横顔の少女が紡ぐ物語「中村佑介展 in TAKARAZUKA 2025」(読者レポート)
いつ来ても宝塚の街にはピン!と背筋がのびるようなお洒落さがあります。駅から延びる“花のみち”を歩けば統一感ある建築と配色が連なります。今日は宝塚ウェルカムフラッグが風にそよぐ中村佑介展へと向かいました。
宝塚花のみちにフラッグがそよぐ
会場は「宝塚市立文化芸術センター」、公園を挟んで「宝塚市立手塚治虫記念館」のある文化ゾーンです。中村佑介さんは宝塚出身のイラストレーターで、今回はデビュー以来の原画や完成画パネルなど盛り沢山な展覧会が実現しました。
中村佑介展
中村佑介さんの活動初期はASIAN KUNG-FU GENERATIONなどのCDジャケットで注目され、ファンが集まりました。展示の多くは原画や着色前の線画と完成画、そしてその構想過程がわかるような説明などが並んでいて、見比べながらみていくと工夫の跡が伝わります。
多くの展示は作品とその製作過程を並べてあり、見比べながらみると面白い
初期の頃から数多く手掛けているCDジャケット
私が初めて中村さんの作品を目にしたのはこちら。さだまさしのCD「天睛」のジャケットです。今も時々聴いておりますが、こちらも詳しく制作過程が明かされています。
私が初めて目にした中村佑介さん作品は さだまさしCDジャケット
次は書籍の表紙カバーです。森見登美彦さん作品のアニメーション映画化もされた『夜は短し歩けよ乙女』は単行本と文庫本で装丁が変わっていてイラストも違っています。東川篤哉さんの著書『謎解きはディナーのあとで』など人気の作品に使われているイラストは、内容にとてもマッチした感覚で登場人物を強くイメージづけしています。
森見作品など本屋さんでよく見かける表紙たち
カラフルなだけでなく背景や小物などのモチーフが存分に描き込まれることで、華やかで彩り豊かな画面が出来上がっています。中村さんが題材とする作品のキャラクターから受け取ったイメージを画面にちりばめているので見ているだけで楽しさが溢れます。
更に連作やシリーズ化されてゆくことにより、どんどん主人公たちの世界が膨らんでゆくような気がします。タイトルを見なくても、あっ、この本だとわかるようになるのです。もっと楽しいのは、コラボ作品です。
さまざまなコラボ作品も
これはキキララとのコラボですが、決して主人公たちのイメージを崩さず、キキララならではの色合いを活かし、ポニーテールの女の子はすっかりキキララ界に溶け込んでいます。このほかにもドラえもんやチョコパイのパッケージ、浅田飴、コンバースの靴などもあってどれも欲しくなります。
こんなパッケージもありました
そして少し驚いたのは、音楽の教科書の表紙を手掛けておられることです。音楽室にきっとありそうな有名音楽家の似顔絵や、隅々にまで描き込まれた音楽要素がワチャワチャとリズムを刻んでいるようです。教科書もこんな風に楽しい世界で誘ってくれれば授業も楽しくなるにちがいありません。
音楽の教科書にも起用されている
中村さんの描く主人公は、セーラー服をきた女子高生が多くみられます。大きく中心的存在にもかかわらず横向き(しかも左向きが多い)なことに気づきます。顔は白く、よくみると彩色されていません。このあたりにも重要なメッセージが含まれているのですが、それは会場で解き明かされていますのでご覧ください。
また、その土地の魅力がたっぷり詰まった宝塚のガイドブックや京都などの観光ポスターも展示されていて、多方面での活躍ぶりがわかります。
京都の観光にも一役かって 街歩きが楽しくなるイメージ
出品数が大変多く、かなり見応えのある展覧会です。7/21までの会期中にサイン会やイベントも企画されていますのでHPなどをご覧のうえ、お出かけいただきたいと思います。
オリジナルグッズの販売もあり、きっと皆さんどこかで目にしたことのある中村佑介さんのイラストを、じっくり間近で隅から隅まで鑑賞できるいい機会なのではないでしょうか。
皆さんもきっとどこかで見ています
[ 取材・撮影・文:ひろりん / 2025年4月25日 ]