今週末は釜石・甲子「陽子の庭」へ! 公開10年目 バラが織りなす色彩の競演に来場者感嘆
赤、黄、紫、ピンク、オレンジ…。目にも鮮やかな花色で今、訪れる人たちを魅了しているのは、釜石市甲子町洞泉の高台にある私設ガーデン「陽子の庭」。バラの開花時期に合わせた一般公開は今年で10年目を迎え、連日、市内外のファンが足を運んでいる。今年は花の開花が遅れたことから、当初予定の9日までの公開を1週間ほど延期する。所有者の菊池秀明さん(77)、陽子さん(78)夫妻は「週末にはさらに咲き進むと思う。ぜひご覧いただければ」と来場を呼び掛ける。
菊池さん夫妻が開放している自宅周辺の庭は広さ約700坪。山の斜面を利用し、17年ほど前から夫婦2人で造り上げてきた。多種多様な樹木や花々、自然石などで彩られる園内は、傾斜に沿って設けられた小道を通って間近で植物を観賞できるのが魅力。エリアごとに日本庭園、イングリッシュガーデン、ロックガーデン…と趣の異なる風景が広がる。
1年の中でも特に華やかなのが、多くのバラが開花するこの時期。今や同庭の象徴となったバラの競演は、訪れる人の心をつかんで離さない。庭造りを始めて4~5年後、陽子さんが植え始めたバラは、年々、種類や株数を増やし、今では約170種に及ぶ。中でも60本あるという“つるバラ”は、秀明さんが棚やアーチに這わせて造形。全体のバランスを考えながら、巻き直しやせん定を繰り返し、毎年見事な花のトンネルやタワーを造り上げている。
一般公開は例年6月1日から10日間開催。近年は地球温暖化の影響もあってか、5月下旬の早咲き種の開花が1週間ほど早まる傾向にあったが、今年は逆に遅れ気味。いつもは6月5日ごろが見ごろだが、今年は同日で5割ほどの開花。「雨も多く、気温の低い日が続いたからかな。他でも今年は遅いと聞く」と秀明さん。公開後も曇りや雨の日が続いたが、気温の上昇とともに、徐々に開花が進んでいる。
青空がのぞいた5日は、開花を待ちわびた人たちが足を運んだ。同市の佐々木聖子さん(71)、佐藤まさ子さん(76)は「旅行気分で毎年一緒に来る。癒やされています」と笑顔満開。色とりどりの形や大きさの異なる花の前で、その都度足を止め、美しい花姿をスマホカメラに収めた。2人とも花が好きで、自宅で育てている。「これだけの庭を維持するには日々の手入れが欠かせない。せん定、草取り、施肥、病害虫防除…。(菊池夫妻2人での作業は)本当にすごいですね」と感心する佐々木さん。自宅で数本のバラを育てる佐藤さんは「つぼみが膨らんできて開花しようという時が一番好き。テンションが上がる」とバラ栽培の醍醐味に共感。「身近にこういう場所があるのは非常にうれしい。ぜひ続けてほしい」と声をそろえた。
菊池さん夫妻の庭造りは、秀明さんの定年退職を機に始まった。後に、高齢で自宅庭の管理が難しくなった市民などから育ててきた植物を託されるように…。東日本大震災の被災者からも庭石の活用を望まれ、園内の造成を続けてきた結果、現在の規模にまで拡大した。「まさかこんなに大きくなるとは(思いもしなかった)。今は亡き市内の庭愛好家の方々の思いも詰まった庭。お父さん(秀明さん)はそういう皆さんの気持ちもつなぎたかったんだと思う」と陽子さん。そんな2人も年齢を重ね、庭の維持管理の負担は年々増している。今年は友人、知人ら10人ほどがボランティアで草取りを手伝ってくれた。「最初は2人でもできていたが、年とともに作業量も落ちてくる。皆さんの助けがあって成り立っている」と話す。
昨年は公開期間中、約800人が訪れた。このうち、初めて足を運んだという人は約300人。リピーターは当初に比べ大幅に増えた。「10回までは…」と一般公開を続けてきた秀明さん。来年以降について聞くと、「毎年楽しみにしてくださる方が多いので、開催期間を短縮するなどして無理のない形でできれば」と今後のあり方を考える。
園内では7、8の両日、合唱やバンド演奏などのイベントも予定される。庭の公開時間は午前9時から午後4時まで。庭の入り口に設ける受付は9日までで、以降は基本的に安全に注意してもらっての自由見学とする。場所は、市街地から向かう場合は国道283号を釜石鉱山方面に西進。内陸からは釜石自動車道を釜石仙人峠インターチェンジで降り、同方向へ。道の駅釜石仙人峠を通過して少し行くと、右手に誘導看板が見える。
◇7、8日のイベント情報
7日(土)11時~「わっか」文化箏中村ひろみ箏教室演奏 13時~「甲子歌う会」合唱
8日(日)11時~、13時~「釜石ベンチャーズ」バンド演奏