谷川俊太郎さんを追悼…関わった絵本100冊以上が一気見できちゃう専門店で今年にぴったり「大人に気づきをくれる」ヘビのお話
子どもだけでなく大人も楽しめる絵本を、絵本セラピスト協会認定「大人に絵本ひろめ隊員」、そして2児の母でもある、HBCアナウンサーの堰八紗也佳(せきはち・さやか)がご紹介します。
2024年に30周年を迎えた札幌市手稲区にある「ちいさなえほんや ひだまり」。
店主の青田正徳(あおた・まさのり)さんは「絵本からエネルギーをもらっています!」と、2025年も元気に営業中!
これまでテレビやラジオや、この「Sitakke」でも、何度も取材させていただきました。
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今月の絵本通信は“巳年”にちなみ、青田さんおすすめの「ヘビが出てくる絵本」を3冊ご紹介します!
絵本屋さんだけれど、カバーはなし!靴を脱いで、のんびりと
「ちいさなえほんや ひだまり」の特徴は、一軒家のお店の中で、靴を脱いでくつろげること。
青田さんが厳選した約2500タイトルの絵本に囲まれて、のんびりとあたたかい時間を過ごすことができる空間です。
6歳の長男は、「お邪魔します!」と慣れた様子の訪問。
1歳の二男も、活発に動き回り、気になる絵本を次々に引っ張り出してきます。
この日はまず畳に座って、42×40㎝もある大型絵本を開いて楽しんでいました。
どの本もビニールカバーがかかっていないので、自由に読むことができます!
私も絵本探しに夢中になっていたところ、青田さんの読み聞かせが始まり、いつのまにか二男は正座をして聞き入っていました(笑)
「食べ物が好きかな?車が好きかな?」
青田さんは、そんな風に話しかけて子どもの好みを探りながら色々な絵本を読んでくれます。
「ねないこだれだ」のせなけいこさんに、「ぐりとぐら」の中川李枝子さんなど…
2024年は有名な絵本作家の訃報が相次いだこともあり、「改めて1冊1冊を丁寧に伝えていかなければならない」と、青田さんは語ります。
さぁ今回はどんな1冊と出会えるのでしょうか。
青田さん厳選!ヘビが出てくる絵本ベスト3
ことしの干支にちなんだ絵本を青田さんにリクエストすると、一言目は「ヘビは苦手なので、あまり置いていないんです」とのこと。
それでも、厳選された約2500タイトルの中に、ちゃ~んとヘビが出てくる絵本もありましたよ!
おすすめポイントも解説していただきました。
第3位『あいつもともだち』(偕成社)作・内田麟太郎 絵・降矢なな
ヘビさんは誰からも声を掛けてもらえないまま冬眠するちょっと寂しい存在として登場します。
冬眠から目覚めたとき、“自分を待っている人なんて当然いない”と思っているヘビさんですが……?!
自分の身に置き換えてみても、「友だち」といってもいつでも会える人もいれば、なかなか会えない人もいます。
学生時代の友だちと十数年ぶりに会うと、すぐに当時の関係性のまま話が弾み、久しぶりの感じがしないから不思議です。でも、それこそ友だち!
会えない時間は、また会えたときの喜びを増幅してくれるものですね。
第2位 『へびのくび』(フレーベル館)作・織田道代 絵・きくちちき
きくちちきさんの絵は、“大胆な構図”と“活き活きとした線”が特徴!
この絵本の表紙も、ヘビの全体像を描き切ろうとしないところが、きくちさんらしいです。
頭としっぽしかないように見えるヘビですが、「“首”はどこに決めても面白いかも!」と、仲間たちみんなでスカーフを巻く部分を話し合う素敵な物語です。
第1位『うさぎたちのにわ』(好学社)作・レオ=レオニ 訳・谷川俊太郎
ヘビが特技を活かしてうさぎを守る姿に、「困った人がいるとき、自分ならどのような助け方ができるか」と考えさせられます。
また、大人はつい「あれはダメ、これもダメ」と言って子どもより先回りして教えようとするけれど、“それは実はたいしたことではないかもしれない”という、大人への気付きを与えてくれる物語なんです。
そしてこの絵本は、2024年11月、92歳で亡くなった谷川俊太郎さん の翻訳です。
詩人の谷川さんは“生きる喜び”を何よりもまず大切にするレオ=レオニの作品によって絵本の世界に開眼させられました。
実は青田さん、かつて児童図書出版社の代理店に勤めていたときに、谷川俊太郎さんと何度か会って会話する機会があったのだとか。
その人柄について「誰に対しても同じようにフランクな接し方をしてくれた。温厚で飾らず、柔和な方でした」と、噛みしめながら話してくれました。
「英語力はどこで養ったのか」
これが、青田さんが一番知りたい谷川さんに関する疑問です。
「何かを成し遂げている人は、人の知らないところで努力をしているということですね」と、青田さんの目は尊敬の念で輝いていました。
谷川俊太郎さん追悼展も開催中!
そんなひだまりでは、『追悼 みんなの谷川俊太郎さん 絵本展』を開催中。
「詩人」として知られる谷川さんは、翻訳家でもあり、絵本作家でもあり、脚本家でもありました。
追悼にあたり、「詩集」の展示をしている書店はありますが、「谷川さんが携わった絵本を100冊以上もまとめて並べている書店は他にはないと思う」と、青田さんは自信をもっておっしゃいます。
さらに壁にも、新聞記事やチラシなど、谷川さんにまつわる張り紙がビッシリ!
その中に、こんな手書きのメッセージもありました。
シンプルな言葉が心に刺さります。
絵本のラインナップをのぞいたら、きっとあなたも気づかないうちに、谷川さんの絵本に触れていたことに気づくはず!
最後に、青田さんにことしの目標を伺いました。
「当たり前の日常って、実は当たり前じゃないですよね。絵本からエネルギーをもらって、まずは75歳になる33周年を目指して頑張ります!」
【取材協力】
「ちいさまえほんや ひだまり」
住所 札幌市手稲区新発寒6条5丁目14-3
電話FAX 011-695-2120
営業時間 午前10時~午後6時
営業日 金・土・日・月・祝
『追悼 みんなの谷川俊太郎さん 絵本展』
開催期間 2025年2月28日(金)まで
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「連載コラム・今月の絵本通信」
文|HBCアナウンサー 堰八紗也佳
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編集:Sitakke編集部あい