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BREIMENが加わらなければ交じわらない、2マンツアー『BREI Ⅱ MEN TOUR 2024』の構想と見どころ

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BREIMEN 撮影=菊池貴裕

枠に収まらない自由な発想と遊び心、そして圧倒的なライブ演奏力を誇るオルタナティブファンクバンド・BREIMENが、この秋、全国4都市をめぐる2マンツアー『BREI Ⅱ MEN TOUR 2024』を開催する。11月4日札幌公演にはKIRINJI、11月9日名古屋公演にはKroi、11月22日大阪公演には.ENDRECHERI.、11月29日東京公演にはTOMOOを迎える。このインタビューでは、それぞれのゲストへの想いと魅力を語ってもらった。冒頭からただ“綺麗事”なプロモーショントークで済ませない、素直な言葉しか語らないところが実にBREIMENらしい。

――4月にメジャー1stアルバム『AVEANTIN』のリリースがあり、その後全国ツアー『AVEANTING』がありました。ツアーや最近のライブにはどういった感触があり、なぜこの秋2マンツアー『BREI Ⅱ MEN TOUR 2024』の開催を決定したのでしょうか。

サトウカツシロ(Gt):俺的には、『COME BACK TO BREIMEN JAPAN TOUR 2023』(昨年秋に開催)で、一旦天井感がちょっとあって。……ない?

高木祥太(Ba,Vo):それは、内容が?

カツシロ:これ以上先へ行くには何かを変えなきゃ、みたいな感じ。『AVEANTING』ツアーが終わってからのライブも、自分の予想を超えない感じがある。それは、みんなもなんとなく感じている気がしていて。

高木:BREIMENとしてのライブの形や方向性が『COME BACK TO BREIMEN JAPAN TOUR 2023』くらいから一旦完成して、その延長線上に『AVEANTING』があったから、よくも悪くも想像の範囲内にはなるというか。

高木祥太(Ba,Vo)

――読者にフォローするわけじゃないけど、『AVEANTING』ツアーは素晴らしい内容でした。最終公演を観たあと、「オルタナティブを極めると新しい正解が生まれる。その瞬間に立ち会った気がした」とXに書かせてもらったけど、BREIMENのライブバンドとしての質の高さと無二性に、あの場にいた人たちは感動も熱狂もしていたライブだったと思います。5人の性質的に、“慣れ”に収まることが嫌いで、どんどん新しいものをやりたいし、“自分たちが飽きないように”ということを大事にしているからこそ、理想型が一旦完成したゆえに“次は何をやろう?”という感じになっている、ということですよね。

カツシロ:その先があるような気はしているんですよね。完成したように見えて実は完成してない、という可能性があるとは思っていて。現状、“これ以上、どうするのがいいんだろうな”っていう感じに、俺はなってる。まあでも思い返してみると、たびたびそういう感じだよね。区切りごとに、ライブに対しても曲作りに対しても、個人としてもバンドとしても、意識を変える部分がある。最近の俺はそんな感じかな。

高木:BREIMENは足並みを揃えてるバンドじゃなくて、むしろ足並みは揃えないようにしているというか。だけど、みんなのライブに対しての感覚は近い気がする。メジャーデビューもあって、一節ついた感じはあるよね。山一(BREIMENが拠点としていた場所。今年8月、街の再開発によって取り壊しとなった)が終わると同時に、BREIMENとしても何かが終わって、何かが始まった気がする。だからライブも曲も“次はどこへ行こうか?”みたいな。

いけだゆうた(Key):ここから変わっていくんだろうね。吸収する音楽も変わっているわけだし、“あれやりたい、これやりたい”というものも出てくると思うので、ここからまた面白くなるんじゃないかなと思います。秋のツアーはまたちょっと違うんじゃないかな。

サトウカツシロ(Gt)

高木:そもそも2マンツアーをやること自体初めてだから、必然的に変わってくるよね。ある意味、“飽き”ゆえに2マンツアーを選んだところもある。(Soに向かって)どう?

So Kanno(Dr):一旦BREIMENとして制作やツアーが終わって落ち着いてはいるじゃん? その中で何をやろうかなと思ったときに、カツシロが言ったみたいにライブでのベストを作れている感じはしていて、だからそれをぶち壊すために、今人生で一番ドラムの練習をしてる。個人的な話でいえば、現状理想のプレーはできてなくて、でもバンドアンサンブルとしては形になっている、という状態で。自分の理想のクオリティまで引き上げた状態でバンドと合わせたら、ようやく次のステップに行けるのかなって思うから。1時間空いたらフレーズをコピーしたり。すごくストイックに生活してる。

高木:そうなんだ? すごいね。

――Soさんはすでに業界内でも評判がめちゃくちゃ高いドラムプレイヤーなのに……。

So:音楽業界に入って、年々すごい人たちと関わるようになって、クオリティが高いレベルに達してようやくエンタメとして昇華できるんだなと思って。だから一回、めっちゃ練習しようかなって。

――林さんは、ライブに対する感触はどうですか?

ジョージ林(Sax):『AVEANTING』は、大きな事故なく終われてよかったんじゃないかな。

いけだ:現場監督みたいだな(笑)。

高木:(笑)。ライブ全体の話でいうと、そういった現状があるけど、『AVEANTING』ツアーは単純にアルバムの新しい曲をやる楽しさがあったと思う。『AVEANTIN』の曲をライブでやってみると、自分たちが演奏しているときに今までにない感情の機微みたいなものはあった。

■“VS”というよりもミキサーで混ぜる感じ。毎回全然違うライブになると思うから、全通してほしい。

――自分たちを楽しませ続けたいからこその『BREI Ⅱ MEN TOUR 2024』なのだということがよくわかりました。遊びと刺激を追い続けるBREIMENだからこそ、ただの2マンライブでは終わらないんだろうなとも思っているんですけど、Kroi、.ENDRECHERI.、TOMOOについて、それぞれの選定理由とどんなことを企んでいるのかを教えてもらえますか。(KIRINJIについては、後日公開されるKIRINJIとの対談でたっぷり語っていただきます)

KIRINJI

高木:いざ2マンをやるとなって誰を呼ぶか考えたときに、まず思ったのが、音楽性がピンポイントで親和性のあるバンドはいないということで。それはいいことでもあると思うんだけど。

――BREIMENみたいな音楽をやってる人は他にいない、ということですよね。

高木:でも逆に、BREIMENは曲のレンジが幅広いから、逆に選びたい放題だなとも思って。おこがましいけど、今回出る4組って、BREIMENが加わらなければ交じわらないと思うんですよ。やっぱり俺らは曲にグラデーションのあるバンドで、それを今回活かせるなと思う。まずKroiについては、多分、お客さんの予想通りで。

――誘わなかったら“なんで?”ってなるくらいの(笑)。

高木:そう。実は日程の都合で1回断られて、最初はKroiなしで進めていたんだけど、最後の最後でもう1回頭を下げて、承諾してもらいました。Kroiに関しては、“盟友”と呼べるくらいの関係性がありつつ、もちろん彼らの音楽が大好きで。

So:さっきもLINEしたね。漫画を読んでたら、明らかにKroiをオマージュした絵が出てきたから。

高木:それをSoちゃんが見つけて、“いたよ~”ってサバゲーLINEに送ってた(笑)。KroiとBREIMENのサバゲーLINEっていうのがあって。

カツシロ:俺入ってないやつじゃん?

:俺も入ってない。

高木:とにかく仲良いですね!

Kroi

――東京公演に招くTOMOOさんとの関係性は?

高木:TOMOOちゃんはKroiよりも付き合いが長くて。俺が17歳くらいの頃から知っていて、初見からめちゃくちゃいいなと思って。旧体制(無礼メン)のときに『無礼トショウ』という対バン企画をやっていて、そのときもTOMOOちゃんを呼びました。そこからアレンジワークをお願いしてくれて、「Friday」、「レモン」、「ロマンスをこえよう」、「Cinderella」、「夢はさめても」の編曲をやってます。「ロマンスをこえよう」では俺のお母さんにフルートを吹いてもらってるし、「Cinderella」はSoちゃんがドラム叩いてて、「夢はさめても」はカツシロがギター、林さんがサックス、あと(いけだに)譜面を書いてもらった。

いけだ:実はピアノの音直しとかもやりましたね。

高木:そうだね。音色を作ったり、暗躍してもらいました。

So:ここ最近のレコーディングワークの中で、TOMOOちゃんの「Grapefruit Moon」のドラムがピカイチに気に入ってます。あのアレンジと歌に対して、あのドラムを乗せられたことが本当にすごくよくて。録り音も奇跡的にいいし。聴き返すたびに“いい曲だな”ってなる。

高木:Soちゃん、カツシロはTOMOOちゃんのサポートもやったし、そんな感じでバンド単位でずっと関わってますね。

TOMOO

――TOMOOさんのどういったところに魅力を感じますか?

高木:もう圧倒的に声ですね。他にない声だと思う。ポップさとニッチさのバランスを、彼女自身も見極めながらやっていると思うんだけど、そもそも声自体がそのあいだのグラデーションにいる人だから。だからどういうタイプの曲をやっても、あの声という楽器の力でいい音楽になる。それはもう圧倒的な武器だし。小さい場所で弾き語りをやっていたところから、いつのまにか大きな場所で大所帯のバックバンドを引き連れてライブをやるようになったけど、思えばそれが合う要素もずっとあった人だなとは思っていて。だから本当に“見つかったな”って感じ。アンダーグランドなシーンでやっていくつもりなのかなって思ったときもあったんだけど、多分どこかで彼女の意識も変わったんだろうなと思う。聖女的な部分と儚い部分が混在していて、高嶺の花に見えるんだけど、意外と隙も親しみやすさもあって、そのバランスが人を惹きつけるんだろうなとも思う。しかもそれが天然なんですよね。すごく不思議な人なんだけど親しみやすさがあるっていうのは、それはもうスターだよなと思います。だからそもそも、大きいところへ行ける要素があったんだなと思いますね。

いけだ:TOMOOちゃんの声は本当によくて。TikTokとかTwitter(現:X)で「歌ってみた」をやってる人たちの中で、今TOMOOちゃんの歌い方が増えてきているんですよ。椎名林檎やAdoが出てきたらそれっぽい歌い方が増えるみたいに、今あの唯一無二の感じが浸透していて、「TOMOOキッズ」が増えてる。

:歌い方とか声質が、俺は“いなたい”と思っていて。音自体はわりとポップにまとめている中で、いなたい感じの声が入っているという、ある意味そのアンバランスさが、俺はめちゃくちゃいいなと思います。

高木:“いなたい”というのは、俺らの中ですごく褒め言葉ですね。俺らのキーワードでもあるし。

――Kroiをインタビューしたときも“いなたい”がキーワードとして挙がりましたね。

カツシロ:どの時代にいても評価される人な気がする。TOMOOちゃんの音楽は本当に普遍的で、大げさにいうとビートルズみたい。

高木:わかる。時代とか流行に左右されない、本当のポップさがあるというか。

カツシロ:そうそう。そういう人が今はあまりいない。今は“時代”の音楽じゃん?

高木:言われてみれば、この対バンの人たち全員、TikTokというフォーマットにあまり向いてないというか。

カツシロ:でもすべてを凌駕して流行るポテンシャルは絶対にあると思う。Nulbarichで一緒にギター弾いてるカンちゃん(カンノケンタロウ)がTOMOOちゃん大好きで、車の中で熱唱してる動画が送られてきたことがある(笑)。

高木:当日は、TOMOOちゃんが弾き語りを数曲やった上で、BREIMENでバックバンドをやろうかなと思ってます。

.ENDRECHERI.

――.ENDRECHERI.の発表にはめちゃくちゃ驚きました。どんな関係性なんですか?

高木:俺が『音楽と人』の対談ですごくバイブスしたところからお誘いしました。これは対談で俺が思ったことだけど、.ENDRECHERI.は事務所の中で完全にゲームチェンジャーで。相当な覚悟を持ってやっていたと思うし。なぜバイブスしたかというと、つまるところ、“ジャンル”って音楽のスタイルじゃなくて精神性だということで。もし.ENDRECHERI.がロックをやっていたら、反骨精神からファイティングポーズを取っていたと思う。俺も世の中や音楽業界、通説とかに対して、ファイティングポーズを取って戦ったり壊したりするより、それとは別のところで何かを始めようとするスタンスで。それが“ファンク”なんですよね。ファンクって、別に歌詞で“何かをぶち壊そう”とかを歌うわけじゃないし、むしろ“ここで楽園を作ろう”というやり方だと思っていて。……っていう、そこまでの話を一緒にしたんですよ。表面的なファンクの話じゃなくて、精神的な部分やスタンスで共鳴したので、どこかで一緒にやりたいと思ったし、向こうもそう思ってくれていたみたいで、じゃあこのタイミングじゃないかなと。

――ファイティングポーズを取って戦うんじゃなくて、“こんな場所もあるよ”って招いて、そこで踊り狂うっていう。それが“解放”になるんじゃないか、という話は『AVEANTIN』の取材でもさせてもらいましたよね。

カツシロ:そういう意味では、.ENDRECHERI.が一番ファンクを普及してる人だよね。

高木:完全にそうだと思う。.ENDRECHERI.の対バンが一番、変な形になる予定で。

――変な形?

高木:ステージに.ENDRECHERI.とBREIMENの楽器を全部揃えておいて、本当に入り交じる感じになると思います。ファンクって、ステージに10人、20人とか大所帯で乗ったりするし、特にファンクの中でも.ENDRECHERI.の“Pファンク”のスタイルはそうで、そこに俺らもジョインしようかなと。そういうごちゃ混ぜを、なんばHatchでやったら楽しいかなと思ってます。.ENDRECHERI.のライブって、アンコールで1時間くらいセッションすることもあるらしくて。それを聞いて、相当やばいなと思った(笑)。何でもできちゃうような気がしてるから、どうまとめようかなと今考えてます。

:持ち曲をやるときは、その曲がどういうことなのか、何を訴えたいのかがもう決まってるから、ある意味、そこに向かって走っていくような演奏の仕方だけど、セッションは何が起こるかわからないし、やっていく中で作り上げていくものだから、それを1時間やってるって、あの……変態なんですよね(笑)。1時間セッションして、何かを生み出せるかもしれないし、何も生み出せないかもしれない。ただ、そこに向かっていく1時間を大切にしているという、そのマインドが我々と近しいなと感じます。だから今回ご一緒にできて本当嬉しいです。

いけだゆうた(Key)

――ただの対バンではなく、両者にとってこの日にしかできないライブが生まれるツアーになりそうですね。

高木:いわゆる“アンコールに最後1曲だけ一緒にやって”みたいなことではなく、色々企画中です。座組としては“VS”というよりも、ミキサーで混ぜる感じ。俺らのセトリも会場ごとに変えて、対バン相手と親和性のある楽曲を選んでやっていこうと思ってます。毎回全然違うライブになると思うから、今回のツアーこそ全通してほしいなって思うんですよ。

カツシロ:ツアー終わったあとに全出演者で飲み会やったら超やばそう。やりたいな。

高木:どうなるんだろうね(笑)。

――BREIMENが、いいハブになりそうですね。

カツシロ:逆にハブられるかもしれない。

高木:はははは、上手い!(笑)

――最後、8月にリリースされた最新曲「スプモーニ」に関しても聞かせてください。『AVEANTIN』以上に5人の演奏力と音の構築力に磨きがかった曲で、装いは爽やかなのに中身は濃い、という作品だと思ってて。

カツシロ:これ、いい曲ですよね。

――これは、いつ頃制作していたものですか?

高木:『AVEANTING』ツアーの広島(6月1日)の打ち上げをやった鉄板焼き屋さんで、FUNKY MONKEY BΛBY'Sが流れてて。俺、中学でサッカー部員だった頃、FUNKY MONKEY BΛBY'Sがすごく好きだったんですよ。それでSoちゃんと“このビートを今やったら面白くね?”みたいなことを話して。次の日カツシロと宮島に行って、その船の中でイントロを思いついて、ボイスメモを録って。そのあとスタジオに入って、結局FUNKY MONKEY BΛBY'Sのビートからどんどん離れていって、いつものBREIMENになったんだけど。平成のフレーバーはするけど、根幹は平成じゃなくなったというか。

カツシロ:夏の曲だから、みんなもスタッフも“急だし、リリースは来年に取っておいてもいいんじゃないか”という話になってて。そっちの意見が8割くらいだったけど、俺は“いや違うよ。絶対にこの夏出したほうがいいと思う。メジャーデビューして次の曲まで開けすぎないほうがいいんじゃないかな”とか言って、出すことが決まった。

いけだ:すごいよね、鶴の一声。

カツシロ:それなのにそのあとのレコーディングに俺は行かなかった(笑)。

マネージャー:深夜2時くらいに来ました。

カツシロ:俺があまりにも夜中とかに行くから“ミッドナイトダンサー”ってあだ名がついた(笑)。

ジョージ林(Sax)

――(笑)。『AVEANTIN』は“ダンスミュージック”というコンセプトがあったけど、それをやりきったうえで、別の手法からさらに“BREIMENらしいポップ性とは何か”を探って加えたような1曲だと思ったんですよね。

高木:アルバムを作るとき、マスタリングまでの工程を経て“あの時点でこうしとけばよかった”みたいなことがあるから、毎回アルバムが出たあとの次にやる曲は、アルバムで得た知見をもう一回活かしている感覚で。「スプモーニ」でいうと、俺的にはドラムの音がめちゃくちゃ気に入ってる。そこはアルバムという実験を経てできたことだなと思います。“夏”といっても、RIP SLYME的な夏と、久石譲とか坂本龍一的な夏があって、俺はどっちも1曲に閉じ込めたいなと思って。夏のアッパーな感じと切なさを1曲に入れたから、結構な大曲になっちゃった。

:イントロは山下達郎だしね。いろんな“夏”が入ってる。

カツシロ:ギャルから“あの頃の感じがする”って連絡がきて、俺的にはそれがすごくよかったなと思った。音楽的には展開が多いし目まぐるしさもありつつ、それを聴いて“あの頃を感じる”っていうのがいいなって。……“あの頃”っていつなんだろうね?

――(笑)。何歳の人が聴いてもなんとなくノスタルジックさを感じるものになっているということですよね。歌に関しても変化を感じましたけど、何か意識したことはありますか?

高木:歌は、上手くなりましたね。俺はいろんな歌い方を試しているタイプのボーカルだから、たとえば「yonaki」と「乱痴気」では全然違かったりして。自分の中のいろんなスタイルを統合するんじゃなくて、曲ごとに伸ばしたいなと思っていて、「スプモーニ」は夏の曲だったから、タイプ的には“ちゃんと腰を入れて歌う”みたいな感じが合うかなと思って。あと最近の意識変化としては、前よりも歌詞をちゃんと聴かせたいなと。音楽だし別に歌詞は聴こえなくてもいいなって思っていたんだけど、このバンドは楽器も強いから、そのうえで歌詞が聴こえることは、このバンドにおいてはいいのかなって思ったり。

So Kanno(Dr)

――“日本のポップス”というものに向き合いつつ、ちゃんとBREIMENらしいオルタナティブ性を保つという、そのバランス感を磨き続ける中で辿り着いた曲だといえると思いました。歌詞に関しては、どんなアプローチができた感覚がありますか?

高木:まず、季節物の曲が珍しい。夏にフォーカスした曲は初めてな気がする。なので、俺の15年分くらいの夏を閉じ込めました。スプモーニ自体も、俺の中で夏の思い出としてずっとあって。何年前か忘れたけど、『FUJI ROCK』のバックヤードで初めてスプモーニを飲んで、それが美味しすぎて、そこからカクテル選ぶときはスプモーニやソルティドックにしてる。

――曲の情景を描くために“スプモーニ”をシンボルとして使ったということではなく、リアルに思い出にあるものなんですね。

高木:明確な思い入れがある。やっぱり今までもリアルで書いてきた分、アンリアルなことは書けないなと思った。だから人生破滅タイプだなって思いました。

――メジャーデビューして短いスパンで曲を作らなきゃいけなくなると、フィクションから歌詞を書かざるを得ないケースもあると思うんですけど、祥太さんの場合はそうではない。

高木:そう。それも一瞬考えたけど……無理なんですよね。だから多分、早めに死にます。

――ダメです(笑)。身を削る行為ではあると思うけど、続けてほしいなと思います。今も制作中ですか?

高木:『AVEANTING』のツアー中に、リリースとか決まってなくても、定期的にスタジオに入ってどんどん曲を作っていったほうがいいんじゃない?みたいな話をしたんだよね。それで、アルバムを出したあとにしては今までにないくらい曲を作ってて。そういうエネルギーがあったよね。制作のために俺1人で北海道に1週間行ったりもしたし。ここ最近はスタジオに入ってなかったけど、明日は制作です。

取材・文=矢島由佳子 撮影=菊池貴裕

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