメージをもってプレーできているから、より試合運びがスムーズになってきているし、リズムも良くなってきていると思います。鹿島戦で先制点を取れるのはやはり大きいなと感じましたね。先制点が取れるとよりスムーズになります」
——トーマス選手がボールを持ち運び、相手陣内にも迫っていくシーンが最近、何度かありますね?
「そうですね。そんな感じがしたときはなるべく上がっていくようにしています。別にディフェンダーだからといって上がっちゃいけないわけではないので、チャンスがあればそのときは積極的に、ね。今、ゴールに飢えてます。3年近くもうゴールをしていないので、新潟での最初のゴールを早く取りたいと思っています」
トーマス選手とは直接英語で話すわけではなく、もちろん通訳の草柳悠さんを介しての会話となる。僕が話して、草柳さんがそれを英語にしてトーマス選手に伝える。トーマス選手の言葉を聞き、草柳さんが日本語にして僕に伝えてくれる。お互いが草柳さんに伝えているその間が、実は僕の好きな時間だったりする。相手の言葉の中にある、なんとなくだが分かる日本語や英語を見つけた際に出る、笑いや笑顔。これがたまらなく好きなのだ。
この日の笑いポイントは「I’m hungry for points」(得点に飢えている)だった。
このフレーズが出た瞬間、僕、トーマス選手、草柳さんが笑顔で笑った。
トーマス選手がこんなことを言っていましたよ、と松橋力蔵監督に伝えてみた。
「後ろの選手だろうが関係ない。全員が点を取るというところから考えるということはすごく大事。もちろん守備も当然大事ですが、自分で点を取ろうと考えることも非常に大事だと思いますね。本人がそう言っているのなら、そのうち取ってくれるんじゃないですか。浦和時代のスーパーミドルシュートみたいなやつを。見たいですよね、あれ」
監督、見たいです、それ。
間違いなく、見たいやつです。
◎アルビライター コジマタケヒロ
練習、ホーム戦を中心に日々取材を続ける、アルビレックス新潟の番記者。また、タウン情報誌の編集長を務めていた際に、新潟県内の全日本酒蔵をひとりで取材。4冊の日本酒本を出した、にいがた日本酒伝道師という一面も。(JSA認定)サケ・エキスパート。
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前回:Vol.11「積み重ね」小見洋太(2024年6月19日)