谷崎潤一郎の処女作に着想を得た新作『刺青/TATTOOER』が英国・チャリングクロス劇場で上演決定
梅田芸術劇場とチャリングクロス劇場が共同で演劇作品を上演する日英プロジェクト。脚本家・兼島拓也と演出家・河井朗ルサンチカが初タッグを組む新作『刺青/TATTOOER』が、チャリングクロス劇場にて上演されることが決定した。日本では、英国公演に先がけ、東京・アトリエ春風舎での上演も決定している。
原作は、清吉という評判の高い若手刺青師ほりものしの物語。清吉の長年の願いは「美女の肌に己の魂を彫り込む事」であったが、理想の相手に出会えずにいた。ある日、清吉のもとにその理想の女性がやってきて……。
民族のアイデンティティや伝統文化、ファッション、友情や愛情の証、罪人の刻印に至るまで、時代と地域により様々な意味を持つ「刺青」。兼島拓也による書き下ろしで、谷崎潤一郎による原作の魅力はそのままに、さらにオリジナリティ溢れる新たな『刺青』が繰り広げられる。
本作の英国公演は今年10月上演予定。新進気鋭の脚本・演出家・加藤拓也氏のオリジナル作品『One Small Step』との連続上演となる。
脚本家・兼島拓也(かねしま・たくや)コメント
谷崎が描いた、刺青を彫る人と彫られる人の間の秘匿的で閉じた関係。実はそのなかにあちこち穴が空いていて、不意に外部と繋がってしまう。作品を読み返すうちに、そんな「広がり」が垣間見えたような気がしました。刺青は単なる模様ではなく、皮膚にあいた穴から外部が流し込まれ、同時に内部が皮膚の外に漏れ出してしまう、そんな現象のことをいうのではないか。外部の侵入を許し、あるいは自己が漏れ出てしまう。その脆弱さ故に自他の境界が曖昧になる。そこに刺青の妖艶な魅力があるのではないか。
谷崎の筆に便乗し、強硬な支配/被支配関係とそれが反転する快楽に執着した先には、他者と結びついて溶け合ってしまう契機が見出されるのではないかと思っています。
演出家・河井朗(かわい・ほがら)コメント
刺青は針で皮膚を傷つけ、そこに色を入れていく行為です。傷も彩られると芸術と呼ばれます。そのひと針ひと針には、様々な思いが込められていることでしょう。決して後戻りできない瞬間の連続を委ねることができるのは信頼できるアーティストと、大切にしたい気持ちがあってこそだと思うのです。日本では秘匿を美徳と考える人がいます。日本でお会いした彫り師の方は、着物の袖からチラッと見える刺青が粋なんだと教えてくれました。それは、誇らしいからこそ自分だけのものにしたいという欲なのだと私は考えています。皆さんがこれまでの人生で獲得した『傷』に、私たちがインクを垂らすことができたらどんな絵が浮かび上がるのでしょうか。あなたの体に宿る芸術はどんな姿なのでしょうか。楽しみにしています。