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「夜泣きでも寝てる」夫に妻はイライラ...「夫婦喧嘩の2大場面」子育て家庭のモヤモヤ 解決法を専門家が解説

コクリコ

共働きやワンオペで疲れ切っていても、夜泣き対応はママのみという家庭は少なくありません。なぜ父親は、我が子の夜泣きに気づかず寝ていられるの? 家族心理学者の布柴靖枝先生が「夫婦喧嘩のイライラ・モヤモヤ解決法」を解説。

【画像】夫婦喧嘩が起きがちな子育て家庭のイライラ・モヤモヤエピソード「夜泣きでも寝てる」「子どもを任せたら放ったらかし」

忙しい子育ての日々。頼れる相棒でいてほしい夫が、疲れを倍増させる「イライラ・モヤモヤ」の原因になっていることってありませんか?

たとえば、子どもの夜泣き。何をしても泣き止まず、近所迷惑にハラハラしながら抱っこし続けた夜。

フラフラになって朝を迎えると、一度も起きずにグッスリ眠っていたパパが……

「えっ、泣いてたの? 全然聞こえなかった」

共働きやワンオペで疲れ切っていても、夜泣き対応はママのみ、という家庭は少なくありません。それが高じた極度の寝不足で、体調不良や産後うつになってしまうケースも。

なぜ父親は、我が子の夜泣きに気づかず寝ていられるの? 夫も親なのに、なぜいつも私ばかりが、夜泣きの担当なの?

このイライラ・モヤモヤをなくしたい。パートナーにも一緒に夜泣き対応をやってほしい。

イライラ・モヤモヤが重なって、私がつぶれてしまう前に──。

そのために、具体的な対策はあるでしょうか。

夫婦のカウンセリングを担って40年、家族心理学者の布柴靖枝先生(文教大学教授)に聞きました。

「不公平」は不仲の原因に

「“なぜ私ばかり”。この状況はそりゃあ、イライラ、モヤモヤしますよね。実は夫婦の不仲の原因はほぼ、この不公平の感覚なんです」

うなずきながら、布柴先生はそう言います。SNSでもこの場面のイライラ・モヤモヤをつぶやく声が多く見られますが、そこにはセットのように「そんな夫を選んだあなたが悪い」という、悪意の言葉も。

ですが布柴先生によると、この状況は「その人の夫、個人だけの話ではない」とのこと。

▲夫婦間の「不公平」は個人の問題ではない、その原因は…?(写真:アフロ)

「父親が子どもの泣き声でも起きないのは、それが『自分のやることではない』『夜泣きで目が覚めるのは母親の役目』と思いこんでいるから。そしてその思い込みは、これまで夫が育って生きてきた、社会の構造に根ざしています」

日本は近代以降、特に戦後の高度経済成長期に「男は外で仕事」「女は家で家事・育児」という性別での役割分担が広く定着してから、大半の家庭で、夜泣きの対応は母親がメインでやってきました。父親が関わる場合でも「手伝う」という形でした。

それから時代は大きく変わり、現代では子どものいる夫婦の8割が共働き。

育児を担う父親は、どんどん増えています。この変化によって、平成の流行語大賞になった厚労省の「イクメン」プロジェクトは、この7月に「共育(トモイク)」プロジェクトと名前を変えました。

ですが今、父親になっている人たちの多くは、『夜泣きで起きる父親』というお手本=ロールモデルを実際に見て育ってきた世代ではありません。

▲『夜泣きで起きる父親』というお手本=ロールモデルを知らずに育った世代がまだまだ多い令和パパ。ケア役割を「自分の仕事」と思えるようになるには?(写真:アフロ)

父親が育児をするための育児休業の取得率を見ても、まだ3割程度。夫婦は共に働き、共に子育てをするという価値観の変化に、社会の実態や父親の意識が追いついていないのです。

夜泣きで起きないのは、目の前の夫個人だけの問題ではない。彼が育ってきたこれまでの社会が思い込みを作っているのだと、布柴先生は説明します。

ではその思い込みをなくし、夜泣きをめぐる夫婦の間のイライラ・モヤモヤをなくすには、どうしたらいいでしょう。

仕組みづくりで乗り越える

「まず夜泣きを含め、育児は二人でやる、と確認し合うのが重要です。そのためには育児に関して『手伝う』を禁止ワードにして、二人が育児主任になる。育児本やネットで得る情報もそのつど共有して、夫婦が同時にトレーニングを積む、と考えましょう」

赤ちゃんの泣き声に反応するセンサーを入手できるなら、それを夫の側に置き、物理的に鳴き声を聞こえやすくする工夫も一案です。夜泣き感知のシステムを父親側に整えれば、泣き声を聞きとる大人を二人に増やせます。

このシステムを作った上で、夫婦の体調や仕事の忙しさに合わせて、夜泣き担当を当番制で分担しているケースもあります。平日は妻・週末は夫と分け、日中のお昼寝で睡眠時間を回復する方法も。

どんな方法でも重要なのは、「夫婦二人で主任になる」ということ。

「これから赤ちゃんを迎える夫婦なら、妊娠中から父親学級などの機会に参加し、育児をする父親のロールモデルを見るのも大切です。出産前から何度でも、『生まれたら夫婦で同じように赤ちゃんの世話をする』と確認すると、『夜泣き対応は母親』の思い込み予防になります」

妻が病気になったとき、夫に育児を任せると…

夜泣き対応のようなイライラ・モヤモヤ場面は、他にもいくつもありますが、そのすべてには「不公平感」と「時代とのずれ」という共通点がある──そう布柴先生は言います。

▲家事育児を任せたら大変なことに! 夫婦喧嘩が勃発しがちなあるあるエピソード(写真:アフロ)

たとえば妻の具合が悪くなり、寝込んでしまったとき。家のことを夫に任せたら、台所はぐちゃぐちゃ、子どもは放ったらかしでYouTube漬け……。

「私が病気になったとき、ここまで夫に頼れないの?」そう失望したことのある人は、多いのではないでしょうか。

当然のことですが、パートナーが病気で家事や育児をできないときに、代わりを務められないのは改善すべき問題です。

このような状況を、布柴先生は「全く良いことではないですが」と前置きしつつ、「これも個人を超えた、社会問題からくる不公平」と解説します。

「性別役割分業の社会では、家族のケアをするのは女性と決まっていました。家庭の中では父親はケアを『させられてこなかった』。そこで育った夫たちは、妻や子にケアが必要なとき、何をしていいのか・してはいけないのか、最低限のラインも分からないのです」

多くの場合、夫の側に悪意はありません。原因は、夫からケアを学ぶ機会を奪ってきた、これまでの社会構造なのです。

そのツケを現代の妻たちが、病気のときに払うのは切ないことですが……体調不良でしんどいときに、さらにイライラ・モヤモヤを重ねないために、できる対策はあります。

「最低限から」のススメ

「まず、最低限のことから任せましょう。食器洗いなら拭くまで・棚にしまうまでしてほしいと、具体的に示します」

たとえば、子どもに動画を見せるのも、何を何時間まで、それ以外では本を読んでほしい、このおもちゃで遊んでほしい、と具体的に伝えるのです。

なんで私がここまで細かく指示しなきゃダメなの? ちょっとは自分で考えて判断してよ! そう感じる場合もあるかもしれません。

ですが夫婦仲をよい形で維持したいのであれば、そこでも対話を諦めないことが大切です。

対話をするためにはまず、目の前のパートナーに怒りをぶつけない。その怒りの原因を「夫は育った家庭で、ケア役割を学ぶ機会がなかった人なのだ」と理解して、向き合うことが必要です。

そして大切なのは、その「最低限」ができていたら、感謝の言葉を忘れずに伝えること。それはその場限りのコミュニケーションではなく、同じイライラ・モヤモヤの予防に繫がるからと、先生は強調します。

「確実に夫婦仲が良くなる」布柴先生のアドバイス

「家庭内で家族をケアしてこなかった人は、それをしたら喜ばれる、という成功体験も知りません。成功体験の嬉しさを重ねると、人は次第に、自分から動くようになります。そうして夫婦仲がどんどん良くなった例を、カウンセリングでいくつも見てきました」

感謝の言葉は、夫婦間のイライラ・モヤモヤを引き起こさない予防策。つまり、妻の側の心の安らかさのためにも、よい効果のある行動なのです。

「この成功体験づくりは、病気ではない平時から重ねておくのがおすすめです。家事のスキルが夫より高い妻にとっては、任せるのは勇気がいること。ですが確実に夫婦仲が良くなりますので、ぜひ『任せる勇気』を持ってください」

夫婦仲が改善すると、妻にも夫にも、ひいてはそこで育つ子どもたちにも、ポジティブな効果が現れる。40年のカウンセリング経験から、布柴先生は確信しています。

読者のみなさんもぜひ今日から、試してみるのはどうでしょう?

────◆────◆────

子育て世代にむけた「夫婦喧嘩のイライラ・モヤモヤ解決法」は全3回。第1回となる今回は「夜泣き対応」などの場面を取り上げました。

夫婦の間にまだまだある、子育ての日常でのイライラ・モヤモヤのエピソード。その中には、一見思いもよらない、父親たちの驚きの心理が隠されていることも。

次の第2回では「子どもの世話で仕事を休むときのイライラ・モヤモヤ」などのエピソードをピックアップ。引き続き、イライラ・モヤモヤの仕組みを解きほぐし、具体的な対策と予防策をご紹介します。

取材・文/髙崎 順子

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